第1部 電子辞書を使おう!

最終更新日: 2005/2/19

[さまざまな辞書ブラウザ]

近ごろはインターネットが身近になり、 調べものはインターネットでというのが決まり文句になっている。 しかし、ことばの意味や使いかたを調べようと思ったら いまでも辞書にまさるものはない。辞書は知識の源泉だ。

とはいうものの、紙の辞書はかさばるし扱いにくい。 いつでも手の届くところにあるのが理想だが、なかなかそうもいかない。 かといって本棚まで取りに行くのはおっくうだ。 電子辞書ならキーボードから手を離すことなく、 思い立ったときにいつでも気軽に引ける。

それだけではない。 紙の辞書ではできなかったさまざまなことが電子辞書なら可能になる。 ここでは電子辞書にはどんなものがあるのか、 どんなふうに使えるのかを説明しよう。

■電子辞書ってどんなもの?

電子辞書とはその名のとおり辞書コンテンツを電子的に格納したもので、 紙の辞書を電子化したものと最初から電子的な辞書として編まれたものがある。 現在では辞書出版社の看板商品はたいてい電子辞書として入手可能だ。

電子辞書の提供形態には大きくわけて2つある。 ひとつはCD-ROMとして販売されているもので、 専用ビューアや計算機上の辞書ブラウザで読むことになる。 辞書データはCD-ROMに置いたままでも使えるものが多いが、 大容量のハードディスクが安価に手に入る現在では ハードディスクにコピーして使うのが一般的だ。

もうひとつはIC辞書で、電卓やPDAのような本体に ROM化された辞書を格納したものだ。 こちらは本体上のキーで単語を入力し、結果を液晶画面に表示する。 いずれの形態にも、単品の辞書だけでなく国語辞典と英和辞典のように 複数の辞書を組み合わせた統合製品がある。

昨今はIC辞書がたいそうな売れ行きであるようだ。 起動時間ゼロで辞書が引けるのはたしかにありがたいが、 ふだんからUNIXで仕事をしているユーザにとっては、 カットアンドペーストで単語を調べたり 結果をエディタに貼り込んだりできなくては話にならない。 同種の辞書を引きくらべたいときは 辞書の数だけIC辞書を揃えなければならないという デメリットもある(※1)。 したがって、ここではCD-ROMとして販売されている 電子辞書に的を絞ることにしよう。

表: CD-ROM辞書とIC辞書の違い
種別 特徴
CD-ROM辞書 選択肢が多い
常用の計算機環境で利用できる
好みの辞書ブラウザで検索できる
多数の辞書を串刺し検索できる
マルチメディアデータが扱いやすい
操作性でIC辞書に及ばない点がある
IC辞書 起動が速い
持ち運びしやすい
操作性がよく練られている
好みの操作性が選べない
常用する計算機環境と連携できない
同種の辞書を串刺し検索できない(※1)

※1: 昨今はメモリカードで辞書を増設できる製品もあるので、 この点は割り引いて考えてもよい。

■どんなふうに引けるのか?

紙の辞書では見出しがアイウエオ順、ABC順に並び、 ユーザはページを繰って目的の単語を探すのがふつうだ。 漢和字典のように複数の探しかたがある場合は 巻末に索引が用意されていて、索引から単語を探して目指すページに飛ぶ。

電子辞書ではインデックスを使って目的の単語を探すことになる。 単語を入力して検索するとマッチする見出し語のリストが表示され、 見出し語を選ぶと本文が表示されるようになっているものが多い。 本文にリンクがあれば、クリックするだけで参照先に飛べる。

●頭で引くかお尻で引くか

紙の辞書の索引に相当するのが電子辞書のインデックスだ。 たいていの電子辞書には何種類かのインデックスが用意されており、 どれを使うかによって検索方式が決まる。 おもな検索方式には次のものがある。

表: 検索方式の違い
検索方式 説明
前方一致検索 入力した文字列で始まる単語を検索
後方一致検索 入力した文字列で終わる単語を検索
完全一致検索 入力した文字列に一致する単語を検索
条件検索 インデックスにある本文中の単語で検索
複合検索 用意されたキーワードの組み合わせで検索
全文検索 インデックスを使わずコンテンツ全体から入力に一致する単語を検索

紙の辞書の使いかたにいちばん近いのが前方一致検索だ。 単語の先頭数文字を入力して検索すると、 その文字列で始まるすべての見出し語のリストが表示される。 紙の辞書で見開きのページにある見出しを眺めるイメージに近い。

後方一致検索を使えば同じ文字列で終わるすべての単語を検索することが可能だ。 紙の辞書にも日本語逆引き辞典(大修館)、逆引き広辞苑(岩波書店)、 漢字引き・逆引き大辞林(三省堂)があるが、電子辞書のほうがはるかに融通がきく。

条件検索は、たとえば英和辞典なら指定した単語を例文に含む項目が検索できる。 複合検索はジャンルごとのキーワードの組み合わせで検索したり、 漢和字典なら音訓、部首、総画数などの組み合わせで検索したりする。 全文検索は、その辞書に含まれる文字列であればとにかく何でも探し出す機能だ。 インデックスを使わないので時間がかかるが、 そのかわり「こういう言い回しをこの辞書のどこかで見たけど、 あれはどこだったかな」というような場面でも検索できる。

どんなインデックスが用意されているかは製品によって異なる。 同じタイトルの辞書でも製品によっては同じ検索が できたりできなかったりするので要注意だ。

●読みで引くか漢字で引くか

紙の国語辞典はほとんどが読みでしか引けないが、 電子辞書ならインデックスが用意されていれば漢字でも引ける。 使ってみないとイメージが湧かないかもしれないが、 読みがわからない単語を簡単に調べられるのはこのうえなく便利なのだ。

そのような単語を調べたいとき、これまでは単語に含まれる漢字を 漢和字典で引き、例として挙げられている単語の読みを調べてから 国語辞典にあたる必要があった。 電子辞書ならカットアンドペーストで国語辞典がそのまま引けて、 意味もその場でわかる。

●辞書を引きくらべる

複数の辞書で同じことばを引きくらべたいことはよくあるが、 いちいち辞書を切り替えながら検索するのはめんどうだ。 最近の辞書ブラウザはたいてい複数の辞書をまとめて引く機能を用意している。 検索結果の見出し語リストに複数の辞書からの項目が並ぶので、 順にクリックするだけで本文が切り替わり、引きくらべが簡単に行える。

このような検索方式は辞書ブラウザによって呼びかたが違う。 串刺し検索や一括検索と呼ぶものもあるし、 辞書グループからの検索と呼ぶ場合もある。

■辞書フォーマットの違い

電子辞書には文字や画像などの本文データのほかに 各種の検索インデックスや見出しデータなどが含まれている。 これらのデータは一定の規則に従って構成されており、 それを辞書フォーマットという。

市販の電子辞書にはいくつかのフォーマットがあり、 辞書ブラウザごとに扱えるフォーマットが決まっている。 UNIXで辞書を使うために知る必要があるのは EPWING、電子ブック、独自フォーマットの3種類だ。

●EPWINGとJIS X4081

EPWINGはEPWINGコンソーシアムが提唱する電子書籍のフォーマットだ。 12cm CD-ROMに格納され、PCで読むことを想定している。 UNIXではおもにこのフォーマットの辞書を使うことになる。

EPWING CD-ROMの内容は図のようになっている。 ルートディレクトリにはCATALOGSという名前のファイルがあり、 CD-ROMに含まれる辞書とその構成を示すカタログデータが書かれている。 ルートディレクトリにはまた辞書ごとにサブディレクトリがあり、 その下にDATAとGAIJIというディレクトリがある。 DATAの下には本文データやインデックスを含むHONMONファイル、 GAIJIの下にはドットごとに外字データを格納したファイルが置かれる。 辞書によってはこれ以外のファイルをもつものもある。

図: EPWING CD-ROMの基本構成
[EPWING CD-ROMの基本構成]

EPWINGにはいくつかのバージョンがあり、 バージョンが上がるごとに機能が追加されている。 それぞれの違いを示しておこう。

表: EPWINGのバージョン
バージョン 説明
V1 基本検索機能、モノクロ図版、無圧縮音声
V2 カラー図版、圧縮音声(WAV)
V3 MPEG1動画再生
V4 圧縮、ハードディスクインストール
V5 JPEG図版、数式表示
V6 インデックス効率化、高圧縮

JIS X4081「日本語電子出版検索データ構造」は EPWING V1のサブセットをJIS規格化したもので、1996年に作られた。 この記事ではEPWINGとJIS X4081を区別せずEPWINGと呼ぶことにする。

・EPWINGコンソーシアム [リンク]

●電子ブック

電子ブックは電子ブックコミッティが提唱した電子書籍のフォーマットだ。 専用キャディに格納した8cm CD-ROMとして提供され、 電子ブックプレーヤと呼ばれる専用機で読むことを想定している。 PCで読むときはキャディから取り出して使う。 データの内部構造はEPWINGによく似ていて、 EPWING用の辞書ブラウザを少し変更するだけで対応できるので、 EPWING用の辞書ブラウザはたいてい電子ブックも読める。

電子ブックの内容は図のようになっている。 ルートディレクトリには目次ファイルVTOC、 カタログファイルCATALOG、辞書ごとのサブディレクトリがある。 VTOCはファイルシステムを解釈できないプレーヤでも使えるように 各ファイルの開始セクタ番号を書き込んだものだ。 辞書ディレクトリのファイルSTARTには 本文データ、インデックス、外字データが含まれる。 音声データはSOUNDというファイルに書かれるが、 このファイルはすべてのセクタにデータがあるとは限らず、 通常のファイルとしてコピーできない場合がある。

図: 電子ブックの基本構成
[電子ブックの基本構成]

電子ブックにも次のようなバージョンの違いがある。

表: 電子ブックのバージョン
バージョン 説明
EB 1994年までの旧規格(国内版)
EBG 1994年までの旧規格(海外版)
EBXA 電子ブック統一仕様
S-EBXA 圧縮、カラー/16階調画像

もともと専用機で使うことを想定しているため、 電子ブックは原則として読みでしか辞書を引けない。 PCで使うなら漢字からも引けるEPWINGのほうが便利だ。

なお、電子ブックコミッティは2000年4月に活動を終了した。 電子ブックタイトルそのものはまだ販売されているし、 電子ブックプレーヤもソニーが1機種(DD-S35)生産しているが、 いずれは消滅する運命にある。

★追記(2004年2月20日)
最後の電子ブックプレーヤDD-S35もとうとう生産完了となった。 これで専用機としての電子辞書はすべてIC辞書に置き換わったわけだ。 商品としての電子ブックもこれで使命を終えたことになる。

・電子ブックのひろば (電子ブックコミッティ, 活動終了) [リンク]

●独自フォーマット

独自フォーマットというのはEPWINGや電子ブックのような 共通フォーマットでない、メーカー固有のフォーマットのことだ。 WindowsやMacintosh専用の辞書には独自フォーマットの製品が多い。 おもなものとしてはシステムソフト電子辞典シリーズ(ロゴヴィスタ)、 HD辞典シリーズ(株式会社電子辞典)、ハードディスクで使うシリーズ(三省堂)、 楽しむ辞典シリーズ(学研)、小学館の各種辞書製品などがある。

独自フォーマットの辞書は原則としてUNIXでは読めないが、 ユーザによって解析され、EPWINGに変換できるものも少なくない。


★Column: もっと共通フォーマットの辞書を!

独自フォーマットの辞書は特定の環境でしか使えないので、 その他のOSを使っているユーザは読みたいコンテンツがあっても 指をくわえて見ているしかない。 しかも、その特定の環境でさえもOSがバージョンアップしたら 使えなくなるおそれが大きい。 ユーザが好みの辞書ブラウザを選べないのもまた弊害のひとつだ。 すでに電子化されたコンテンツを二次利用しているメーカーはともかく、 おおもとの出版社が独自フォーマットでコンテンツを 電子化するのは度しがたい勘違いであるというほかはない。

広辞苑クラスの国語辞典である大辞泉が独自フォーマットで電子化されたとき、 筆者は小学館に電話してEPWINGでも出してほしいと談判したのだが、 美しいフォントで縦書き表示したいために独自フォーマットを選んだので、 それが不可能なEPWINGで出すつもりはないと断られた。 大辞泉はWindowsの16ビットアプリケーションだったため、 Windows 98までは使えたが2000やXPで動かすことができず、 対応版が出ることもなく販売終了となってしまった。 すばらしいコンテンツだっただけに非常に残念なことだ。

★追記(2003年12月30日)
出版社が独自フォーマットを採用したくなる気持ちはわかる。 たしかにそれなりのメリットはあるからだ。 しかしユーザはそのコンテンツを10年も20年も使いたくて購入したのだ。 OSが新しくなるころにはコンテンツも刷新され、 新しいOSに対応した製品がリリースされるだろうから いいじゃないかという意見もあるかもしれない。 だがそれはちがう。旧版は旧版でやはり読みたいのだ。 どうしても独自フォーマットを採用するのなら、 せめて付属ソフト以外の方法でコンテンツにアクセスできる 手段を別途用意することを考えていただきたい。


★Column: どの製品を買えばいいのか?

初めて電子辞書を買おうと思ったユーザがショップでとまどうのは、 同じタイトルの辞書がさまざまなパッケージで棚に並んでいることだ。 人気の高いタイトルほど多くのメーカーから出ているので、 どのパッケージを選んだらよいか迷うことになる。 たとえば岩波書店の広辞苑第五版には次の製品がある。

EPWINGと電子ブックの各製品はUNIXでもそのまま使える。 システムソフト電子辞典はEPWINGに変換すれば使えるが、少しだけ手間がかかる。 HD辞典シリーズはいまのところUNIXでは使えない。 EPWING版は広辞苑そのもののデータは共通だが、 富士通とインターチャネルの製品はWindowsの辞書ブラウザが 付属しているため、その分だけ値段が高い(※2)。 富士通の製品には漢字解説という付加価値がある。

また電子ブックとシステムソフト版にはカラー図版がない。 これはカラー図版がモノクロに変換されているわけではなくて、 写真などのカラー図版が省略され、もともとモノクロの図版だけが 残っているのだ。検索インデックスもいくつか省略されている。

これらを総合すると、製品を選ぶ指針は以下のようになる。 マルチメディアデータはほしいがUNIXで使えない機能に 金をかけたくないユーザは岩波書店のEPWING版がいいだろう。 基本的な機能だけでよいからできるだけ安く、 というユーザは電子ブック版を買うといい。 そのままでは漢字で検索できないが、 後述する電子ブック漢字インデクサをWindowsで使えば 漢字で検索できるようになる。

製品選びにはもうひとつ落とし穴がある。 独自フォーマットの製品はソフトウェア扱いであるため、 EPWINGや電子ブックとくらべて価格設定の自由度が高いという点だ。 ときには旧版のタイトルがびっくりするような値段でたたき売られていることがある。 このようなチャンスは逃さず活用していただきたい。

※2: 岩波書店版にもいちおう「ことといLight」という辞書ブラウザが 付属しているが、広辞苑第五版専用でほかの辞書は検索できない。

★追記(2004年7月24日)
2004年7月1日、NECインターチャネル株式会社は 株式会社インターチャネルに社名変更した。


■EPWINGと電子ブックの辞書タイトル

EPWINGは期待されたジャンルだったが、 めぼしいタイトルはすでに製品化されてしまい、 最近は新しいタイトルがあまり出てこない。 IC辞書や独自フォーマット製品に押され、 販売本数もそれほど伸びていないようだ。 EPWINGでは1タイトル数千本も出ればいいほうだという噂も耳にしたことがある。 このため在庫切れのタイトルはなかなか再プレスされない。 電子ブックのほうはすでにコミッティが解散しているため、 新しいタイトルが出ることは期待できそうにない。

●どんなタイトルがあるのか?

EPWINGや電子ブックでどんなタイトルが販売されているかについて、 表にまとめておいたので参考にしていただきたい。 EPWINGについてはコンソーシアムのサイトで現行商品として 紹介されているものを取り上げたが、 入手しづらい製品が含まれているかもしれない。 電子ブックについては版元のオンラインショップで 注文できる状態にあるものだけを選んである。

別表1: EPWING辞書タイトル一覧

別表2: 電子ブック辞書タイトル一覧

★追記(2004年2月20日)
別表2にある電子ブック辞書タイトルは2004年2月20日現在 すべて注文可能な状態にあるが、 電子ブックプレーヤの現行商品が存在しなくなったため、 今後はラインナップそのものが消滅するおそれが大きい。

★追記(2004年11月21日)
2004年10月29日に発売されたソースネクストの研究社辞典シリーズはEPWING形式だが、 WindowsのインストーラInstallShieldでパッケージされている。 いったんWindowsにインストールするか、 あるいはWindows上でi6comp.exe(オリジナルの配布元不明)や Lhazなどのアーカイバを使ってパッケージを展開してからでないと UNIXからは利用できないようだ。

EPWINGや電子ブックはたいていUNIXで問題なく利用できるが、 第2部で解説するEBライブラリで読めないタイトルがわずかながら存在する。 購入前には念のため、EBライブラリのオンラインドキュメントにある 対応CD-ROM書籍一覧、非対応CD-ROM書籍一覧を確認していただきたい。 表に挙げたタイトルにはEBライブラリで読めないことが 明らかなものは含まれていない。

・EBライブラリドキュメント [リンク]

仕様から逸脱しているためにEBライブラリを含む多くの辞書ブラウザで 正しく検索できないEPWING/電子ブックタイトルについては、 hishidaさんの「EPWING/電子ブックの個別情報」ページに情報がある。

・EPWING/電子ブックの個別情報 [リンク]

★追記(2005年2月19日)
hishidaさんの「EPWING/電子ブックの個別情報」についての記述を追加した。

●どこで買えるのか?

電子ブックや出版社オリジナルのEPWINGタイトルはおもに書店で買えるが、 扱っているのは大きな書店に限られる。 出版社のWebサイトの多くはオンラインショップを用意しているので、 そちらから注文するのが簡単確実だろう。 いずれも原則として定価だ。

ソフトウェアメーカーが出している辞書ブラウザ付きのタイトルは、 おもにPCショップで販売されている。 富士通の辞書&検索ソフトシリーズはわりと入手しやすいはずだ。

●ネットワークライセンスは必要か?

イントラネットで辞書を共有するようなシステムに対応するため、 ネットワークライセンスを用意している出版社やメーカーがある。 たとえパーソナルなUNIX環境で利用するだけでも、 辞書サーバを利用して辞書にアクセスするなら 厳密にはネットワークライセンスが必要になるはずだ。 第2部で解説するNDTPDを利用する場合がこれにあたる。

ここではサーバー1台、サーバーへの同時接続数は1、 クライアント数については1人または30人という設定 (前者はパーソナルな環境、後者は閉じたグループ環境)で どのようなライセンスが必要となるかを 各出版社、メーカーに対して問い合わせてみた。 回答を表にまとめておこう。 回答をくださった各社には感謝しておきたい。

表: ネットワークライセンスについてのアンケート回答

 ●質問

 1. ネットワークライセンスを用意しているか?
 2. 1.でYesの場合、以下の条件でのライセンス価格は?
    (a) 個人使用(サーバ1, クライアント1, 同時接続数1)
    (b) グループ使用(サーバ1, クライアント30, 同時接続数1)
 3. 1.でNoの場合、製品をクライアント数または同時接続数の
    いずれか購入すればネットワークでの閲覧を容認するか?

 ●回答

 ○研究社
   1. 用意している
   2a. 単独使用のケースと同様に扱い、別途契約不要
   2b. 同時接続数1なら別途契約不要(ネットワーク契約は
       クライアント数と同時接続数のいずれかで行う)

 ○三省堂
   1. 用意している
   2a. 端末固定ならパッケージ価格×1(※)
   2b. 端末固定ならパッケージ価格×15(※)

 ※端末を固定しない場合(同時接続数のみで制限)については
   回答がなかった。

■Web上のオンライン辞書

辞書を買ったり環境を整えたりするのがめんどうなユーザには Webブラウザでオンライン辞書を引くという逃げ道もある。 横道ではあるが、簡単に触れておくことにしよう。

大手ポータルサイトのほとんどは辞書検索機能を用意している。 無料で引けるものには三省堂のコンテンツが多く、 たいていは国語辞典が大辞林第二版、英和・和英辞典がエクシードだ。 かつてLycosでは大辞泉やプログレッシブなど小学館の辞書が検索できたが、 残念なことに楽天グループの傘下に入ってinfoseekと統合され、 よそとかわり映えのしない状況になってしまった。

★追記(2004年5月8日)
かつてYahoo!辞書では新辞林やデイリーコンサイスを採用していたが、 2004年4月12日にリニューアルを行い、 コンテンツを大辞泉およびプログレッシブ英和(第3版)/和英(第2版)に変更している。

辞書が同じならどこで引いても同じだと思うかもしれないが、 検索結果の示しかた、見やすさはサイトによって異なる。 goo辞書では英語の発音が聴けるが全文検索はできないなど細かい違いもある。 オンライン辞書や辞書リンクのサイトをいくつか表にしておくので、 お気に入りのサイトを探していただきたい。

別表3: オンライン辞書・辞書リンク一覧

■Web上のポップアップ辞書 ★2004年2月2日追加

英文のWebページを読むときに簡単に辞書が引けたらと思うことがある。 このようなときに便利なのがポップアップ辞書サイトだ。 そのサイト経由で目的の英文ページにアクセスすると、 マウスカーソルを英単語に当てるだけで辞書ウィンドウが ポップアップして意味を教えてくれるというものだ。 このようなサイトにはPOP辞書.comと理解.comがある。 いずれも英和辞書としてフリーなGene95一般英和辞書を採用している。

・POP辞書.com [リンク]
・理解.com [リンク]

図: POP辞書.com
[POP辞書.comの画面]
図: POP辞書.com経由でSlashdotを読む
[POP辞書.com経由でSlashdotを読む]
図: 理解.com
[理解.comの画面]
図: 理解.com経由でSlashdotを読む
[理解.com経由でSlashdotを読む]

◎辞書で頭脳を増設しよう

電子辞書がどのようなものでどう便利なのか、 おおよそのところを理解していただけただろうか。 文章を書くときに日本語入力プログラムを使うのが もはやあたりまえであるように、 辞書がいつでも気楽に引ける環境は、 知識というものに向き合う感触を根底から改めてくれる。 ツールが手の延長であるように、辞書は頭脳の延長なのだ。 これまで学校の勉強でしか辞書に触れてこなかったユーザも、 ぜひこの機会に電子辞書を試してみていただきたい。

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