Adobe-Japan1-4 & APGS実践情報

(「Adobe-Japan1-4実践情報」より改題)

Adobe-Japan1-4とは

 Adobeが制定した拡張字形セットです。15,444文字が利用でき、Mac OS XやAdobe Acrobat、Adobe InDesinなどでサポートされています。OpenType(CID)フォーマットでの利用が前提となります。詳しくはAdobe Technical Note #5078を参照のこと。JIS X 0213:2000の文字を含む字形セットはAdobe-Japan1-5になる予定らしいです。
 なお、この文書のタイトルは、矢野啓介さんの新JIS漢字実践情報のパクりです。

APGSとは

 Appleが2001年9月29日にリリースした、Mac OS X Version 10.1でサポートされた拡張文字セットで、Apple Publishing Glyph Setの略称です。
 Adobe-Japan1-4に加えて、JIS X 0213:2000で追加された文字など、4847個の文字が追加されました。Mac OS X v10.1データシートによると、「これらの拡張は、将来のAdobeグリフコレクションと互換性があります」とあります。たぶん、APGSがAdobe-Japan1-5になるのでしょう。
 合計で20,291文字が利用できます(CIDでは0〜20295までですが、15444〜15448の5文字が「空き」になっています)。
 「ヒラギノ明朝proW6」でこれらの文字をPDF内部に埋め込んだファイル(apgsimg.pdf)(1966KB)をupしときましたので、参照してください。

Adobe-Japan1-4が利用できる環境

 Mac OS X 10.0ではヒラギノ明朝W3、ヒラギノ明朝W6、ヒラギノ角ゴシックW3、ヒラギノ角ゴシックW6、ヒラギノ丸ゴシックW4の5種類のfontが利用できます。発売前には「約17,000字」を収録することになっていたのですが、結局、Adobe-Japan1-4のみの収録となりました。2001年の夏には約20,000字を収録したApple Publishing Glyph Set:APGS(仮称)がリリースされるとかいう話ですが、現物(もしくは仕様書)を見ないことには何もいえません。

 Adobe InDesign(Win/Mac)には小塚明朝プロLightが付属しており、「字形パレット」からAdobe-Japan1-4のすべての文字にアクセスできます。現状では正式にAdobe-Japan1-4をサポートする唯一のアプリケーションです。『MAC POWER』誌の2001年6月号には体験版がCD-ROMに収録されていました。残念ながら、InDesignはMac OS X上では動作しないため、ヒラギノ書体はclassic環境からは見えず、InDesignからは利用できません(フォントファイルをcopyしてATMを使えば見えるが、ライセンス上の問題がありそうです)。

 Adobe Acrobat 5.0(Win/Mac)、Adobe Acrobat Reader5.0(Win/Mac)にも小塚明朝プロLightが付属しています。またAcrobat Reader 5.0(Mac)はCarbon化されているため、Mac OS X上でも動作します(一部不具合もあるようですが)。このため、Mac OS X上でAcrobat Reader 5.0を動かすと、ヒラギノ5書体+小塚明朝1書体の計6書体でAdobe-Japan1-4できます。最強(?)の環境と思われます。

 Adobe Illustratorでも「字形切り換え」機能で利用できるようですが、手元にないため詳細は不明です。

 「PDFの手打ち」が、InDesignを使わない方法としては最も融通が効く方法でしょう。文字コードをIdentityとすると、CIDでそのまま文字を指定できます。ただし、streamの/Lengthとかxrefとかのバイトオフセットを入れるのがメンドウなので、これらは適当な数字を入れておいて、一度Acrobatで開けて保存しなおすと、修復&圧縮されたファイルができて、お手軽です(このページで使用したサンプルは手打ちPDFによるものです)。

APGSが利用できる環境と書体

 Mac OS X 10.1ではヒラギノ明朝W3、ヒラギノ明朝W6、ヒラギノ角ゴシックW3、ヒラギノ角ゴシックW6、ヒラギノ丸ゴシックW4の5種類のfontでAPGSが利用できます。現状では、APGS対応の環境は、これ以外にありません。

 PDFの表示では、Adobe Acrobat 5.0はAdobe-Japan1-4からAPGSに拡張された文字は表示できませんので、OS X 10.1のpreview 10.1 (v111)のみが、APGSの入ったPDFを表示できる環境となります(なおOS X 10.0のpreview 10.0(v103)をOS X 10.1で動かしても表示できますが、何のメリットもありません)。ただし、previewでは小塚明朝はアクセスできないようです(Acrobat Readerが持ってるフォントなので当然か)。

 X0208とX0213の文字に関してはOS X 10.1標準のエディタTextEditでUnicode形式で扱えます。OS X 10.1標準のIM「ことえり3」は文字パレットで「新JIS面区点表」と「ユニコード表」を選択でき、これから入力できます。また仮名漢字変換辞書にもX0213対応の語句(固有名詞が中心か)が登録されており、「しゅうわき」と入力しても「イ集月亀」に変換できます。ただし、X 0213で追加された文字はU+2xxxx(たとえば「月亀」は2A6B2)とUnicode3.1のコード位置となります。アプリによっては扱えない可能性もあります。またX0213の正誤表が出ていない現状では、正誤表を先取りした、X0213とは非互換な実装になります。

Adobe-Japan1-4な書体

小塚明朝:Adobe InDesign、Adobe Acrobat、Adobe Acrobat Readerに付属。現状ではWindowsでも利用できる唯一のフォントか。エレメントが直線主体で作ってある(平成明朝に似ている)ので、プリンタなどではきれいに出力できそうだが、書籍などの本文書体には ちとつらい(組み見本を読んだかぎりでは)。小塚ゴシックも開発中の模様リリースされました。

ヒラギノ:Mac OS X 10.0に付属(同一のものがMac OS 9用に単体でも売られている)。明朝(W3,W6)、角ゴシック(W3,W6)、丸ゴシック(W4)の5書体が利用可能。本文書体としても利用に耐える高品質なフォント。ただし、けっこう大きな問題あり(後述)。またMac OS X 10.1でかなり多くの文字が変更されました。

リュウミン:AdobeのTechnical Note #5078に、小塚明朝の前には、モリサワのリュウミンプロlightで字形を例示していたと書いてありますが、多分、一般には入手できないものでしょう。

ヒラギノの謎な実装

 どうも、Mac OS X 10.0のヒラギノは、下記のCIDについてAdobeのTechnote通りの字形に実装していないようです(そおゆうことするか>某Apple)。今後に禍根を残しそうです。なお、図は上段が小塚明朝、下段がヒラギノ明朝proW6です。

 CID 12092(プランク定数、u+210F)。イタリックにすべきが立体のまま。
 CID 12220〜CID 12227(飾り罫)。文字がまったく違う。なお、CID12222と12223は同一に見えるが、縦用/横用の別字形。

[2001年7月1日追記]旧版のTechnote(リュウミンプロ)では上記のような字形になっていました。ヒラギノは小塚明朝版のTechnoteではなく、この古い版を元に字形設計したことが推測されます。

 CID 6504(蛛:90JIS字形)とCID 13406(蛛:78JIS字形)。後者の「朱」は縦棒がはねているべき。
 CID 6930(邉:90JIS字形)とCID 13407(邉:78JIS字形)。後者の「自」は横棒2本が途中で止まっているべき。
 CID 1551(貫:90JIS字形)とCID 13426(貫:78-83JIS字形)。後者の「毋」は長方形であるべき。
 CID 2206(姉:90JIS字形)とCID 13452(姉:78-83JIS字形)。前者の「市」は「果樹の柿」型、後者の「市」は「コケラ」型。
 CID 2345(収:90JIS字形)とCID 13455(収:78-83JIS字形)。後者のへんは「突き出る」形にすべき。
 CID 2378(柔:90JIS字形)とCID 13457(柔:78-83JIS字形)。後者の「矛」ははねない形。
 他にも同様な字形差を、かなりの数を確認しています。後述のサンプルPDFを参照してください。
 結論としては、「ヒラギノの実装は腐ってる」ですなぁ、これでは。『JIS漢字字典』の新版がまだ発行されないのは、これが原因だったりして(笑)。

Mac OS X 10.0と10.1で字形が変更されたヒラギノ明朝

 Mac OS X 10.1で10.0から多くの字形が変更されました(APGSを使用しなければならないようなユーザの場合、全文字を検証した後に使用開始するくらいでないと危険でしょう)。
 ただし、前述したJIS78字形はサポートされないままです。写研の元関係者の方にうかがった話では、あのJIS78字形は写研の写植文字盤のバグだそうです。しかしながら、Appleはカタログで「Adobe-Japan1-4」対応を謳っていますし、バグでもサポートするのが筋でしょう。JIS X 0208の「妛」がバグだからといって、これを実装しないなどというのはありえないのと一緒です。
 CID 12092(プランク定数)はイタリックになり、小塚明朝と同じになりました。バグだったんでしょう。
 その他に字形が変更されたと思われる文字の一部を下記に示しました。

 CID 13403,13404,13419。このような部分字形に「牙」を持つ文字の78JIS字形はOS 10.0ではJIS字形(CID 2499,2683,1386)と同字形だったのですが、10.1では別字形になりました(小塚明朝とは字形を変えてある)。
 CID 6147,14766,15395。OS X 10.0では拡張字形(CID 14186,15397,1471)が同字形になっていたが、10.1では別字形(小塚明朝と同じ)になりました。バグだったんでしょう。
 CID 4331,2669。OS X10.0では拡張字形(13525,13877)が同字形になっていましたが、10.1では別字形(小塚明朝と同じ)である「ひっかけ」のある字形になりました。
 CID 4695。OS X10.0では拡張字形(13325)同字形になっていたが、10.1では別字形(小塚明朝と同じ)になりました。
 CID 3027。このような部分字形に「兆」または「非」を持つ拡張字形(CID 3027。横画が突きぬけている)はOS X10.0までは小塚明朝と同字形になっていましたが、10.1からは突きぬけなくなり、拡張字形が基本字形と同じになりました。かなり多くの文字がこのようになっています。
 CID 3562。このような部分字形に「耳」を持つ拡張字形(CID 13498。ハネではなく、トメになっている)はOS X10.0までは小塚明朝と同字形になっていましたが、10.1からはトメではなくハネになり、拡張字形が基本字形と同じになりました。かなり多くの文字がこのようになっています。
 CID 14542。OS X10.0では小塚明朝と同じく、拡張字形と区別された字形になっていましたが、10.1では拡張字形も同字形になりました。
 CID 7363(鴈)は10.1で字形変更されたわけではないのですが、小塚明朝との字形差があるのを見逃していたので。平成明朝では7363の字形。OS Xでは7363と14273を同字形とする。

 「グリフ」にIDを付けているはずなのに、OS X 10.0と10.1で互換性がないというのは、いかがなものか。いまいち方針も読めないし。これで「Adobe-Japan1-4互換」と謳うのも、納得できない。それにこんなに(結果的に)重複グリフが多いと、実際に扱える文字数はかなり少なくなるぞ。

 それと、CID 20269,20270,20272,20274-20283,20286-20291,20293,20294って重複グリフのような気がするが。ここには「ひっかけ」のないグリフが入っているはずなのが、「ヒラギノ明朝はひっかけが付くんです」と重複グリフを入れてるような気がするが、情報がなくて、これ以上はなんとも言えない。

サンプルPDF

関連リンク


改訂履歴

2001年6月10日 公開
2001年6月19日 字形数は15,443文字ぢゃなく、15,444文字でした。修正。リンクを追加。
2001年7月1日 CID 12092,12220〜12227について旧版Technoteのリュウミンの字形を例示
2001年10月29日 「Adobe-Japan1-4実践情報」より改題。Mac OS X 10.1のAPGSについての情報を追加して大幅改訂。
2001年12月7日 APGSが公式名称と判明したので修正。

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