人類がこれまで進化の過程で開拓発展させてきたコミュニケーション手段は、 直接対話から手紙、電話、高速交通機関、FAX、携帯電話などなど、 どれもこれも各時代を象徴するもので、産業と文化をしっかりと支てきました。
そこにもうひとつ新たな加わったのがコンピュータネットワークです。
これは決して他のメディアや通信手段を駆逐するものでもなく、 またそれだけですべてができるわけでもありません。
しかし、かつて電話が登場し、そしてさらに FAX が普及しても手紙は無くならないように、 人間は場合に応じてその手段を選ぶことができるようになりました。
コンピュータネットワークも、あくまでその選択肢がひとつ増えただけなんだということです。 過激な報道や宣伝に惑わされず、便利なものは便利だと、 用途に合わせてうまく活用して行くのが賢いやり方でしょう。
さてインターネットとはいったい何か?
複数の LAN を接続して世界規模のネットワークにしたもの?
マルチメディアがなんたらかんたら〜
そんなわけわかんない説明は要りません。
ここでの定義はシンプルかつ明瞭
「コンピュータネットワークは非常に便利なコミュニケーション手段のひとつである。インターネットはその代表だ!」
この1行で万事 OK! 電話みたいなものが新たに増えたんだと思って、X680x0 でも気軽に挑戦してみましょう。
(注: この文章は本当は X680x0 ユーザーにインターネットを説明&解説&おすすめするためのものなので、それをインターネット上に置くのはなんか変かも)
また、ネットワークの重要性という点においてユーザーの認識が弱く、 自分も誰もかれもがつなぐという発想がなかなか浸透しませんでした。
もちろん、高価ながら X68K にも LAN ボードはあったわけですし、 パソコン通信をやっている人は多数いましたし、 フリーソフトウエアもネットワーク上で多数作成され公開されました。 しかし、情報やフリーソフトウエア入手は雑誌 Only とか、 通信をしている友達から FD でコピーしてもらってそれで満足するといったユーザーが 膨大なのも事実です。
これじゃいかん
世の中にコンピュータネットワークの波が広がり、定着するまでほとんど時間がかかりませんでした。 一瞬の出来事です。 パソコン通信以外でつなぐという発想がほとんど無かった(あってもやる人がいなかった) X68K は、あっと言う間に取り残されてしまいました。
(1) 一つは、コンピュータ同士を複数繋いで、必要なファイルのやり取りをしたいというもの。
個人でパソコンを複数台持っている人は誰でも、一生懸命 FD でメディア交換しながら 「ああ、パソコンを繋いでファイルを共有できたらなあ」とか思ったことでしょう。
(2) もう一つはコンピュータ上のファイルやり取りはあくまで手段であって、人間同士のコミュニケーションが目的のもの。
おそらく当初の目的は (1) をと同じで、そのケーブルを延ばしただけだったのでしょうが、 不特定多数で情報の閲覧と共有、そして顔も知らない見知らぬ人と自由に連絡が取れるという、思わぬ利点が生まれました。
前者はいわゆる LAN であり、EtherNet がよく用いられます。 後者の発展の一つがパソコン通信による BBS です。 この場合個人ユーザーはモデムと電話回線を通じてアクセスを行います。
インターネットはこの二つの性質を両方とも持っています。 それ故、LAN で使用するプロトコルも、 他の組織にメールを出すためのプロトコルも同一で済み、 また電話回線を通じて個人がさまざまな Web ページを読みに行くのも全く同じ 使い方、同じソフト、同じプロトコルでいいのです。
よく考えれば、会社で使う電話も個人がプライベートな連絡に使う電話も、 使い方や接続に区別はありませんよね。
(1) RS-232C を使う方法
ほとんどのパソコンが標準でインターフェースを持っているので、基本的にソフト(SLIPやPPP)だけで実現でき、またモデムを介して電話回線で繋ぐこともできます。 しかし転送速度に難があり(速くても100Kbps程度、通常38Kbpsくらい、電話線を通せばさらに遅くなる)、 また原則として1つのラインでは 1対1 の接続しかできません。 複数のパソコンを繋ぐには、RS-232C インターフェースがその数だけ必要になります。
(2) ネットワークカードを使って EtherNet で接続する
RS-232C に比べてはるかに高速であり、10〜100Mbps の転送能力を持ちます。 またケーブルもそのまま何十m単位でひきずることができ、 トランシーバやハブを介して複数のコンピュータを接続できます。
使い分けとしては、LAN 内での接続には (2)を、 LAN から外部への接続にはアナログ線なら (1)、 または他のプロトコルを使うことが多いようです。 (1) の場合はさらに PPP を使えばダイヤルアップ接続が可能なので、 任意に接続と切りはなしができます。 家庭のパソコンから電話回線を通して接続する場合にぴったりです。
もちろん、パソコン同士直結したり LAN への接続を (1) で行うことも可能です。 遅いですが特殊なボードが不要なので、X680x0 のように Ether ボードが高級品だった マシンには結構重要かも。
もちろんこれを、X680x0 一台しか無いのに個人でただ所有していても意味がありません。 大学や企業など、LAN を張っている何らかの組織に X680x0 も組み込むときに 必要なものです。
それからものものすごいしばらくしてから、SCSI を使った EtherNet アダプタ ESP/X がサードパーティ 計測技研 から発売されました。 DOS 機用ボードが 1万しない時代になってからです。 非常に安くなりましたがそれでも 10万近くしました。
最近になってようやく、 ユーザーの手によってボードを自作してしまう(AT機用のボードを使用する) Neptune-X(作:Shi-MADさん)という価格的に手頃なものが、 また念願のボード不要な X680x0(Human68k) 用の IIJ-PPP ドライバ(作: K.Shirakata さん) も登場し、 ようやく、本当にやっと、X680x0 もネットワークが身近になった気がします。
◎ソフト編
X680x0 ではソフト面でもかなり立ち遅れがありました。
(Human 用 PPP ドライバも含めてですが)
Human68k では SHARP 純正ボード付属ドライバとアプリケーションがありましたが、 ごく基本的なコマンドだけでかつ対応プロトコル仕様が古く、 また開発のための資料も公開されていませんでした。
充実していた可能性があるのは OS-9 です。しかし OS-9/X68000 に関する資料や情報は乏しく、詳細は不明です。
意外に知られていませんが、Human68k 用で TCP/IP を話すソフトは実はかなり古くから実在していました。 もともと無線によるパケット通信用のソフトで、SLIP 接続、 メールやニュース転送が可能だったようです。 ただしドライバの形はしておらず、全部が一つにパックされた単一のアプリケーションでした。 もともと 98 からの移植だったようです。
幻の PPP メーリングリスト。 数年前、PPP 接続が騒ぎだされるようになったころ、我が X680x0 でもドライバ作成の話が持ち上がり、それに関する ML を立ち上げた方がいました。 fj 上でメンバーを募集し、ML が順調に動き出したかのように見えましたが‥。 私の知る限りでは、発言が5つ流れたところで以後永遠に次の発言がありませんでした。 PPP ドライバは欲しいけれどメンバーに、自分からやろうとした人が誰もいなかったのが敗因?
え?わ、私?私はドライバさえ登場すれば、 いつでもネットワーク関係のアプリケーションは書くし、 すぐにでも Ko-Window 上にも乗せるよって(仲間内でですが)言ってましたから。 それが嘘じゃ無かったのはすでにご存じのとおり。計測技研製のアダプタ ESP/X が登場し、Human68k でもようやくドライバとして TCP/IP が使えるようになりました。 ドライバを無償配布し資料を公開したことで、その後 Neptune-X や IIJ-PPP など幅広く使われるようになりました。
現時点では間違いなく NetBSD が一番ネットワークアプリや対応ソフトが充実しているはずです。 すべての X68000 で動くわけではありませんが、動く機種でかつ UNIX に興味があれば、悩まずこれがベストでしょう。
よって、インターネットにアクセスするということは 「インターネットにつながっているどこかに自分も繋ぐ」ことなのです。
今のところエンドユーザーから見たインターネットへの接続方法としては、
(1) 大学や会社でのインターネットに繋がってる LAN に接続する
(2) 個人がプロバイダと契約してインターネットに接続する
の二つが考えられます。
(1) の場合は、Eterhボードを使うか、遅くてもいいなら標準のインターフェースを使って PPP (SLIP/PLIP) などで接続を行います。 (2) の場合は ISDN という手もありますが、 通常はモデムを使った PPP のダイヤルアップ接続でしょう。
1.の場合、SHARP純正ボードは論外として、計測技研の ESP/X もすでに入手は困難なようです。 よって、選択はほとんど DOS/V 系雑誌でも紹介されたことがあるというあの Neptune-X しかありません。
これは概要をかいつまんで説明すると、AT機用の超安価な(2〜4千円程度) NE2000 互換 Ether ボードをそのまんま(ISA バス用インターフェースを作成して)使ってしまおうという しろもの。
もちろん、ある程度自分で作らなければなりませんが、5000円くらいしかかからないというそのコストは、 これまでの X680x0 用 Etherボードからすればまさに桁違い。
めぐまれた LAN 環境にいるかた、または Windows95 マシンなど自宅に複数マシンがあるケースでマシン同士をある程度高速に繋ぎたい場合に魅力的。
2.はこれまで NetBSD 上でしか PPP はできませんでした。が、 Human68k 用 IIJ-PPP の移植によって、すべての X680x0 で 特別なハードなしに PPP 接続が可能になりました。 また TCP/IP ドライバ自体は ESC/P のものを使うため、 アプリケーションも Neptune-X と共通なのも魅力。
おそらく、X680x0 で LAN 接続できるめぐまれた環境にいるユーザーはそれほど多くないわけですから、 IIJ-PPP はおすすめ。
★X680x0 が活発な BBS は遠距離にあるので電話代が心配
★大手 BBS のアクセスポイントは多いけど、遅いうえに料金が高い!
★大手 BBS のアクセスポイントは多いけど、遅いうえに料金が高い!
これらの問題を一気に解消してくれるのですから。
幸い近年のインターネットブームによって、プロバイダの数は全国に激増し、 過渡競争によって価格も安価。 しかもすべてのプロバイダが 28800bps 以上の高速モデム対応。 固定料金のところもあるのでテレホーダイを加えれば地方のユーザーも安心。
あれ? 3. のその他って何?
‥インターネット接続用にリースアウト UNIX-WS や安い PC-UNIX マシンを X680x0 の周辺機器として使う方法。 RS-232C などで X68K を端末として使うわけですが、Ko-Window からだと KX_Term20 があるので結構これ便利に使えてしまいます。 (私はずーっとモデム経由で Sun にこれやってました) ただし下手に PC-UNIX マシンを手に入れてしまうと、 興味が大きくそっちに行ってしまう可能性が極めて大。まあ、それもひとつの道ですね。