星乃真呂夢の
 鉛筆箱の栗の実
 
目 次
 人と干し草
 DNAの詩(うた)
 
劇詩「エーテルの風」ほか詩作品を順次掲載しますので
 また時々鉛筆箱の栗の実に遊びに来てくださいね!
 


 
人と干し草
1997年のために・・・
 
 
牛よ 伝えておくれ おまえの繰り返す

 美しい反芻の極意のすべてを

 

何度も何度も 世界をのみ込み かみしめながら

 なおも未消化の柔らかい不条理を

 手放さず いとおしく 暖め かみしめ

 曙のように おまえの内部でゆっくりと溶けていく世界の全体

 

受け入れがたい異物をも おまえは静かに溶かしていく

 やがて 七たびの美しい反芻の果てに

 全ての異物がかけがえのない全体の一部となり

 おまえを丸ごと輝かせる

 それは白と黒の大いなるなる模様となって

 まどろんでいる牛という奇跡

 

ああそんなふうに あなたを理解できたら

 人と干し草と 世界の他者と すべての思想と信条と

 静かに美しく溶けていけたら

 人と人とが一茎の干し草のように慎み深く向かい合えたら

 

牛よ 黎明の中 語り伝えてはくれまいか おまえの極意を

 私たちの星が ゆっくりといつか おまえの胃袋の中にいるように

 限りない反芻の果てに

 一つの奇跡として

 おまえのように 輝く日まで

 



 
 

DNAの詩(うた)

すべての世界の大いなる樹々も
 小さな草々も
 一筋の 水の流れから生まれるように
 私たちの全ての大いなる懐かしい出会いも
 ほんの小さな肩越しにすれ違うだけの出会いさえも
 一筋のらせんの渦につながっている
 
らせんの渦は私たちの細胞の遺伝子の透明な記憶のかたち
 DNAは懐かしがる
 無限につらなる沢山の出会いを
 らせんの渦はうたっている
 無限に美しい模様を描きながら
 らせんの渦は紡いでいる
 大いなる出会いのうたを
 
DNAのらせんの渦は覚えている
 らせんの渦はふるえている 呼び交わしている
 あなたと確かに出会ったことを
 あなたをずっと探していたことを
 確かに出会っていた
 確かにまた出会うだろう
 ありがとう
 銀河宇宙の荒野の中で また出会えた
 
透明な祈りのかたちになって
 連なっていく 静かならせん階段
 
その懐かしい階段のどこかで
 何度も 何度も
 もう一度 あなたを呼ぼう
 もう一度 あなたに呼ばれよう
 
降り積んでくる思い出の渦
 雪のDNA
 細やかに 細やかに
 らせんの形に心を舞わせながら
 溶けていこう 結ばせていこう
 はるかな過去と はるかな未来を
 一つに
 
今 同じ場所にたどり着いた
 懐かしいものと懐かしいものとして
 

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