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ショートエッセイ

2001年後半のパソコン事情?(2001/12/24)

第一部

最近、新しいタイプの「コンピュータ・ウィルス」が世界中に広まっている。私のところにも毎日のように送られてくる。幸い実害はないものの、節税対策でマンション買いませんかの電話と同様、ウィルスつきメールをブチッと抹殺することに快感を覚えるようになってしまった。このウィルスのおかげでいままでコンピュータ・ウィルスとは無縁だった人も、無縁ではなくなった。私のように髪の毛のみならず話題が乏しくて人と話すのが苦手な人間でも、このウィルスの話をすれば共通の話題に花を咲かせることもできるようなった点ではありがたい。ところで私は、○○というメーカーのメールソフトは使っていないし、常に最新のウィルス検出ソフトを使っているから安心だ、と思っていたら、昨夜から急に喉が痛くなってきた。しまった!本当のウィルスにやられてしまった。

コンピュータ・ウィルスに感染し、他人にウィルスつきメールを送ってしまった人の中には、ご丁寧に「ごんめなさいメール」を送ってくれる人がいる(一応男性としておこう)。「紳士的」な性格の持ち主だ。メールのヘッダを見てみると、「CC」の欄に同報メールした宛て先がたくさん並んでいる。あれ、何でこの人がこの人たち(ここではたくさんの女性)と知り合いなの?ととんでもないことがバレてしまうのであった。「紳士的」取り消し、と書きつつ内心うらやむ私。こんなときは「BCC」の欄にアドレスを並べれば、相手には他に誰に出しているかを知られなくて済むのだ。このことを教えてあげるのが紳士というものだ。いや、そうしたら紳士(ウソ)であるはずの私がCCを覗いたことがバレてしまう‥‥。もしかすると、コンピュータ・ウィルスの作者はこうやって世の中から「紳士」を無くすのが本当の目的だったのかもしれない。(そんなはずはないけれど)

最近発売された新バージョンのパソコン用OSは、インターネット常時接続の時代を先取りしたものだそうだ。プログラムの不具合の修正などをネットワーク経由で自動的に行なうという機能が目玉の一つになっている。これはありがたい。しかし時代を先取りしているのではなく、あとで手直しするかもしれないプログラムを前売りしているに過ぎない、のかもしれない。ありがたいのは私ではなく、メーカーのほうではないのか。本来なら完成前の試作品を試用して報告してくれるモニターに報酬を払うべきなのだ。それなのに製品として買ってもらった上に、「試用」報告をネットワーク経由でどんどん送ってもらえるのだ。メーカーにとっては、こんなありがたいことはない。こうやって現バージョンの不具合を直したら、こっそり別の機能を未熟なままくっつけて新バージョンとして発売すればいいのだ。もしかしたらこの手はすでに「ビジネスモデル特許」になっているのかもしれない、なわけないか‥‥。

第二部(作り話)

 少し未来のお話。無線ネットワークも可能な体内埋め込みタイプのコンピュータチップや、マイクロマシン技術でマイクログラム単位の薬剤を正確に注射できる体内埋め込みタイプの注射システムができるようになるだろう。
 「わがマイクロ・ハード社の健康管理システムの最新バージョン(CoredemocaXp)は、単に身体の状態だけでなく、あなたの手足の運動量、さらには食事や間食時の咀嚼の状態、胃やの動きまでもモニターし、管理センターにデータを送ります。センターでは最新の技術でそれらを解析し、リアルタイムであなたの体内チップインジェクタを介してホルモン注射量をコントロールします。これにより、あなたの情動をより健康的な行動を選択するよう誘導します。このサービスは、BlueTooth(無線ネットワークの一種)により、世界中いつでもどこでも、あなたが意識することなく受けつづけることができます。(なお、当社のサービスは当社が存続するかぎりにおいて有効です)」
  (追伸)「当社の健康管理システムの一部に、セキュリティホールが見つかりました。街中に置かれた無線ステーションのうちのどれかがウィルスに感染していた場合、あなたがそのそばを通っただけで悪意のあるプログラムがあなたのチップに導入され、不適切なホルモン投与が行なわれる可能性があります。たとえばダイエットコースで登録されたお客様が異常な食欲に襲われる可能性があります。そして、この情動コントロールデータがあなたのお友達に送られ、その方(わが社製品の愛用者に限る)も異常な食欲に襲われることもあります。
このリスクを防ぐためには、当社の新バージョンのファームウェアに書き換える必要があります(有償)。なお現バージョンのサポートは勝手ながら本年中で終了させていただきます。」