GIFおよびTIFFのLZW圧縮の特許に関して

2000/05/18


最近LZW圧縮のライセンスについて問い合わせが増えてきましたのでここに記述しておきます。問い合わせが増えている要因は「UNISYS社とLZW圧縮に関するライセンス契約を行っていないソフトウェアを利用してLZW圧縮の画像を作成した場合、ソフトウェアの受給者であっても免責を受けるわけではない」(原文はこちら)という解釈がUNISYS社から示され、その話が広まっているためと思われます。

ライセンス契約は締結しているのか?

UNISYS社と長橋かずなりはUNISYS社が特許を保持するLZW圧縮技術(U.S. Patent No. 4,558,302)を長橋の配布するシェアウェアで利用することに関してライセンス契約を取り交わしています。あなたが長橋の配布するシェアウェアを利用して作成したGIF画像、およびLZW圧縮を利用したTIFF画像を取り扱う上で、本特許の権利を侵害することはありません。ただし、長橋のシェアウェアの試用期間を越えて、そのシェアウェアの利用権を購入することなく作成したGIFおよびLZW-TIFF画像に対してこれを保証するものではありません。

ライセンス契約について教えて?

主にソフト開発者から寄せられる質問です。私のシェアウェアの契約の場合は販売価格に対する割合で課金される契約です。前払い金(いくつかの話を総合すると$1000〜$2000程度のようである)を支払い、そこから販売本数に応じて減額されています。前払い金はクレジットカードで行っています。シェアウェアの定義として30日の試用期限を設けることなどを一例とする契約条件も示されるはずです。

あなたのソフトウェアの配布形態や目的によって契約の内容は異なります。ライセンスフィーも異なります。私が私のソフトを他社製品へバンドルする件を問い合わせた場合には1ライセンスあたりの固定額を提示されました。フリーウェアであったり、自社内のみでの限定された利用範囲などの条件であってもライセンスフィーの支払いは発生するようです(むしろ初期に必要な金額は高額のようである)。詳細はLZW_INFO@UNISYS.COM にお問い合わせください。最初の問い合わせの際に、LZW圧縮のどのフォーマットを利用するのかということと、ソフトの種別や販売形態を含ませておくとすぐに望みの回答を得られると思います。英語で問い合わせる必要があります。英語に自信のない方は私からは道下さんを紹介しておきます。少量でも快く引き受けてくれるものと思います。

そして私の考え

この段は上記2000年5/18に記述分から6/1に追加するものです。上記の掲載をした直後に雑誌社からこの問題についてインタビューを受けたという刺激もあります。

この問題が最近特に一般的なホームページ開設者にまでにも関心が寄せられているのはやはり$5,000徴収事件にあると思います。GIFの圧縮と展開を利用するソフト/ハードにあっては特許料が必要だという事については1994年頃からUNISYS社から示されていたものであり、多くの反発がありながらもその技術を利用する商用目的のソフト開発/販売者に課せられるものであるということから、画像の利用者の興味を引くことはなかったためにUNISYSのLZW圧縮のライセンス料の徴収は順調であったと言えます。開発者にとっては快くはないが、利用者からの実質的に標準と成りつつあった技術への対応要望に対してライセンスフィーを払ってでも対応するのはやむを得ないという考えがあったと思います。そして、非商用であればそれについては課金しないという態度であったと思うのでフリーウェアの開発者は負担なしにその技術を利用していたと思います。

LZW圧縮、もしくはアルゴリズムに特許を与える価値があるのかという議論は私にとって興味はありません。仮にそれが価値のないものであれば、代替技術が多く開発されるので特許法の理念の一部である技術促進も行われるはずなので問題はないはずです。特にUNISYSが94年の時点でフリーウェアに対しても課金すると表明していれば事態はPNGの普及に大きく傾いていたと思います(つまりPNGが代替技術として十分なものであった)。

しかしながら、その時点で非商用目的のものに対して課金しない態度を示していたのがUNISYSの第一の不誠実な点です。フリーウェアにも課金する現状となっては、結果的にフリーウェア作者はGIFの普及のお手伝いをしたことになります。そして、現在はフリーウェアの方がシェアウェアよりも高額な(シェアウェアの一般的な売り上げと比較して)ライセンスフィーを払わなければならないという理不尽な状況になっています。

UNISYSの第二の不誠実な点はソフト/ハードの受給者にあってもその製品を利用するにあたって、ライセンスを受けた製品であるか確認しろという態度です。家電屋でAVアンプを購入する際に「この製品はDolbyとライセンス契約を結んでいますか?」と販売店やメーカーに問い合わせる人はいません。購入後に「あなたはライセンス契約を結んでいない製品を利用しているので特許の権利侵害です。$5000払いなさい。」ということが起こったらどうなるでしょうか。

つまり、特許法の問題というよりはUNISYSのその権利の運用に問題があると感じています。事情はどうであれ端から見れば超意図的サブマリンです。UNISYSはコンピューター史に登場するほどの歴史的な企業ですが、インターネット史へ名を残すのはLZW特許問題だけとならないことを願います。


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