イプシロンのスピードコラム 「無制限一本勝負」

通刊37

新日本プロレス、WAR観戦拒否宣言!!


 このたび、新日本プロレスは週刊プロレス誌に対して取材拒否を通告した。週刊  プロレスは今年に入り天龍源一郎率いるWARからも取材拒否を通告されている。  新日本は、WARはなぜ取材拒否という選択をしたのか?              週刊プロレスとプロレス団体との確執は、実はそんなにめずらしい事ではない。  かつては全日本プロレスが週刊プロレスに対し取材拒否をおこなったし、長州一派  が新日本プロレスへUターンした時も、長州軍のみが同誌に取材拒否を通告してい  る。全日本プロレスの時には記者はチケットを購入して入場し、後ろの席からリン  グを撮影するなどの取材努力がなされたし、長州軍の時には新日本プロレス自体は  取材拒否を行なわなかったので実質的には影響はなかった。しかし読者が取材拒否  の影響を受け始めたのはその次からである。                    メガネスーパーがプロレス界に突如参入しSWSが旗揚げされた時には、豊富な  資金に物を言わせあらゆる団体から選手を引き抜き、プロレス界の秩序を多いに狂  わせた。この時週刊プロレスはSWSを「金権プロレス」と批判。また節操無く選  手を集めた弊害からSWSは試合からポリシーを訴えることができなかったため、  試合レポートでも辛口の批評しか載らなくなっていた。SWSの総帥である天龍は  そのことに逆恨みし、同誌に対して取材拒否を通告した。同誌はこれを受けてSW  Sの情報一切をのせなくなり、SWSは存在しないごとくの扱いを始めた。天龍と  はSWSが崩壊しWARが設立された翌年に和解し、以後WARの記事も紙面をか  ざり始めるが昨年週刊プロレスが主催した4/2東京ドーム・オールスター戦へW  ARが参戦を拒否した事から両者間は再び冷え込み、そして今年に入りWARは再  度週刊プロレスに対し取材拒否を通告した。                    新日本プロレスを現在動かしているのは長州力である。長州は同社の社長でもな  んでもないが、昨年秋に自らプロモートした10/8東京ドームでの対UWFイン  ターナショナル全面対抗戦大成功の功労者として、新日本プロレス内での発言力が  急速に増していた。そこにきて以前から親交のあった長州−天龍のライン。昨年の  4/2東京ドームでのオールスター戦に対し、新日本プロレスは選手を送り出して  いたが、同日そばの後楽園ホールで行なわれていたWARには自らが乗り込み、天  龍とタッグを結成するなど不利と言われていた同興行を協力に後押しし、オールス  ター戦の裏というのに後楽園ホールに超満員の観客を詰め込んだ。          この一件以降、業界内ではプロデューサーとしてターザン山本編集長の手腕は評  価が高くなっていくし、SWS時代の怨念からWARの反ターザン山本・反週刊プ  ロレスの姿勢が顕著になっていく。同時に天龍−長州ラインから長州力も事ある毎  にターザン山本批判を強めていく。そして10/8東京ドームである。長州は主な  団体を一同に会し大成功をおさめたターザン山本プロデュース4/2ドームを遥か  にしのぐ観衆を、10/8東京ドームに集めてみせた。それもターザン山本ができ  なかった「全面対抗戦」という志向で・・・。そして取材拒否である。自らがター  ザン山本よりも遥かに優秀なプロモーターであると立証して見せた長州は、今度は  山本のプロレス界追放を狙ったと見ることができるだろう。             新日本プロレス、WARともに取材拒否の理由に「山本編集長の独断的編集方針」 を挙げている。確かに山本氏は独断的である。いや、独善的と言ってよい。『天上  天下唯我独尊』である。でも、逆にいえばそうでなければマスコミとしては失格だ  と私は考える。朝日、毎日、読売、産経各紙が「自民党万歳。官僚万歳。住専処理  策大歓迎」となる記事ばかりを紙面に飾ればどうなるだろう? マスコミは反体制  的スタンスを取り体制に対しての批判を行なうから、社会は自浄能力が発揮できる  のだ。大本営報道ばかりが繰り返されれば、世界は決してよくならない。プロレス  界も同じである。新日本もWARも問題点があるから指摘されるのである。それを  是正しようとしないで書いた人間を追放しようとは言語道断ではないか? そもそ  も新日本、WARにとってターザン山本氏は他社の人間である。にもかかわらず山  本氏の更迭を要求するのは人事介入も甚だしい。ましてや「発言が気に入らないか  ら」と集中攻撃を加えるというのは、まさにいじめの構図ではないか?        私が一番問題としたいのは、両団体がファンに対する配慮を行なわなかった点で  ある。週刊プロレスの読者というのは言うまでもなくプロレスファンである。中に  は当然新日本やWARの熱狂的なファンもいたはずである。ましてや週刊プロレス  の発行会社であるベースボールマガジン社は他誌に比べて営業能力が極めて高い。  そのために他誌がコンビニなどへは並ばない地方に於ても、簡単に入手することが  出来る。また他誌はKIOSKには並んでいないため、駅でプロレス誌を買うとな  れば必然的に週刊プロレスを選択せざるを得ない。ただでさえプロレスが深夜放送  になりネットが打ち切りになる地方が増えており、プロレス情報を週刊プロレス誌  に依存しているファンが増えているというのに、両団体は今回の取材拒否でそうい  った非選択的に週刊プロレスを購読していたファンをバッサリと切捨てたのである。 団体はファンのことを一体どのように考えているのだ!?              私自身もココ9年間、毎週必ず週刊プロレスを購読してきた。そして週刊プロレ  スを通じて新日本プロレスを応援してきた1人である。それだけに今回のファン切  り捨てという事態には憤慨している。私は今回の両団体への強い抗議として、今後  両団体が今回の暴挙を解除するまで、私はここに新日本プロレス、WAR両団体の  ライブ観戦を拒否する。仮に地元に来ても行かないし、無料招待券を受け取ったと  しても破り捨てる。それが切り捨てられたファンとしての、団体に対する意地でも  あるのだ!!                                       「無制限一本勝負 通刊37」     完  とは言いながらも、TODAYデータサポートの為に9年間慣れ親しんだ週刊プ  ロレスの購読を打ち切り、週刊ゴング誌への購読に切り替えた。断腸の思いだがし  かたがない・・・・・。1日も早い事態解決を望む。ちなみに新日本は独自にプロ  レス雑誌創刊に動いているという。今回の一件に関係はあるのか!?        Presented by IPUSYRON The Y.Yoshioka.  このMSGは、1996年4月版のTODAY格闘技興業データ付録のコラムをあ らためて掲載したものです。                         


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