FIFA/コカコーラ世界ランキング

基本原理の概要と計算方法

1. 背景と歴史

1993年8月、FIFAはコカコーラとの共同研究の結果、各国の代表チームのランキングシステムを発表した。 そのシステムは、国際的に活動するチームの相対的な強さの比較を一定期間毎に発表することを可能にする。

その発表以降、FIFA/コカコーラランキングは、国際Aチーム間の比較におけ る信頼できる尺度であることを示してきた。 いく年かにわたりランキング手順の細部のいくつかが改良の必要を示してきて、 適切な改訂版が1999年の始めに使われた。

以下は、ランキングが計算される上で、改訂された基本原理の概要である。 内包する様々な尺度の説明と、いくつかの具体的な例を示すことにより、 将来FIFA/コカコーラ世界ランキングリストを理解し、 分析することがより簡単になることが期待される。

2. 概要

FIFA/コカコーラ世界ランキングは、国際的な試合で競技する全てのFIFAメンバー協会の代表Aチームを含んでいる。 計算に含まれないのは、ジュニアチームや他の代表(例えば女子代表チームなど)である。

ランキングに考慮されるのは、過去8年間にわたる全ての国際A試合の結果である。

ランキングリストはコンピュータプログラムによって作られる。 コンピュータプログラムは明確に定められた基準に従って、 各試合毎にチームにポイントを割当てる。 考慮される要因は以下のとおりである。

  1. 勝利、引き分け、そして敗北
  2. ゴールの数
  3. ホームかアウェイ試合
  4. 試合の重要さ (掛け算要因)
  5. 相手の強さ
  6. 地域の強さ (掛け算要因)

3. 基本的な計算原理
といくつかの例

FIFA/コカコーラ世界ランキングの背後にある基本的な考え方は、 通常のチャンピオンシップと同じである。 チームは各試合毎に、結果に応じてポイント数を勝ち取ることができ、 そしてそのポイントは合計される。 合計が最も高いものが、ランキングリストのトップとなる。

しかし、通常のリーグチャンピオンシップに対して、世界ランキングでの試合 のチームポイントは、単に彼らが勝った、負けたまたは引き分けたかどうかでは 決まらない。 さらに、試合の合計に影響するものは、勝ち側と負け側のゴールの数、 開催地そして試合の重要度である。 加えて相手の強さも考慮され、 弱いと評価されている相手に対する勝利は、 強いと評価された相手に対する勝利よりも、稼ぐポイントが少ない。 これは、国内リーグで起こるように、勝利が単純に2または3のポイントを、引 き分けが1ポイントをもたらすということがないことを示す。 上に述べた要因を含んでいるために、計算はより複雑である。

ランキングリストをより理解しやすくするために、 1999改訂版は"スケールアップ"してきている。 以前は、勝利は1から3の間のポイントを稼いでいたが、 今は尺度が10倍されきているので、 相手によって勝利は10と30の間のポイントをもたらす。 リスト内のチームの合計は今後は0から約800までの範囲となる。

以降の節で個々の重みづけ基準の詳細を述べ、4節でこれらの原理を適用した結果を いくつかの例で示す。

3.1. 勝利、引き分け または 敗北

本来、どんなシステムにおいても勝利は敗北よりも多くのポイントをもたらす。 しかし単純に、勝利に2または3ポイント、 引き分けに1ポイントそして敗北に0ポイントを与えることは、 信頼できる世界的規模のランキングリストに対する全ての要件を 完全には満たさない。

そのため、ポイントの配分は2つのチームの相対的な強さを考慮に入れてもいる。 現実的には、このことは、弱い相手への勝利は、同じく評価された相手ま たは強い相手への勝利よりも少ないポイントを稼ぐことを意味する。 弱いチームが、強いチームに対して良い仕事をすることで、敗北しても ポイントを稼ぐこともまた可能である - しかし、概して、彼らを打ち負かした強いチームほどは多くない。 (4章の例を見よ)

特別な例外が、ペナルティーにより決定された試合のために用意されている。 勝利チームは、勝利の全ポイントを稼ぎ、 一方、負けたチームは引き分けの場合に与えられるポイントを得る。

3.2 ゴールの数

さらに考慮にいれられる要因は、試合での勝ち側と負け側のゴールの数である。 ここで、これらのポイントの配分は、2つのチームの相対的な強さによって決 まる。 違う言葉で言えば、より低く評価されたチームによって得点されたゴールは、 より高く評価された側により得点されたゴールよりも、より重みづけされる。 バランスシートの一方は、ポイントは負け側のゴールにより差し引かれる。 より多くのゴールで攻撃的なサッカーを促進するために、負け側のゴールは 勝ち側のゴールよりも低く重み付けされる。 ペナルティーにより決められた試合においては、ゴールは 通常の試合時間の間のものか、延長時間のものかだけが計算で考慮される。

ゴールのあり得る"過剰な重みづけ"は、 チームが決めた最初のゴールに、それに続くゴールよりも重要さを付加することで避 けられている。 概して、ゴールの数が、勝利によって与えられるポイントよりも多く稼ぐこと は決してない。 このことは一般規則と一致していて、 より多くのゴールが結果をより印象的にみせると同時に、 最終的な計算において、 通常のリーグチャンピオンシップのように 勝利であるか敗北であるかを決定づける。

3.3 ホームとアウェイ試合

ホームから離れて試合をすることの特別なハンディキャップを斟酌するために、 アウェイチームは3ポイントの小さなボーナスを与えられる。 中立地帯で競技された試合やワールドカップの決勝については、このようなボー ナスポイントは無い。

3.4 試合の地位

試合の重要さもまた考慮される。ワールドカップの試合は、友好試合よりもよ り大きく重みづけされる。 ここで適用される方法は、 あらかじめ計算されている係数を試合のポイント合計の倍率として使用する。

その係数は

→ 友好試合x 1.00
→ コンチネンタルチャンピオンシップ予選x 1.50
→ FIFA/コンフェデレーションカップ試合x 1.50
→ ワールドカップ予選x 1.50
→ コンチネンタルチャンピオンシップ決勝x 1.75
→ ワールドカップ決勝x 2.00

これは、予選は友好試合より50%高く、コンチネンタル決勝は75%高く、そして ワールドカップ決勝は2倍重みづけされることを意味する。

3.5 地域的強さ係数

さまざまな大陸の間には、強さにおいて差異があることが認められている。 客観的なやりかたで、これらを判断にいれるために、重み係数が 連盟のそれぞれについて毎年、算出される。 各連盟に対する評価の基本は、大陸間の直接試合でのそのチームの成績である。 年末毎に大陸ランキングリストが計算され、同じ尺度がFIFA/コカコーラ世界 ランキングのために使用される。

該当する大陸のチームが競技した大陸間の試合が全てではなく、 各大陸からの最も強いチーム達の間の直接対決だけが考慮に入れられる。 具体的にいうと、これは、含まれるのは 大陸の上位25パーセントのチーム間での試合であることを示す (最小で5チームが考慮される)。 この方法により、 弱い連盟の強いチームと強い連盟の弱いチームとの間の試合を考慮することで 誤解が伝わる危険が防がれている。

重みづけは、 同じ大陸(以下を参照)からのチームにたいする掛け算の係数として適用される。 もし2つの異なる連盟からのチームがかかわっている場合、適用される係数は、 2つの大陸の重みづけの平均となる。

1999年には、以下の重み係数が適用される。

→ UEFAx 1.00
→ CONMEBOLx 1.00
→ AFCx 0.90
→ CONCACAFx 0.86
→ CAFx 0.84
→ OFCx 0.84

3.6 要約

以上の考慮により、試合後にチームに与えられるポイントの総数は、以下の基 準に依存する。

勝利、引き分けまたは敗北のポイント数は、得点したまたはされたゴール数と 同様に相手の強さに依存する。 成功に届かなかったことを苛酷に厳しく罰しないように、負のポイント合計は 0.00に切り上げる。

4. 実際の計算の例

実際の例は計算の方法をより明確にする助けになるだろう。 この例では、異なる強さの3チームが 中立地域で小さな友好トーナメントで戦ったと仮定する。 簡単のために、アウェイチーム特典はなし、大陸または地位の乗数係数もなし とする。

このトーナメント以前は、3チームは以下のポイント合計である。

・チーム A:630 ポイント
・チーム B:500 ポイント
・チーム C: 480 ポイント

このように、チームAは3チームでいくぶん差をつけて最も高くランク付けされ ている。

以下の表は、 最も強いチームAといくぶん弱いチームBとの試合での起り得る結果にもとづい たポイント配分を示す。

チーム A チーム B  チーム A チーム B  チーム A チーム B
3 : 1 1 : 3 2 : 2
勝利/敗北 +17.4 +2.6 -2.6 +22.6 +7.4 +12.6
チーム Aのゴール数 +5.4 -3.6 +2.3 -1.6 +4.1 -2.7
チーム Bのゴール数 -1.8 +2.7 -4.1 +6.2 -3.1 +4.7
合計 +21.0 +1.7 (0.00) +27.2 +8.4 +14.6

表より、3:1で勝利した場合、チームAは合計21.0ポイントが割当てられること が認められる。 しかし、より高くランクづけされたチームでは、勝利自体ではこのうちの17.4 ポイントを稼ぐ。 より低くランクづけされたチームBも、それでも1.7ポイント稼ぐ。 "より弱い"チームBが3:1で試合に勝つと、27.4ポイントを受ける、 一方、チームAの負の合計は、0.00に繰上げられる。 2:2の引き分けの場合、弱く評価されているチームBは、Aよりもいくぶん多い ポイントを稼ぐ。

2チームの間の強さの差がもっと少ない時、ポイント配分は異なってくる。 以下のテーブルは、上の場合と同じ結果だが、だいたい同じにランクづけされ たチームBとCで、ポイントをどう分けるかを示す。

チーム B チーム C  チーム B チーム C  チーム B チーム C
3 : 1 1 : 3 2 : 2
勝利/敗北 +19.6 +0.4 -0.4 +20.4 +9.6 +10.4
チーム Bのゴール数 +5.7 -3.8 +2.5 -1.7 +4.3 -2.9
チーム Cのゴール数 -1.7 +2.5 -3.9 +5.8 -3.0 +4.4
合計 +23.6 (0.00) (0.00) +24.5 +10.9 +11.9

この場合、どちらのチームにも、勝利または引き分けについて、だいたい同じ ポイントが与えられていること、チームCが少し低くランクづけされているた めに、わずかに多く与えられていることがわかる。

通常はアウェイチームへのボーナスがあり、上に付け加えられる。 合計は、試合の重要さと地域の強さを考慮した重みづけ係数により掛け算され る。 このように、たとえば、もし上の試合がワールドカップの決勝戦で競技されて いるとすると、合計はまず2倍にされる、そして競技する2チームの大陸の重み づけ係数で掛け算される。

5. さらなる尺度

ランキングリストにより高い客観性を得るために、2つのさらなる尺度が考慮 されなくてはならない

5.1 競技した試合数

より多くの国際試合を競技したチームは、競技数が少ないチームより有利とい うわけではない、なぜなら限られた数のゲームだけが考慮にいれられる。 この数は"平均活動試合"と呼ばれるもので決定されてきた、そして、こ れらは年に7〜10試合を競技している時に適用される。

だからあまり活動的でないチームがランキングで不利ということはなく、 計算には最初に7つの最良な結果のみを考慮する。 さらに、結果はそれらの平均を算出することにより含まれる。

状況は例によって、最も理解しやすくなる。 チームが12試合を戦ったと仮定する。そのとき、計算は以下のようになる。

5.2 以前の結果

ランキングが正確に現状を反映するために、 最近の12ヶ月に戦われた試合を最も重要づけしている。 しかし、以前の年からの結果にもまた注意がはらわれている。 基本的に、今年の総ポイントは先の7年間のポイントを 過去ほど次第に低下する係数で平均される。 8年間の後は、結果は計算から落される。

このように1998年の最後のランキングの計算に入るポイントは以下を含む

最近の12ヶ月 (例として 1998) : 8/8 value
+ 前年 (1997) : 7/8 value
+ 前年 (1996) : 6/8 value
+ 前年 (1995) : 5/8 value
+ 前年 (1994) : 4/8 value
+ 前年 (1993) : 3/8 value
+ 前年 (1992) : 2/8 value
+ 前年 (1991) : 1/8 value

6. 賞

その年の最終ランキングリストの頂点のチームは、'その年のチーム'として称 される。

FIFA/コカコーラ世界ランキングにおける"その年の最良の移動者"の賞は、単純に ポイント数またはランキングの地位を登った数で、最も大きい上昇を 基礎としているわけではない。 考慮しなくてはいけないのは、 すでに持っているよりもポイントを稼ぐことは、徐々に難しくなっていく事実 である。

このように、 "その年の最良の移動者"を決定するために その年の最後に持っているポイント数[x]に その年の間に稼いだ数[y]を掛ける 計算が行なわれる。 最も高い値のチームがこのようにして賞を勝ちとる。

下の表に1994年の計算を示す。

チーム 1994年最後の
ポイント
(x)
1994年中に得た
ポイント
(y)
合計 (x * y)
クロアチア 30.39 21.86 664.41
ブラジル 67.18 8.46 568.23
ウズベキスタン 23.51 23.51 552.86
南アフリカ 32.19 17.16 552.58
ブルガリア 53.53 9.50 508.32

1999年版の計算では、ポイント合計が10の係数で上昇しているので、 この指標の価値も対応して上がる。

7. コンピュータプログラム

FIFA/コカコーラランキングを計算し更新するプログラムは FIFA 二人の専門家 Dr. Markus Lamprecht と Dr. Hanspeter Stamm により開発された。 このプログラム(1999年修正を含む)の開発は、 サッカー専門家、そしてFIFAの報道と試合部門の 緊密な協力で 実行された。


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