マーラー掃墓

飾りのない墓石を置いて、ただ“マーラー”とだけ書いてくれ、と頼んだ。「ぼくの墓を訪ねてくれるほどの人なら、ぼくが何者かはわかっているでしょう。そのほかの人には用はありません。1)
 ようやく来ましたよ。敬愛するマーラー様…というわけで、グスタフ・マーラーのお墓参りに行ってきました。マーラーにハマった学生時代に、マーラーの奥さん(アルマ。第6交響曲のテーマで有名)が書いた『グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想』1)を読んで、そして『グスタフ・マーラー その人と芸術、そして時代』2)に載っているお墓の写真を見て、「いつかはお墓参りしなければ」と思ってたのですが、やっと10数年来の夢がかないました。
 名前だけ、というマーラーの意向通りの墓標は有名な建築家、ヨーゼフ・ホフマン(Joseph Hoffmann)のデザイン(でも、せめて生没年くらいあったほうがいいのでは?>マーラー様)。オレも死んだら、こういう墓がいいな。墓標はコンクリート製のようで、背後の木が繁って、上端は隠れてしまっています。

 前日、ウィーン空港の花屋でバラの花束(マーラーにはピンクのバラ、アルマには赤のバラ。それぞれ7本ずつ。1本1ユーロ。)を買って、ホテルに持って行き、翌朝、市電でグリンツィング墓地へ向かいます。リング通りの市電D(または1,2も可)に乗ってSchottentor(ショッテントーア)停留所で降りて、地下停留所で市電38番に乗ります。ダイヤでは21分で終点Grinzingの1つ手前のAn den langen Lussen(アン デン ランゲン リュッセン)に着きますので、左手の坂道を登ると5分くらいでグリンツィング墓地に着きます。
 花屋が墓地にあるかどうか不明だったので、前日のうちに買っておいたのですが、実は墓地入り口にも花屋がありました。ただ、英語が通じるかどうかは不明。国際マーラー協会のマーラーのお墓のページにあるグリンツィング墓地内の地図を見ながら、お墓を探し、容易に見つけることができました。マーラーが花を贈られて喜んだという本の記載もあったので、花を供えられるのは嫌いではなかろうと判断し、花を供えて、しばし黙祷。その後、お墓に落ち葉や花の枯れたのがけっこうあったので、手の届く範囲を掃除しました。ふと供えられてる花を見ると、ほとんどがプラスチックの造花。あんまり来る人いないのかな?
 すぐそばの、アルマのお墓にも花を供えて黙祷。すばらしい本を残してくれてありがとう。晩年はアメリカですごしたのに、やはり生まれ育った場所の近く、そしてマーラーのそばに眠ることを望んだんですね。
 この墓地にはマーラーの妹(ユスティーネ)と、彼女と結婚したアーノルト・ロゼ(オペラ座の主席バイオリニスト)のお墓もあるのですが、マーラーが彼を嫌いだったようなので、お墓参りは省略。
 このグリンツィング墓地から歩いて、ホーエ・ワルテやベートーベンのハイリゲンシュタットの遺書の家とかも行けます。

 墓地の開門時間が朝7:00(11月から2月までは8:00)なので、美術館やお店などが開いていない朝のうちに行くと、観光スケジュールとしては効率的かもしれません。閉門時間は18:00(11月から2月までは17:00まで)。ただし、5月から8月は19:00閉門の模様。なお、入り口横の管理棟にトイレもあります。

引用・参考文献

 参考として国立情報学研究所Webcat書誌データへのリンクを加えた。
1) グスタフ・マーラー 愛と苦悩の回想, アルマ・マーラー著, 石井宏訳, 中公文庫, 1987年8月10日発行 [amazon.co.jp]
2) グスタフ・マーラー その人と芸術、そして時代, ヘルムート・キューン, ゲオルク・クヴァンダー共編, 岩下真好他訳, 泰流社, 1989年4月25日第1刷

関連リンク

マーラー名所めぐり
今回、お墓参りするにあたって、一番日本語で参考になったページ。
Gustav Mahler's Grave(マーラーのお墓) [英語]
国際マーラー協会のページ。このページにグリンツィング墓地内部の地図がありますので、プリントアウトして持っていけば迷いません。地図の"Eingang"が入り口。
Hohe Warte(ホーエ・ワルテ)[英語]
「どこにお住まい」「ホーエ・ワルテ」「お伴しましょう」1)というわけで、アルマが住んでいた家が現存します。つうか、アルマの養父、画家のカール・モルのおうちです。マーラーのお墓と同じく、ヨーゼフ・ホフマンの設計。現在は個人宅なので内部へは入れません。近くに教会があり、グリンツィング通りへは緑深い公園が間にあって、一休みするにはとてもよい場所。墓地からのんびり歩いて行けます。現在のホーエ・ワルテは車の交通量が多く、「あそこは私の好きな散歩道です」1)というほどのんびりは歩けませんが…
Secession(分離派館)[英語]
分離派のベートーベンをテーマにした展覧会が1902年に開かれ、そのオープニングパーティーで、マーラーがベートーベン第9交響曲の合唱を管楽器のアンサンブルに編曲したものを指揮し、マックス・クリンガー(展覧会のメインとしてベートーベン像を製作した)を感動させたそうです。この展覧会は3ヶ月で60,000人もの入場者数を記録したというのですから、すごい。この時にグスタフ・クリムトが作ったフレスコ画、ベートーベン・フリーズが、現在も展示されています。必見。
オーストリアギャラリー[英語]
ベルベデーレ宮殿にあるオーストリアギャラリーにはクリムトをはじめ、アルマの養父カール・モルの作品があります。また、ロダン作のマーラーの胸像もありました。
Fahrplanauskunft[独語](一部英語)
ウィーンの市電/地下鉄ダイヤの検索。「駅すぱーと」と同様のもの。移動の際の所要時間の算定に便利。
Wien Grafik Adresssuche[独語]
ウィーンの地図。「Mapion」と同様なもの。行きたい場所の地図がピンポイントで入手できる。たとえば、Mahlerstrasse(マーラー通り)

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