美しい反芻の極意のすべてを
何度も何度も 世界をのみ込み かみしめながら
なおも未消化の柔らかい不条理を
手放さず いとおしく 暖め かみしめ
曙のように おまえの内部でゆっくりと溶けていく世界の全体
受け入れがたい異物をも おまえは静かに溶かしていく
やがて 七たびの美しい反芻の果てに
全ての異物がかけがえのない全体の一部となり
おまえを丸ごと輝かせる
それは白と黒の大いなるなる模様となって
まどろんでいる牛という奇跡
ああそんなふうに あなたを理解できたら
人と干し草と 世界の他者と すべての思想と信条と
静かに美しく溶けていけたら
人と人とが一茎の干し草のように慎み深く向かい合えたら
牛よ 黎明の中 語り伝えてはくれまいか おまえの極意を
私たちの星が ゆっくりといつか おまえの胃袋の中にいるように
限りない反芻の果てに
一つの奇跡として
おまえのように 輝く日まで