PC静音化計画 '97


最初に購入したPC互換機は、まだデックピーシーと呼ばれていた頃のDECpc XL466であった。当時ここの社員であったことと、ミドルタワーケースのデザインがとっても格好良かったので購入したのだ。購入当初はなんとなくプロっぽい(プロだったのだが)マシンの風貌と、まずまずのパフォーマンスに満足し、他のことはあまり気にしていなかったのだが、冷静になってみるとこのマシンは家で使うには「うるさい」ということに気づいた。このマシンの電源が入っていると、テレビの音量は上げなければならないし、5メートル離れてもファンの音が聞こえるのである。エアコンや冷蔵庫などあらゆる家電製品と比べても、その数倍はうるさいのである。一度気になると、またこれがどんどんうるさく感じる。

ここで人間の普通の行動として騒音源を探るべくケースを開けることとなる。騒音源は3個所であった。このPCのターゲットは安価な個人ワークステーション的なところがあったので、サーバーケースなみにフロントに巨大なファンがあった。まずここが1個所。そして電源のファンと、当時とても高速大容量(たったの540MBだが)であったハードディスクであった。どうやって静かにしようかと考えた場合、ハードディスクと、電源ファンを交換するにはお金がかかりすぎる。じゃあ、フロントのファンを取り除いてしまおうと考えたのである。増設カードも少なかったし、フロントのファンを取り除いて冷却が足りなくなるのはCPUだけのようだったので、CPUには大き目のヒートシンクをつければ良いと考えた。そして実行した。フロントファンの電源ケーブルを切断したのである。結果、ブートしない。おかしい。何度電源を入れてもだめだ。ハードディスクも回転しないし、BIOS画面も出ない。一度切断したファンを再度つないでみるとブートする。ちゃんとブートするぞ。ファンには温度センサーらしきものがついているし、ファンがちゃんと回らないとブートしない 設計になっているようだった。ファンがなきゃ回らないのであれば、小型静音ファンにすれば良い。そして秋葉に小型のファンを買いに行くことにした。かくして静音計画は始まったのである。

上記の騒音源の他に最近ではCPUの高速化により、CPUにCPUファンが必須になりつつあり、CPUファンも考慮に入れなくてはならなくなった。とにかく、個々のパーツ別に静音について考えていくが、いったいそれぞれがどの程度の音量なのかは私には測定の術も機材もない。したがって、感覚的な表現と特定のパーツとの相対的な音量関係(このーパーツよりは静かとか)で述べていく。

電源ファン

CPUファン(Pentium用)

ハードディスク

その他のデバイス

自作静音ファン 97/08/16追加


電源ファン

どのパーツもそうであるが、そのパーツがどの程度の騒音を発するかは電源を入れるまでわからないのが厄介である。雑誌の評価記事を見ても良く分からないし、運良く店頭にデモ機があったとしても店では周りがうるさいので家で使ったときにどの程度になるかは想像がつかない。通常自作機を組み上げようとする場合、ケースを購入したらそのケースに組み込まれている電源をそのまま使うことになるであろう。ケースと電源が別売の場合もあるが、組み込まれている場合がほとんどだ。これは音を気にする場合は厄介だ。ケースは洗練されたデザインと機能性で選ぶものだが、電源を視点として選ぶと希望のケースとはかけ離れてしまうだろう。また、悪いことに大抵の場合見た目の値段を押さえるために電源には安物が使われている場合が多い。買ってからうるさいからと言って、その大きさからも簡単に変えることはできない。もっとも長く使うパーツの1つだ。

静けさを目指すならば割り切って、ケースを買ってきてファンがうるさかったら静かな電源を買えばよい。次にケースを変えるときも基本的に流用できるので無駄な買い物ではない。ただ、ATケースとATXケースでは電源が違うので気をつけなければならない。間違えなく圧倒的に静かな電源はPC POWER & COOLING社のSILENCERシリーズである。1万数千円から2万円程度で購入できるが、ちょっと高くてもこれだけの静けさを選られれば大満足である。PCが省電力モードになってハードディスクや、CPUファンが停止して電源ファンだけが回りつづけてもその音はまったく気にならない。

ケース直付けの電源で静かなものも購入したことがある。KN-920というATケースに付属するものであったが、温度センサー付きで低温時にはファンの回転が遅くなってくれる。ファンの回転が高いときでもさほどうるさくなかった。ATX化をしたかったのでこのケースはもう手元にないが、ATケースが必要な場合はデザインもなかなか良いしお勧めだ。逆に購入して並みの騒音レベルであったのは、ATX601B、TQ-700であった。私自身他のケースは試したことがないのでこれ以上は紹介できないのが残念。


CPUファン(Pentium用)

静かなPCを作る上ではできればファンなしのヒートシンクにしたいところであるが、最近のCPUの高速化に伴いファン付きが必須となってきている。経験的にヒートシンクのみで対応できたのはPPGAパッケージのPENTIUM 166MHzまで、200MHzでは運が良ければ(CPUのあたり・はずれのこと)ファンなしでも安定稼動したこともあった。ただし、両者ともフェザークーラーなどの表面積の大きい巨大なヒートシンクでなければならなかった。現在AMD K-6 200, K6-233などを使っているがファンなしでは数分の稼動ができるかどうかというところである。また、騒音の大きいフロントファンなどの使用も避けたいのでCPUファンの冷却性能は高いものを選ばなければならない。

そこで比較的有名なファン付きCPUクーラーを試した。他にもいろいろ試し静かなものもあったが、冷却性能的に低いので無視し、3種類のファンについてのみ述べる。まずすっかり定番になっている三洋製のSAN ACE。ファンは比較的安価なので、かなりの数(ついつい買ってしまう)を試したが、結局このファンの冷却性能が一番高い。音に関しては静かなほうではないがこれを基準に考える。
次に、DOS/Vマガジンの97 8/15号のPCパーツショップに紹介されているWinDyである。能書きでは非常に高い冷却性能を誇っているように書かれているが、ASUSのTX-97XEのLM78のCPU温度の測定ではSAN ACEほどでもない。音量のレベルはSAN ACEよりもやや大きい。CPUファンとヒートシンクの高さが低いので(写真のヒートシンク下部の黒い部分はスポンジである)スペース的につらい場合は選択しても良いだろう。

最後の一つはASUSのCPUファンである。冷却性能的にはWinDyと同等である。このファンのメリットはLM78搭載マザーボードでファンの回転数をモニターできる点にある。音量のレベルは3つの中でもっとも大きい。回転数のモニターできる点を重視するならこれを選んでも良いが、SAN ACEでも同様の製品が最近出回っているのでそちらのほうが良い選択であろう。

自作静音ファン 97/08/16追加

上記3種類のファンの中ではもっとも静かで冷却効率も高いSAN ACEをしばらく使っていた。しかし、ハードディスクをIBM DCAA 1台とDAQA 2台の構成から、静かなDCAA 2台の構成に変更した後ハードディスクが静かになったためにCPUファンの音が相対的に大きくなってしまった。そこで何とか静かにならないかと考え、余っていて使っていなかったファンなしのヒートシンクの中で最も冷却効率の大きい部類に属するものと、さらに余っていた冷却効率は低いがファンが静かであったファン付きヒートシンクのファン部を合体することにした。左の写真の黒い台座とグリーンの剣山状のヒートシンクが1つの製品である。グリーンの剣山の上にあるファンは他のファンクーラーからファンのみ取り外して、超強力両面テープで固定している。このファンクーラーの能書きによればULTRA-QUIET FAN 20.0dbと書かれている。風量は少ないが一応能書きどおり静かである。結果としては冷却効率は上記3種類と比べると最も低いものの、抜群の静音性能が得られた。ASUS TX97とAMD K6-233で、BIOSのモニターでは62度程度まで上昇するので若干不安なものの今のところWindows NTで安定して動作している。しばらく様子を見て冷却性能が足りないようであれば、秋葉原で風量の大きい静音ファンを購入しようと考えている。問題は見てのとうりその高さにあるが、私の使っているATXケースTQ-700では他の部品と干渉することはない。

*上記すべてのファンの画像はRICOH DC-2Eで、室内、フラッシュなしで撮影し、ART Streamerで補正及びサイズ縮小しています。


ハードディスク

騒音を振りまきながらも、長い間静音設計が進まなかった部品である。低速なパーツに属するためにその性能競争に静音が犠牲になっていたのだろう。しかし、ここ1、2年くらいで全体的に静かなハードディスクが増えてきた。私自身はIBM のDPESがかなり静かだったので、その後は好んでIBM製のハードディスクを購入するようにしている。

しかし、DAQAはさほど静かではなかった。2台所有していたがその2台とも似た傾向にあったので固体差の問題ではないであろう。定常回転時に高温を含み、その音がシーク時にうねること、シーク音自体もやや高音で音量もやや大きめであった。ややと言う表現が多いが、他の同世代のハードディスクと比べて別に格段うるさいわけではないと言う含みである。

最近使っているのはIBMのDCAAである。DCAA1台をブートディスクとし、上記DAQA2台をストライピングしていたのだがDAQAの音量が気になったので新規に購入することにした。;DHEAがトレンドであるし、静音であるとの情報を得ていたので購入するつもりでいたが、6.4GBのものしか秋葉原で見つけられず容量が大きすぎるので、結局DCAAをもう一台購入した。同じハードディスクを購入しておくのは後々時代落ちになってもストライピングが組みやすいので性能を維持できるので悪くない。DAQA1台よりもDCAA2台のほうが静かである。定常回転音も小さくシーク音も低音低レベルで気にならない。


その他のデバイス

開発マシンのバックアップ用にJAZ Driveを使用しているが、これは非常にうるさい。最新最速のサーバー用SCSIドライブのようにうるさいのだ。しかし省電力モードがあるのでアクセスがないと数分後には電源が入ってないのではと思うレベルまで静かになる。バックアップの間だけの辛抱だ。

最近の高速なCD-ROMドライブも中にはかなりうるさいものもあるが、上記JAZ DRIVEほどではないし、JAZ DRIVE同様数分アクセスしないと静かになるのでさほど問題ではないであろう。


ホーム