WindowsCE の形

2001/05/22 (最終更新:2005/08/28 15:27)

◎ WindowsCE 機種の一つの形

最初に触った WindowsCE 搭載マシンはやっぱりなんといっても Dreamcast &セガラリーでしょう。 その圧倒的スピード感と操作感は・・(以下略)

それはおいといて

たまたま NEC の MobileGearII MC/R700 を使う機会がありました。 1年半ほど前の話です。 はじめて触った WindowsCE 搭載のコンピュータです。 率直な感想はといえば・・失礼ながら ちょっと中途半端な印象でした・・。

MobileGearII MC/R700 は、 STN 液晶ながら 65536色表示で 800x600dot の広い画面を持ち、 キーボードを搭載したノートタイプの WindowsCE (H/PC Pro 3.0搭載) マシンです。 WindowsCE のバージョンは 2.11 となります。

見た目も操作もほとんどノートPC なのですが、 どうもノートPC にも PDA にも、どちらにもなり切れていない 微妙なもどかしさを感じます。 というのも、せっかくの広い画面でありながらそれが逆にあらゆる面で あだになってしまうからです。

大画面なのにそれを生かせず、常に全画面を乗っ取ってしまう WindowsCE アプリケーション群といい、 不必要に全画面化したアプリケーションは、 ウィンドウが(画面が)広いが故に極端に遅いテキストスクロールを招きます。 さらにポインティングデバイスも液晶画面へのペンタッチなので、 ウィンドウの上にあるクローズボタンを押すのが遠いこと遠いこと。 キーボードからペンに持ち替えて、 ずっと上までで手を伸ばさないと届きません。 画面が広いが故に遠いのです。

それでも使っていくうちに、通常のノートPC では味わえない良さを徐々に 感じるようになってきました。

まずは非常に使いやすいキーボード。 絶妙なぎりぎりの小ささ(サイズ)と配列で、 タッチタイプに全くストレスを感じません。

いつでも素早く電源を ON/OFF できる安心感は、 長いことノートPCを使っていたためかすっかり忘れていた「使いやすさ」 を思い出させてくれました。 室内でもケーブルレスでさっと持ち歩いて、 ちょっとした雑談でもその場でメモを素早く打てるし、 このような長文も思いついたら即、 外出中でも電車の中でも入力編集することができます。

長時間持つバッテリーも、ノートPC に比べてかなり気を楽にしてくれます。 ハードディスクを内蔵していない安心感か、 鞄に入れておいても実に身軽に動き回ることができるのです。

そして快適なキー入力を助けてくれるのが、 高機能なテキストエディタや、キーカスタマイズ可能な機能の数々。 幸いなことに NEC の MobileGearII は最初から、[A] の左にある [CAPS LOCK] を CTRL キーとして使うことができました。

もちろんテキストエディタとして使うソフトも、内蔵のものだけでなく オンラインソフトや市販のものやら自由に選んで使えます。 変換エンジンも IME だけでなく、必要なら PocketATOK を入手して使うことができます。 日本語変換のためのキー配列もカスタマイズでき、 ホームポジションから全く手を動かさずに日本語入力ができるようになりました。 最近では親指シフト入力を可能にするソフトまであるようです。 (筆者は昔 OASYS Lite ユーザーだったので親指シフト入力ができました)

このような設定の自由度は、ポータブルワープロの専用機種ではまねできませんし、 逆に Windows のノートPC ではここまで気楽に取り扱うことができません。

コンピュータって、もっとこんなに気軽で身近に普通の道具として使える ものだったのだと、あらためて痛感した次第です。

◎ MobileGearII MC/R530

R700 をうっかり手にしてから数週間、すっかり気に入ってしまい、 しっかり自分でも MobileGear を購入する決意をしました。 借りていた R700 は返却し、手に入れたのは MobileGearIi MC/R530 です。 たまたまモデルチェンジの時期であり、 R700/R520 の次の世代、ちょうど R530 が発売されました。

動くソフトも一般のパソコンに比べたらそれはそれは少ないし、 容量も限られているし動作も描画も非常に遅い。 それでいいんです。 パソコンと同じものを要求するのではなく、 使いどころをきちんとわきまえれば非常に使えるものになります。

待ちに待った発売日(ちょっと延期したけど)に、 MobileGearII MC/R530 を無事入手。 「ものかき専用」として常に鞄に入れて持ち歩いています。 R700 に比べて画面が狭い (640x240dot) のはちょっとだけ厳しいですが、 その分スクロールは高速です。 USB 端子が無くなったので、マウスが使えないのはちょっと残念。 R700 には USB 端子がついており、マウスが使えました。

◎ キー入力以外のこと

PDA としては普段 SHARP Zaurus (このとき使用していたのは MI-C1) を携帯しており、スケジュールから個人情報から Zaurus に入れています。 通信に関してはメールはすっかり携帯ですませていて、ちょっとした ウエブチェックも Zaurus + PHS だけでできてしまいます。

でも文字入力だけは 完全にタッチタイプ可能なキーボードを備えた MobileGearII にかないません。 1年後、Zaurus は小型キーボード内蔵の MI-E1 へと乗り換えましたが、 それでも MobileGearII は片時も離さず、いつも持ち歩いてテキスト入力に 活用しています。 R530 の上ではほぼ 100% テキストエディタが起動しています。

zxLinux での開発時には、CF カードの読み書きにも便利に活躍してくれました。 こちらの zxLinux の記事 でも H/PC について密かに触れられています。

◎ 贅沢なハードウエア

WindowsCE 系のマシンは、実に贅沢なハードウエア上で動いています。 パソコンに比べたらそれはさすがに劣るのですが、 一般的な PDA に比べたら十分パワフルです。

MobileGearII R530 の CPU は 168MHz の MIPS で、 RAM も標準で 16M、最大 32M byte に増設できます。 筆者が Windows95 時代に最初に購入したノートパソコンは、 Pentium 133MHz で RAM は 16Mbyte。増設して最大 32Mbyte でした。 (そういえば内蔵 HDD は 1G でした)

これだけのパワーを搭載し、またファイルシステムも完全に RAM 上で動作している ものの、なぜか動作はそれほど速いとは感じません。

もうちょっと非力な CPU を使ってバッテリー寿命を優先し、 さらに RAM より書き込みが遅いフラッシュメモリにファイルシステムを持ち、 バスも低速で 6万色カラーで巨大な VRAM を持った Zaurus の方が ウィンドウ切り替えはより軽快なことが多いのです。 使い方次第で Zaurus もそれなりに遅くなりますが、WindowsCE のように 画面が引っかかるように処理落ちすることは感じません。 この差はどこにあるのでしょうか。

まず ノートPCより体感速度が遅いのは、 おそらくウィンドウアクセラレータの違いでしょう。 大画面 R700 のスクロールが遅いことから、WindowsCE ではほとんどの描画を CPU で行っていたと推測できます。(Zaurus も完全に CPU 描画です) また WindowsCE の売りである API の互換性も、 専用に設計できない冗長性を生んでいるのかもしれません。 そしてまだまだ歴史の浅い CE カーネルそのもののチューニングが 進んでいないのかもしれません。

一番の違いは、WindowsCE がより多くのプロセス(スレッド)や バックグラウンド宇処理を含んだ多層レイヤー汎用性を持った OS として 構成されていること、ここに原因がありそうです。

ZaurusOS も完全なマルチプロセス(マルチスレッド)で 複数のアプリケーションが起動状態になるものの、 裏に回ったアプリケーションは、より多くのリソースをフォアグラウンドタスクに 明け渡すために、完全に眠った状態で待機します。 ハードウエアリソースは基本的に単一のロックのみ受け付けず、 ブラウザや JPEG画像、通信を扱うアプリケーション以外では、 ほとんどフォアグラウンド UI が CPU を占拠します。 裏で CPU が別の仕事をしているケースは、実はそれほど多くありません。

WindowsCE の場合、フォアグラウンドの GUI 描画の最中でも、 おそらくメモリ系のガーベージコレクションと思われるバックグラウンド処理が CPU を高負荷にします。 これが画面切り替えや描画の引っかかりとして、 ユーザーに遅い印象を強く与えてしまうのではないでしょうか。

WindowsCE も v2.11 を経て、現在は H/PC 2000 や PocketPC で使われている WindowsCE v3.00 が登場しています。 もうすぐ v4.00 も登場するというハイペースで開発が進み、 さらにさらに改良されていくことでしょう。 そして OS だけでなくハードの進化も速いのがこの世界の常。 CPU にとらわれない WindowsCE の場合、ハードの進化も ハードウエアアーキテクチャレベルで互換性を強いられる他の OS を搭載した PDA より有利になります。

WindowsCE PDA のハードウエアが贅沢なのはこの辺にも理由があります。 そしてその体感速度も機能も使いやすさも、 OS や ハードの進化を促しやすい周りの環境が どんどん押し上げているといえるでしょう。

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Hiroyuki Ogasawara <ho>