eKanjiの大漢和との字形差について
はじめに
e漢字プロジェクトによる漢字フォントは研究目的には自由に使えるため、漢字研究の基礎として欠かすことができないものです。
しかし、しばらくeKanjiのフォントを使用しているうちに、「あれ?何か大漢和のフォントと違うぞ?」という文字が出てきました。そこで、照合作業をしてみました。本来は約5万字全部をするべきなのですが、今のところ、約1万字を照合して力尽きました。今後、残りもやるかどうかは未定です。
字形を誤っていると思われるもの
左側がeKanjiのフォント、右側が大漢和辞典の字形です。
2305 左下が「乙」になるべきが、へんが「气」になっている。
2427 「勉」の「免」の上に「六」が載った字になるべきが、「勉(m2362)」になっている。
3201 下半分が「口又」になるべきが、「収」になっている。
3854 上が「々」になるべきが、「ク」になっている。
5018 「卯」になるべき
5483 「こざとへん」が「土へん」になっている
6742 「山」の下に「一」がない
19072 「火へん」が「さんずい」になっている
19824 「片へん」になるべきが、「爿へん」になっている
31397 「葎」:「彳」になるべきが「さんずい」になっている
32177 「斤」が「片」になっている
33124 つくりが「却」になるべきが「劫」になっている
40401 「刀」が「寸」になっている
42475 「こざとへん」が「巾」になっている
46892 別字になっている
49451 「辛」は誤字形
「デザイン差」があると思われるもの
左側がeKanjiのフォント、右側が大漢和辞典の字形です。
50 点の向き
135 横線と左はらい
192 辛の字形差
276 舟の中の下が点か棒か
379 点の向き
390 七かヒか
429 「ひっかけ」の有無
436 「ひっかけ」の有無
458 つくりの縦棒の接触(上)の有無
461 「はこがまえ」と「かくしがまえ」
468 瓜の字形差
555 上の点の位置
566 危の字形差
606 舟の中の下が点か棒か
645 丑の字形差
650 「ひっかけ」の有無
676 及の字形差
753 点の向き
809 丑の字形差
943 辰の「がんだれ」の長さ
967 字形差
1006 牛の上がつながっている
1081 つくりの上部の字形差
1182 盾の字形差
1263 月の字形差
1268 非の字形差
1304 山の中央が出ている
1385 縦線の接触の有無
1402 字形差
1435 「ひっかけ」の有無
1464 「メ」の字形差
1662 はねるか、くっつくか
1817 「ひっかけ」の有無
1822 「ひっかけ」の有無
1848 点の向き
1857 字形差
1890 横線と左はらい
1974 全の字形差
1995 兄の字形差
2025 点の向き
2035 点か縦棒か
2060 土の中央が出ている
2105 宣の下の横線か左はらいの差
2118 「ひっかけ」の有無
2193 書の下の横線か左はらいの差
2195
2262 点の向き
2291
2294 点か左はらいか
2343 女が横線か上はらいか
2346 ハか儿か
2368 下の土が横線か上はらいか
2515 平の字形差
2516
2682 トが点か横線か
2753 かぎか曲げか
2782 点の向き
2794 メの字形差
2807 各が「とめ」か「はらい」
2816 相対的な長さ
2833 トが点か横線か
2932 ヒが「かぎ」か曲げか
2942 相対的な長さ
3077 几の字形差
3092 まんなかの縦棒の長さ
3106 「へん」の小の差(はねと接触)
3125 「ひっかけ」の有無
3126 「ひっかけ」の有無
3128 「ひっかけ」の有無
3137 「ひっかけ」の有無
3145 「ひっかけ」の有無
3156 「ひっかけ」の有無
3158 「ひっかけ」の有無
3162 「ひっかけ」の有無
3163 「ひっかけ」の有無
3171 「ひっかけ」の有無
3173 「ひっかけ」の有無
3176 「ひっかけ」の有無
3198 八か「人屋根」か
3205 「ひっかけ」の有無
3206 「ひっかけ」の有無
3213 止の字形差
3214 「ひっかけ」の有無
3215 「ひっかけ」の有無
3217 「ひっかけ」の有無
3262 接触の有無
3266 相対的な長さの差
3270 上はらいの差
3318
3362 「ひっかけ」の有無
3387 厄の字形差
3403 相対的な長さの差
3454 瓜の字形差
3464 「ひっかけ」の有無
3527 耳の字形差
3567 接触の有無
3582 口へんか、口が3つか
3602 縦棒の字形差
3605 接触の有無
3618 右の子の字形差
3635 接触の有無
3746 「ひっかけ」の有無
3841 丑の字形差
3877 八かハか
3936 トが点か横線か
4124 「ひっかけ」の有無
4209 余の「はね」の有無
4326 相対的な長さ
4514 接触の有無
4702 長さの差
4716 接触の有無
4752 接触の有無
4818 大きなデザイン差
4830 「はらい」か「とめ」か
4870 バランスが悪い
4898 「ななめ」か「まっすぐ」か
4906 及の字形差
4952 「はらい」か「とめ」か
4963 「リ」
4980 瓜の字形差
5007 令の字形差
5014 「ひっかけ」の有無
5025 「はらい」か「とめ」か
5097 「はね」の有無
5125 「ななめ」か「まっすぐ」か
5175 接触の有無
5202 接触の有無
5220 牙の字形差
5246 「はらい」か「とめ」か
5284 「ひっかけ」の有無
5302 「ひっかけ」の有無
5391 バランスの差
5463 「又」のデザイン差
5495 「ひっかけ」の有無
5556 デザイン差
5713 接触の有無
5766 バランスの差
5774 「ひっかけ」の有無
5790 「はらい」か「とめ」か
5791 接触の有無
5797 「外」の「ト」の差
5877 瓜の字形差
5899 「はらい」か「とめ」か
5947 「長」の字形差
6037 「ヒ」が突きぬけない
6039 「ひっかけ」の有無
6043 「乃」の字形差
6051 「ななめ」か「まっすぐ」か
6065 接触の有無
6083 「ひっかけ」の有無
6091 「及」の字形差
6193 「兄」の接触の有無
6197 突きぬけの有無
6265 バランスが悪い
6298 接触の有無
6603 「ひっかけ」の有無
6653 「はこがまえ」と「かくしがまえ」
6659 接触の有無と、垂直とななめ
6799 「はらい」か「とめ」か
6879 バランスの差
6966 瓜の字形差
7014 バランスの差
7018 「ひっかけ」の有無
7025 バランスの差
7083 「ひっかけ」の有無
7110 デザイン差
7117 長短の差
7179 「ひっかけ」の有無
7254 「ひっかけ」の有無
7293 バランスの差
7317 「ひっかけ」の有無
7417 接触の有無
7518 ハネの違い
7533 接触の有無
7539 接触の有無
7546 「ひっかけ」の有無
7583 大きなデザイン差
7599 接触の有無
7621 接触の有無
7625 接触の有無
7627 デザイン上の差
7652 「ひっかけ」の有無
7663 接触の有無
7685 接触の有無
7798 ハのデザイン差
7837 デザイン差
7844 デザイン差
7847 デザイン差
7850 デザイン差
7852 デザイン差
7855 デザイン差
7861 デザイン差
7879 接触の有無
7881 デザイン差
7894 山へんの差
7897 山へんの差
7903 点が突きぬけない
7929 及の差
7930 山へんの差
7936「ひっかけ」の有無
7954 ハネの差
7959 山へんの差
7960 接触の有無
7971 接触の有無
7978 字形差
7995 接触の有無
7999 山へんの差
8048 デザイン差
8049 デザイン差
8082 つきぬけない
8084 デザイン差
8108 接触の有無
8160「ひっかけ」の有無
8174 「直」の長短の差、「ななめ」と「まっすぐ」
8176 「人」の字形差
8190 大きな字形差
8272 接触の有無
8273 接触の有無
8291 山へんの差
8340 つきぬける
8350 西の字形差
8379 つきぬける
8513 つきぬけない
8644
8682
8692
8693
8699
8718
8725
8736
8775
8777
8781
8801
8819
8823
8874
8892
9172
9228
9238
9243
9245
9246
9256
9259
9262
9291
9313
9438
9447
9459
9567
9569
9603
9697
9720
9736
9738
9748
9761
9913
考察
このような字形差が生じたのは、次のような理由が考えられます。
- 単なるフォント作成上のミス
- 細かいデザイン差に気を配らなかった、作字上のミス
- 諸橋大漢和の文字が文字デザインを不統一にしているため、一定の部分字形を再利用しているeKanjiと不一致が生じた場合
- 意図的に、文字デザインを変えている場合
大漢和の写植文字は石井茂吉(1人で!)が一文字ずつ手で書いていったフォントです。このため、文字間でのデザインルールが統一できていない部分があります。長期にわたる作字のため、この程度の「フレ」で済んでるのは奇跡的ではありますが。たとえば、「ひっかけ」の有無であるとか、接触の有無であるとか。eKanjiなどでは、コンピュータ上のフォント作成ツールを利用して文字フォントを作っているはずですから、これらの不統一は生じないと思われます。
eKanjiプロジェクトの丹羽先生にお目にかかる機会がありましたので、この件についてうかがってみたところ、確かに意図的に字形を変えているところがあるとのことです。しかしながら、ユーザ側の立場からすると「大漢和のフォント」として利用するのですから、これらの不統一な部分も含めて再現して欲しいところです。少なくとも、どの字が大漢和と違うデザインであるかは、正確に記述する必要があるでしょう。
というわけで、残り約4万字のチェックをしなければならないのですが、この作業はすごく大変なので半泣きです(笑)。文句を言うからには自分でやる必要がありますから…
このページで使用したフォントについて
e漢字プロジェクトのフォントを使用しました。
[←]べんぜんエリアに戻る
メールはお気軽に…Masashi Fukuda <TAB01645@nifty.ne.jp>