「X0213正誤票」を読む

はじめに

 JIS X 0213:2000には正誤票が2001年5月付けで発行されている。実装に影響する修正もあるため、注意が必要と思われる。

正誤票

 以下に引用した。なお、「番号」欄については編者が付したものでオリジナルにはない。
日本工業規格

7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用
符号化拡張漢字集合


正誤票
JIS

X 0213:2000
番号ページ位置
(1) 31 表2
2面-79-54の欄
(2) 69 附属書4表2
1-1-29の0221欄
(下から3段目)
20152014
(3) 198 表10段目
1-94-31のUCS欄
(FA6B)(9B2D)
(4) 同上のX0212の欄(空欄)74-18
(5) 243 表7段目
2-79-54の字形
(6) 同上の右側
2-79-54の字形
(ミナモト・姓) (ミナモト・姓)
(7) 367 最右列32行目
2-79-54の字形
(2-79-54) (2-79-54)
(8) 435 最左列29行目
2-79-54の字形
(2-79-54) (2-79-54)
(9) 448 3列目26行目
2-79-54の字形
41-35 2-79-54() 41-35 2-79-54()
(10) 455 最左列21行目と
22行目の間
74-17 2-93-28()
74-19 2-93-29()
74-17 2-93-28()
74-18 1-94-31()
74-19 2-93-29()
(11) 481 最右列3行目 7065 2-79-54() 7065 2-79-54()
(12) 501 最右列13行目と
14行目の間
9B2B 2-93-23()
9B2E 1-82-13(鬮)
9B2B 2-93-23()
9B2D 1-94-31()
9B2E 1-82-13(鬮)
(13) 505 2列目38行目 (FA6A)1-93-91()
(FA6B)1-94-31()
HALFWIDTH AND FULLWIDTH FORMS
(FA6A)1-93-91()
HALFWIDTH AND FULLWIDTH FORMS
(14) 527 解説4 面区点欄
の7行目
1-10-821-6-35
備考1.この正誤票は,第1刷に対するものです。
2.この規格についての意見又は質問は,経済産業省 産業技術環境局標準課 情報電気標準化推進室[〒100−8901 東京都千代田区霞が関1丁目3−1 TEL03-3501-1511(代表)]にご連絡ください。

2001.5 日本規格協会 発行

内容の解析

 今回の正誤票の内容は、以下の4つの修正に分類される。
  1. 2-79-54の字形崩れの修正
  2. 「闘」の常用漢字表康煕別掲字のUCS、X0212コード修正
  3. 1-1-29(全角ダッシュ)のUCS修正
  4. γ(軟口蓋化)の面区点修正

2-79-54の字形崩れの修正

 2面79区54点という風に上部の「泉」の「白」上部が崩れていたもの。正誤票の(1),(5),(6),(7),(8),(9),(11)で修正されている。「字」は規格の「規定」にかかわる事項である。単純なミスであろう。

「闘」の常用漢字表康煕別掲字のUCS、X0212コード修正

 「闘」の常用漢字表康煕別掲字、1面94区31点のX0221およびX0212の修正。それぞれ正誤票の(3),(4)で修正されている。前者は規格の「規定」にかかわる事項、後者は規格の「参考」にかかわる事項である。これらの修正に伴い、正誤票の(10),(12),(13)の修正も発生している。
 今回の正誤票で最も重大な修正と考えられる。
 この誤りは、私の「新JIS漢字典」でも指摘していた。
 なお、(9B2D)と「括弧」をつけたUCSとしているが、「丸かっこのついたUCS」は規格票には「X 0221に含まれていないもの」と「規定」されている。このため、これは「括弧」を取った形が正しいと考えられる。正誤票の再発行、もしくは次回の改正の際に修正が必要だろう。
 『JIS漢字字典(増補改訂版)』では、UCSを9B2Cとしているが、規格の規定に従っていないといえる。JIS漢字字典(増補改訂版)の、発行時期からは正誤票を反映しているはずである。
 なお、U+9B2D、X0212の74-18は包摂により1面94区31点と同字形となる。この文字の解釈については、豊島正之氏の論文
豊島正之,『文字の符号化−新JIS漢字第3・第4水準の開発から見た−』,『京都大学大型計算機センター 第64回研究セミナー報告 東洋学へのコンピューター利用』,2000年3月,3-18ページ所収
が必読であろう。当該論文の該当部分のJIS X 0213解説への収録を切望する。

1-1-29(全角ダッシュ)のUCS修正

 1面1区29点「―」(全角ダッシュ)のUCSがU+2015(HORIZONTAL BAR)からU+2014(EM DASH)に修正されたもの。正誤票の(2)で修正されている。規格の「規定」にかかわる事項である。単純なミスであろう。
 ただし、MS-IMEでは全角ダッシュをU+2014にしているようなので、単純なミスでは片付かない可能性もあり、Windowsの実装にも関係するかもしれないが、ここでは深入りしない。

γ(軟口蓋化)の面区点修正

 解説の「この規格とIPAチャートとの対照表」での修正。軟口蓋化の面区点を「1面10区82点」から「γ(1面6区35点、ギリシア文字のガンマ)」へ修正している。この部分は、規格の一部ではない。正誤票の(14)で修正されている。
 制定の過程で、この文字に関してはやや面倒な議論があったような記憶もあるが、詳細は覚えていない。当方の知識の範囲を超える内容なので、これに関しても深入りしない。
 該当ページは『JIS漢字字典(増補改訂版)』にも収録されており、当正誤票の内容に沿って修正されている。前に述べた、『JIS漢字字典(増補改訂版)』はこの正誤票を反映しているはず、という推測を裏付ける証拠である。

履歴

2003年2月9日 公開

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