【大連からの風 ナンバー40 1999.1.20】

◎中国の学校と羊年と

 中国では羊年生まれの女の人は好まれないという。もちろん迷信なのだが、羊年生まれの女性は気が強く、男を足蹴にするイメージがあるという。そのため羊年の年は出産数が減るらしい。このあたりは日本の丙午のイメ−ジと重なる。ただここからが少し違う。子どもの数が少ないとまず困るのが学校である。中国でも義務教育制度があることにはあるのだが、無償ではないため、子どもの数が多ければ学校の会計はうるおい、逆に少なくなれば苦しくなる。日本の私立の学校の感覚である。羊年の子どもが1年生になるときにはその絶対数が足りない。そのため、規定年齢に達していない子どもでも入学を許可する場合があるとか。このあたりの感覚はおもしろい。でも面白がってばかりもいられないこともある。学校が副業を行なっているのがそれである。
 ある小学校では学校の敷地内に飲食店を建てさせ、そこから毎月莫大な家賃を徴収している。その何十万元というお金は学校の予算の一部になるかといえば、そうでない場合も多いらしい。権利人の名義は学校長個人になっており、その使い道がどうなのかはわからないのである。国が違っても似たようなこともあれば、全く考えられないこともあるものである。
 学校といえば中国の学校の出し物というのも日本のそれとは全く違う。日本の学校の学習発表会で行なう様々な演目は、大部分は「日頃の学習の成果の発表」という目的のもとで行なわれる。しかし中国の学校の場合、そのままその芸で生活できるのではないだろうか、というものすごいレベルの出し物を出す。
 先日行なった今年度2回目の地元T小学校との国際交流の際に見た、T小学校の出し物も、ものすごくレベルが高かった。中国古典楽器の演奏、ブラスバンド、舞踊、社交ダンス、ロックバンド等々、どれをとっても日本の比ではない。「これで食っていける」というぐらいすごいのである。事実将来この道に進もうと考えている親子も少なくないらしい。
 これらの芸を学校で指導しているかというと、実はそうではない。中国には「少年宮」「青年宮」という社会教育施設があり、子どもたちは土日にここに通い、一つの道を究めるのである。私たちが訪れた学校は、それらの子どもたちの芸を発表する場所になるわけだ。これも確かに日中の文化の相違の一つであるといえる。


◎学校のウサギ

 学校でウサギを飼っている。ウサギといえば日本ではいろいろな事件の中心になることが多い。古くはどこぞの教頭先生が生き埋めにして大問題になり、また日本各地でウサギ小屋が破られてウサギが持ち去られる・殺されるなどという事件が頻発している。
 大連日本人学校のウサギにも昨年からいくつかのドラマがあった。
 昨年2羽でスタートしたウサギが、いつのまにやらどんどん殖えた。ねずみ算という言葉は聞いたことがあるが、ウサギ算とは聞いたことがない。6羽になった夏、台風が大連を直撃、ウサギ小屋の戸が壊れ、4羽のウサギが逃げた。残りは2羽。この2羽が始めからいた2羽なのかどうなのか見分けがつかない。また殖えるのだろうかと戦戦恐恐としていたところ、どうやら同性だったらしく、子どもは産まれなかった。
 この秋、誰も知らないうちにウサギが一羽殖えていた。それも子ウサギではなく、大人のウサギである。このウサギは誰も知らないうちに学校の玄関に置かれていたのである。今までの2羽は白ウサギであるが、今度のは茶色でピーターラビットのようだ。しかしせっかく同性どうしで子供が殖えないでいるところに新しいウサギを入れて、それが異性だった場合、また大変なことになってしまう。いったいどうしたものか。
 とはいえほかにどうすることもできないのでやはりウサギ小屋に入れた。するとどうだろう。これも同性だったらしく、子どもはできていない。
 冬。不思議なことがおこった。ある日ピーターラビットがいなくなったのである。ウサギ小屋のカギが壊されたのだ。白ウサギはいるのだが、茶色だけいなくなっている。大連ではウサギを食べる。もしかすると食べるために誰かが持っていったのかもしれない。日本では大騒ぎになるかもしれないことが、ここ大連ではごくさらりと過ぎていく日常風景であるのがおもしろい。
 2学期末、一羽だけになったウサギを励ますべく、2年生は生活科の時間にウサギをグランドに放し、走らせることにした。今まで狭いところにいたウサギは急にだだっ広い場所に出たのに怖じ気づいたのか、少しも動こうとしない。遠巻きに見守っていた子どもたちはウサギをけしかけ始めるのだが、やはり動かない。急に広いところに出たので、戸惑っているようだ。
 冬休み中。なぜだかわからないのだが、またウサギが増えた。ある日の朝、パンダウサギが一羽、学校の玄関前に段ボールに入れられて置かれていたのである。このパンダウサギはとても元気で、グランドに放すとすぐに脱走しそうで、ウサギ小屋に入れたままでいる。ところでこのパンダウサギと白ウサギ、同性なのか異性なのかがわからない。その結果が出るのはまもなくである……。


◎大連観光案内

 1月13日に琉球大学の先輩で、現在北海道で教員をしているMさんが大連へ観光に来た。1月13日といえば北海道ではまだまだ冬休み中であるが、北海道以外はとっくに3学期が始まっている時期である。大連日本人学校も8日に3学期が始まっていた。そのため、私は昼間は観光案内ができない。そしてMさんの日程が非常に短いため、効率的に大連を見てもらわなければならない。さらに普通の観光客が行かないようなところも紹介したいではないか。そこで『工藤トラベル』としては、かなり考えた観光計画を作った。
 ちなみにMさんの日程は以下の通りであった。 

1月13日 関空発 チャイナエア 18:20大連着
   16日 関空行 チャイナエア 11:50大連発

という、本当に中二日しかない日程である。
 では、実際にどのように過ごしたのかをご紹介しよう。 

1月13日 19:20 大連賓館へチェックイン。何と400元であった。
       20:00 居酒屋「海の郷」で刺身、焼き鳥、地元ビール「[金方]錘島」で乾杯。


  14日  9:00 ガイドを頼み、
      ・中山広場 大連賓館の目の前。大連の中心。
      ・天津街 大連一の繁華街。
      ・勝利橋 旧日本統治時代の「日本橋」日本に勝利したので「勝利橋」という名前になる。
      ・旧ロシア人街 ロシア統治時代のロシア人住宅街。
      ・大菜市 市場。30年前の大連がここにある。
      ・狗不理包子 食べ物の名前。直訳すると「犬も無視する饅頭」となる。しかしとてもおいしい。
      ・大連自然博物館 いろいろなものがある博物館。何と本物の人体も展示している。
      ・星海公園 夏は海水浴でにぎわう。ここの水族館はとても見応えがある。
      ・星海広場 将来の大連の中心地となるべく計画的に作られている。
       16:10 日本人学校視察。
       18:00 大連で一番おいしい火鍋店「野力肥牛火鍋」で夕食。
       20:30 足マッサージ。


  15日  9:00 大連青年旅行社にお願いしての旅順一日ツアー。全て込みで1000元である。
       18:30 居酒屋「森富」にてきりたんぽ鍋。
       20:30 またまた足マッサージ。

  16日  9:15 秀月酒店レストランにてお粥の朝食。
       10:40 空港着。


という内容であった。短期間の大連観光の方の参考にしていただけると幸いである。ところで私はとても驚いたのだが、今回の旅行の関空−大連の往復チケットが3万5000円だったとか。これは安いなー。


◎センター試験中国語

 またまたやってきたセンター試験。
 昨年、このセンター試験の中国語問題をインターネットで入手し、やってみたところ94点であった。今回あれから一年。この一年間の中国語学習の成果をためすよい機会である。さっそくやってみた。今年の問題にはピンインが出されており、去年とはひと味違った印象を受けた。知らない漢字がいくつかあるものの、去年よりはよくわかる。また、会話文を問う問題が結構あり、これはかなりよくわかる。結果はどうだったか。何と137点も取れていた。やはり学習は無駄ではなかったのだ。
 家庭教師の学生にもやらせてみたところ、182点だった。間違えたところは日本語の設問の意味を取り違えた部分だった。私が「9割も取れていたらすごいじゃない」というと、「中国人は全部あっているべきです」と不満そうだった。


◎中国語検定

 日本には「中国語検定協会」という団体があり、英語の英検のように中国語実力の級認定試験を行なっている。その基準は以下のようになっている。
●準4級 中国語の学習を進めていく上での基本として複文に及ばない基礎知識を身につけている事。
●4級  日常生活語彙500〜1000ならびに中国語文法単文の基礎的事項をマスターしていて、平易な中国語を聞くこと。
●3級  一般常識語彙1000以上2000ならびに中国語文法の一般的事項をマスターしていて、簡単な日常会話が出来、基本的な文章を読み、書くことができるもの。
●準2級 常用語3000以上を完全にマスターし、主として複文を含むやや高度の中国語を読み、3級程度の文章を書くことが出来、日常的な話題での中国語会話が行えること。
●2級  中国語文法の全般的事項をマスターし、社会生活に必要な中国語を基本的に習得しているもの(初歩の文言を含む。新聞、雑誌、文学作品、実用文などの中国語訳、日本語訳、簡単な通訳が出来ること。
●1級  中国語全般にわたる高度な運用を有するもの。十分な読解力・表現力を有し、相当複雑な中国語及び日本語(例えば挨拶・公園・会議・会談)の日中両国語による翻訳・通訳ができる。


 私はどこら辺だろう?


◎一人暮らしの弁当

   

 大連日本人学校は給食がない。毎日弁当持参である。年末から一人暮らしが始まっている私は、弁当屋の弁当を頼んでいる。この弁当、中国にはよくある、中華ファーストフード店(中国語で「快餐庁」)のもので、5元(75円)、8元(90円)、12元(180円)、20元(300円)の4種類があり、おかずと品数が違う。それぞれ日替りで、同じ内容が続くことはない。 5元よりは8元、8元よりは12元がおいしいだろうと普通は考える。ところがそうでもないのである。12元でも「失敗したー。5元の方がおいしそう」ということもあればその逆もある。
 ある日、初めて20元の弁当を頼んでみた。いつも5元か8元かで躊躇する私にとっては結構な冒険だった。するとものすごい弁当が来た! 何と4重の弁当箱で、これは「絶対に食べきれないぞ」というような豪華版だった。味もとても良い。しかし基本的に中華であるので、毎日この手の弁当が続くとつらい。
 とそんなある日、秋田出身の社長が経営する居酒屋の社長が学校に弁当を持ってきた。「今度から弁当を始めます。食べてみてください」というその弁当には刺身もあり、玉子焼もある全く日本の弁当だった。これは涙が出そうなほどおいしかった。値段が50元(750円)というのがちょっと高いのではあるけれど……。

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