『秋です。イカホヤサンマに戻り鰹』の巻


 天高く馬肥ゆる秋。この言葉の意味を知ってますか? 知ってる人は飛ばして下さい。知らない人は私が自慢気に説明するのを読んで、誰かに知ったかぶりしましょう。

 天高く馬肥ゆる秋と言いますと、食べ物が美味しくなって、馬も太る良い季節になったことを喜ぶんでいるのだと思いますよね? 思わない? そんなこと言わずに思って下さい。そうしないと話が進まないんです。

 この言葉は、昔の中国で生まれました。昔の中国は、北方民族の侵入に頭を痛め、それを防ぐために万里の長城などを築いたわけです。秋になると豊かに実った穀物や草を食べて良く太った馬に乗って、匈奴と呼ばれる北方騎馬民族が攻込んで来たのですね。『さぁ、また匈奴が攻込んで来るぞ、用心しろよ!』というのが、天高く・・の本来の意味だったのです。

 だからどうした?って聞かれると困っちゃうんですが、とにかく世間は順調に秋に向かっています。まだまだ残暑はきびしいですが、先週の週末に福島県の小名浜漁港に行ったら、最近できたばかりのお魚センターみたいなところでは、ちゃんと秋の魚が売られていました。

 サンマなどは、数百メートル離れたところで水揚げしているものをその場で箱詰めしていますので、新鮮そのものです。こういうのをサッと刺し身にして食べるとうまいんですよ。ただ、値段の方は旬というにはまだまだこなれていないですね。

 私が小学生の頃は、秋になると小名浜港に上がったサンマを山盛りに積んだトラックが、国道をすごい勢いで行き来していましたので、カーブのところの道端などには、サンマがたくさん落ちていました。近所の人たちはバケツを持ってそれを拾い、おかずにしていたのです。実話です。

 前回詳しく書いたイカもそろそろ出回っていました。黒々としたやつが箱に入っているのをみると嬉しくなります。値段の方は、サンマと同様まだまだでしたので、今回は5杯だけ買ってかえって塩辛を仕込みました。

 塩辛を作るにはイカの皮を剥いた方が良いのですが、うまく剥けますか? うまく剥く方法を覚えておくと、長い人生の中でいつか役に立つかもしれませんので、知らない方は覚えておいて下さい。
 まず、イカの『ミミ』と呼ばれる三角の部分を持って、足の方に向かって引き千切ります。そうすると、胴体の部分の皮がミミに付いて来ますので、指を使って剥がして行きます。
 滑ってうまく行かない時には、布巾を使って皮を掴むようにすると上手に剥けます。使った布巾は汚れますので、私のように不精な人は捨てちゃいましょう。マメな方は洗って再利用して下さい。
 布巾を使ってもうまく皮が剥けないようなイカは、活きが悪くなっていますので、刺し身や塩辛はあきらめて焼きイカか煮物にでもした方が幸せになれます。

 サンマやイカの他に、丸々としたホヤも、一個100円で売っていました。殻を剥いてあるものは150円でしたので、私はそちらを買いました。
 ホヤは、塩辛にしても良いのですが、生で酢醤油を掛けて食べてもうまいものです。磯の香りがプンと鼻をくすぐり、なんとなく血がきれいになって、体が健康になって行くような気がします。香りの良い山菜を食べたときや、もぎたてのトマトにかぶりついた時なんかにもこんな気分になりますよね。

 鰹はもうかなり安くなっていました。今ごろの鰹は、黒潮に乗って北上したものが三陸沖でUターンして引返して来たものですので、戻り鰹と呼ばれます。タップリ餌を食べて良く脂が乗り、刺し身にすると口が火傷しそうな程です。
 デカイのが一本1000円でしたので、三枚におろしてもらって、アラ(中骨)も一緒にもらって帰りました。

 アラはアラ汁です。これは煮返すと生臭くなってまずいですから、すぐに作って熱いうちにフゥフゥと食べてしまいましょう。

 身の方は、タタキの様に周りをサッと焼いて(焼きすぎると焼魚になっちゃうので注意。ほんの数秒程度でOKです。)、氷水で締めたら水気を拭き取って、ラップでキリッとくるんで冷凍しちゃいます。これでかなり日持ちします。
 食べるときには室温で少し解凍し、まだ凍っているうちに切ります。家庭で刺し身を引くのは難しいですが、凍っているうちに切れば普通の庖丁でもうまく切れます。

 食べるときには、完全に溶けきってクタッとなる前に、威勢良く食べちゃいましょう。少々凍っていてもかまいません。
 ニンニクや玉ねぎのスライス等を盛大に乗っけて、醤油や酢をジャブジャブ掛けて食べると、酒にも御飯にも最高です。
 うまいうまいと食べてあげれば、鰹も草葉の陰できっとお喜びになることでしょう。


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