99/02/23 長橋 かずなり
静音化を目指すといいながら98/03/27に掲載したSMP化によってすっかり並みの自作PCの騒音になってしまった。これを騒音の根本原因であったCPUを変更することにより静音化を行い、なかなか満足のいく状態になったので報告しよう。
騒音源であったのはAAVIDのCPUファンが2個、IBM DCAAが2台、動作不安定のため追加したケース背面の排気ファンが1個である(Power&Cooling社の電源は静かなので除外)。騒音の根本の原因といえば発熱量の多いPentium II 300MHzによるSMP構成であったのだ。しかし、発熱量の少なそうな製造プロセスの異なる上位Pentium II達へのリプレースを考えると、実行して魅力のあるパフォーマンスを発揮しそうな400Mhzや450Mhzは2個も購入しなければならないことを考えると金銭的にとても手が出ない。AMDとの価格競争に走るCeleronは価格的な魅力や新しい製造プロセスによる発熱量の低下などの点では魅力的に感じていたのだが、当初2次キャッシュがなかったことやマルチプロセッサをサポートしていないなどの理由から購入意欲がまったく沸いていなかった。しかし、Celeronによるマルチプロセッサ化で紹介したように状況は変わった。Celeronでもチャレンジャーになればマルチプロセッサ化が可能なのである。期待通りCeleronの発熱量は非常に低かったので早速静音化に取り掛かることにした。
まずは静音化を考慮していない普通(?)の状態のCeleron Dual化完成図を見ていただこう。
Socket370をSLOT1に変換するためのドーターボード上にPPGA版のCeleronが差し込まれている。このCeleronはリテール版でSANYOのCPUファンが搭載されている。このファンの音量は以前に記載したAAVIDのPentium II用のUltra Quiet Fanよりはやや静かなのだが、それでも2個搭載するとなるとあまりよい感じの音量ではない。小さい割に高回転で回って「ブーン」と力強よく回っている。ヒートシンクの表面積の少なさをファンの風速で補っているという感じがする。Celeron 366MHzを83MHzX5.5倍の458MHzで駆動してもきわめて安定するので冷却性能的にはまったく問題無いのだが。
リテール版のCPUファン |
ヒートシンク形状(小さい) |
ベンチマークマニアとして更にファンを巨大化して更なるクロックアップを目指し、レーシングカーのごとく性能第一というのも面白いかもしれない。しかし安価なCeleronで標準状態の上位Pentium IIの性能が出たところでパフォーマンスは満足して静音化に取り掛かろう。
今回の最大のポイントはCPUの発熱量が下がったことである。また、ハードディスクをIBM DCAA2台からIBM DTTAの大容量のもの1台に変更したのも発熱量の低減に貢献している(ちなみにDTTAはDCCAよりも音量は低く、回転音とシーク音ともに音の周波数は低い)。これによって上の写真の背面のケースファンを停止してもまったく問題はなくなったので、ハードディスクと合わせて騒音源がかなり減ったことになる。
次に残る騒音源はCPUファンである。このCPUファンを観察すると小さなヒートシンクに高回転なファンの組み合わせである。スペース的に狭い場所に搭載しなければならないなどのいろいろな状況に対応しなければならないのでなるべく小型な形状になるのであろうか。冷却性能は基本的にヒートシンクの表面積と風速で決まるので、スペース的に余裕のある今回の場合はそのバランスを逆にすればよいと考えた。巨大なヒートシンクをと低回転のファンの組み合わせである。
ソケットの形状からしてPentium時代の大型ヒートシンクも採用できるのだが、ここは思い切って手持ちの中で最も巨大なAAVIDのヒートシンクを使ってみることにした。右の写真でわかるとおり高さやフィン枚数ともに非常に多い。AAVIDのファン無しの類似製品のスペックから想像すると性能的には熱抵抗値が0.9℃/W程度(1m/Sec時)のようなので冷却性能も十分のようである。運がよければヒートシンクのファン無しの理想的な状態になるかもしれないと思った。
最大の問題点は取り付け方法である。私の購入したCeleronはPPGA版なので、SECC用のAAVIDのファンは普通には取り付けることができない。第一の難関はヒートシンクとSECCカートリッジの接する面にヒートシンクの裏側からピンが出ていたことである。このピンはSECCカートリッジの穴に挿し込み、位置を固定するためのものである。ピンを残したままであると、ピンがCPUにぶつかりヒートシンクの裏側の面とCPUが接しないのである。このピンはねじ込み式か差込式に見えたのでとりあえずはハンマーでたたいてみた。びくともしないのでペンチでつかんで回し抜いてみたらあっけなく抜くことができた。結果的には差込式であったが背面からハンマーでたたいても抜けない形状になっていた。
次の難関はヒートシンクをCPUに固定する方法である。Socket370の耳に引っかけるような金具は使えないのでソケットのわずかな面を利用してクッション付きの超強力な両面テープで固定することにした。しかし、これはしばらく使っているとヒートシンクの重さに耐えられずに落下してしまうことがわかったので、紐による固定も追加した。なんだか原始的である。
赤丸の部分はSocket370と書かれた幅1cm弱、長さ4cm程度のスペースにクッション付きの強力な両面テープを張り込んでいる。2.5cm平方で800g程度の耐過重なのでこれだけでAAVIDのヒートシンクを支えるのは難しい。 | |
横方向の青い線は荷造り用の紐である。 | |
紐による固定をドーターボードの背面から撮影。 |
ケース背面の排気ファンとCPUファンは取り除いた状態で、Celeron366MHzの動作クロックは458MHzでNTの起動である。しかしNTは起動するもののかなりな発熱量とともに5分程度でハングしてしまう。さすがに風量の少ないSilencer電源ファンだけのケース内風速では冷却が十分でないようだ。
そこでケース背面のファンを回転させることにした。実はこのケース用のファンは今回Power&Cooling社のSilecerファンを新規購入したものである。やけに静かなファンで、Celeronのリテール版のCPUファンよりも静かである。しかし、風量的にはあまり多くないようだ。結果的にはCPUを酷使するベンチマークを30分ほど続けるとWindowsNTでハング状態になってしまう。この酷使状態で30分動作すれのであれば後一歩というところだと感じた。以前に実践した手法のように、AAVIDのヒートシンクに静かなCPUファンを搭載することも考えたのだが、せっかくケース用のSilencerが静かなのでこれを利用してみることにした。2個のヒートシンクそのものには直接2個のCPUファンを搭載せずに、1個のSilencerファンで済ませてしまえば静かなはずである。
2個のヒートシンクに対して1個のファンで済ませるためにのファンのレイアウトはほとんど1個所しかない。私の利用するケースはCPUの上部空間を利用してハードディスクをマウントできるようになっているのであるが、今回のドーターボードの利用でスペース的にハードディスクがマウントできなくなってしまった。しかし、そのマウント部分にボルトを通す穴が空いていたので、どうせ使えなくなったこの穴を利用してケース用のファンを固定することにした。
結果はまったく問題ないものとなった。ベンチマーク、プログラムのビルド、ネットサーフィンなど何時間続けてもまったく問題ない。酷使後にヒートシンクを触ってもリテールのPentium II 300MHzよりも温度は低い。これだけの性能でメーカー製のデスクトップPCよりも静かになってしまったかもしれない。もはや最もうるさいのはHDDのシーク音だ。
可能であればケース用Silencerファンも取り除いてしまいたいと思うようになってきた。アルファ社のP12060SBが公開スペック的に性能が高いのでこれを入手して試してみようと思う。
最終的にSilencerファンを取り付けることになったが、純正状態の電源ソケットを利用するとパワーマネージメントのサスペンド時にもファンが停止することはない。このファンが静かとは言えサスペンド時にも回りつづけるのは気持ちのよいものではない。そこで、サスペンド時にファンが停止するように電源ソケットの取り替えを行い、電源の供給はケースファン用の電源から供給されるように改造した。たいていのマザーボードではケースファン用の電源はサスペンド時にファンを停止するようになっているからだ。元のソケットはカットし、ケース用の電源供給ソケットに合う形状のソケットを半田付けし、半田付け部分はショートしないように熱収縮チューブで覆っておく。