エネカルクで節電:LED電球に換えてはいけない
                         … 2011年6月
 
 
2011年初夏、原発の事故や運転停止を受けて、テレビ各局で「家じゅうの電灯をLED電球に換えても、数年後に元が取れます」などとLED電球に換えることを勧める特集をやっていた.
しかしどうも妙だなと思ったのでエネカルクで試算してみたところ、かなりのごまかしがあるようなので、どんな場合に換えた方が良いのか検討してみた.
拙作のエネカルクの利用例にもなっているので、Windows環境の人はダウンロードして試してみよう(フリーソフトなので無料だよ).

【エネカルクの利用】
 
(上図では電気の基本単価はVersion1.20の初期状態=23.3円で計算してある.)
1. LED電球を選択
2. 消費電力を白熱電球とLED電球 の消費電力の差の値に変更
    例:40Wの白熱 → 7WのLEDなら 33 に変更する
3. 使用時間を設定
4. 単位期間あたりの電気代の1年の欄を見る
5. LED電球の価格が 4. の何倍かで、何年で元が取れるかの結果が算出できる

【利用時間による場合分け】
 
以下の2点に着目して、1日の利用時間に応じて3つの場合に分けて電力削減効果を見てみた.
1. 電気代の削減:電気代はどのくらい安くなるのか.何年で元が取れるのか.(これは結局CO2の削減にもなる.)
2. 電力危機対応:電力需要のピーク時(昼間)に使用電力を減らす効果があるのか.
(利用時間などは各家庭で大幅に違うと思うので、あくまでも私の主観的な例だ.)
 
 
A. 1日数分しか使わない廊下・階段やトイレ・洗面所などの電球は、10年使ってもLED電球の価格の元が取れる程の節電は出来ないので、ただちに交換するのは無意味だ.白熱電球が切れた時に交換する際も再度白熱電球の方が安上がりなくらい.
電力危機対応についても、この程度の節電をしても雀の涙にしかならない.電球の数としてはこういう使い方が一番多いだろうから、むしろ必要もないのに買い換えることにより、製造・輸送・廃棄で環境にかける負担の方が大きいのではないか.
  例:白熱20W→LED5W、1日10分 … 1年で21円安くなる
 
B. 1日1〜2時間程度使う風呂やキッチンなどは、微妙な部分だ.各家庭の状況に応じて…という所だろう.防水型や密閉器具対応のLED電球は種類も少ないし高価なので、あまり元が取れるようにはならないだろう.使用時間も夜が多く電力需要のピークから外れているので、電力危機対応にもあまり貢献しないと思う.今使っている白熱電球を捨ててまで交換する価値は無い.
使用中の白熱電球が切れたなら、今年はいったん電球型蛍光灯に換えて数年後にもっと安価になってからLED電球に換えるのが良いかも.
  例:白熱40W→LED7W、1日1時間 … 281円/年. 2,000円のLEDなら7年で元が取れる
 
C. 門灯や玄関のように毎日数時間点灯するものは、節電効果は大きいので価格的にも数年で元が取れる.昼間点ける場所なら電力危機対応にもそれなりに貢献する.今使っている白熱電球を捨ててでも交換する価値はあると思う.
でもまだ屋外で使えるLED電球は少ないし、広く照らす型は高価なのと、電球型蛍光灯とLED電球の消費電力には大きな差はないことから、屋外なら電球型蛍光灯の方がいいかも.
  例:白熱40W→LED7W、1日5時間 … 1403円/年
 
【結論】
結局、「電力需要のピーク時に長時間点灯する」という場面には電球はあまり使われていないことや、LED電球でも密閉器具対応・防水型などは品種が少なく高価なので、家庭でLED電球に交換した方が良いという場面は以外と少ない.
つまり2011年夏の電力危機対応としてLED電球に交換することは、ほとんどの場合は無意味だ.使用状況に応じて電球型蛍光灯に交換するのがベストだ.
LED電球はまだ不安定な製品や表示通りでない製品も出回っているようで、安心して使えるとは限らない.今後数年の内に1,000円以下が当たり前になるだろうから、それを待って購入するのが賢いのではないかと思う.

【注意】
電球型蛍光灯にもLED電球にも、密閉器具対応や防水型、調光器対応型などしか使えない場所や、発熱が多くて白熱電球以外は使えない場所など、注意すべき点は多いので必ず確認しよう.LEDは発熱しなくても、「LED電球」は発熱するものだよ.
 
【電球の寿命】
LED電球は10年以上切れないから得と言われるが、白熱電球でも結構しぶとく、10年以上切れない場合も少なくない.
私の知るある家では、1軒に十数個の新品の白熱電球が付いているが、新築から10年間1個も交換していないそうだ.また別の家では、新築から5年の内にほぼすべての白熱電球を交換したという.事例が少ないので一概には言えないが、使用条件、放熱や電源環境、電球メーカーの差などによって違うのだろう.
逆にあまり頻繁に切れる場所は、放熱の状況を心配した方が良い.そういう環境ではLED電球も使えないはずだ.
 
【マスコミの嘘】
私の見たテレビ番組では、どの局も
 「家じゅうの蛍光灯や白熱電球を数十万円かけてLED照明に換えて使用電力を測定する」
という現実離れした実験をやり、これで数年後に元が取れますというような言い方をしていた.特に天井の蛍光灯まで交換しては、返って余分の電力が必要な場合もあり、とても乱暴な実験だ.おそらく、1日数分しか使わない部分も何時間も使うことにして計算し、つじつまを合わせているのだろう.
こういったマスコミの情報操作に踊らされてか、LED電球が飛ぶように売れているという(2011年は昨年の4倍以上の売れ行きだそうだ).
何でもセンセーショナルに扱いたがるテレビの傾向が社会に悪影響を与えている典型的な例だな.
 
Web上でもこんなページもある … LED電球.COM
ここには毎日6時間使うと年間1,388円の特になり10個なら10倍お特と書いてある.白熱電球10個を毎日6時間も使うなんて、よほど特殊な家だろう.こういう無茶苦茶な論理でLED電球を魔法の道具のように持ち上げ、「出来るだけ多くLED電球に切り換えることが大変有効」などとうそぶいているのは、詐欺的といっても過言ではない.
こういった論調のサイトが他にも数多く存在するのはとても問題だと思う.
 
【参考リンク】
東芝ライテックのサイトでエネカルクと同様の省エネ計算が出来るが、1日1時間未満の計算はできない.こうすることで、1日数分しか使わない場所の算出をややこしくして、LED電球の有効性だけを強調している.これも情報操作のひとつと言えよう.
 
私とは違った観点から電球型蛍光灯を勧めているサイト.特に「各電球の比較表」はよくできていて、メーカーや省エネ関係のサイトよりわかりやすい.