『サンマを食べて幸せになろう』の巻


 秋です。サンマが安くなって来ましたね。まだまだ底値にはなりませんが、私は塩焼、刺し身、煮物と、すでに一通りはサンマ料理を食べました。これからますます安くなりますから嬉しいですね。

 サンマは秋刀魚と書くように、秋になると安くてうまくなる魚です。他の季節は食べたい気持ちをぐっとこらえて、秋になったら待ち構えていたように食いだめしましょう。それがサンマの正しい食べ方です。

 一度、サンマのことで女房とケンカをしたことがあります。原因は、女房が季節はずれのサンマを買ってきた事です。季節のものは旬のうまい時に食えというのが私のポリシーなのですが、何を思ったのか女房が初夏の頃に生のサンマを買って来ちゃったのです。

 最近は保存技術も良くなってますから、季節はずれのサンマといってもそう馬鹿にしたものではなく、けっこう活きも良いし脂も乗っています。でもしかしBut、値段を聞いてぶっ飛びましたね、わたしゃ。一本400円したと聞いて、ムラムラと腹が立ってきました。400円出せば、鰻が一串買えるじゃないですか。

 サンマなんてものは、出盛りの頃になれば一本5円とかで売ってたりもする魚です。私が子どもの頃は近くの国道を、小名浜港に揚がったサンマを山盛りに積んだトラックが、カーブでサンマをボタボタと落としながら走っていたものです。私たちはバケツを持って行ってそれを拾って帰り、母親にほめられていました。
 嗚呼それを、そんなサンマをですよ、一本よんひゃくえんも出して買ってくるなんて、どういう神経をしてるんでしょうか? 私は、何で鰻にしなかったんだよ!と女房に詰め寄ったのですが、「たまにはいーじゃない。食べたかったんだから」とケロッとしてます。

 「別に400円のサンマを買ったからって、破産するわけじゃないでしょ?他のおかずだって、ちょっとしたものだったらその位するんだから」って、確かにその通りなのですが、世の中にはやって良いことと悪いことがあります。
 サンマを400円で買うのが何故いけないかということについては、あまり論理的な反論はできないのですが、とにかくすごく心が痛むいけないことなのです。なぜ女房にはそれが分からないのだろうか?世界には、お腹を空かしているかわいそうな人たちが大勢いるのに・・・。

 あっ、もう一つ思い出した。先日サンマの塩焼が食べたくなって、会社の帰りにスーパーで一本100円のサンマを買って帰って女房に焼いてもらったのですが、風呂から上がって、お酒の用意を整え、タイミング良く焼きあがったサンマをさぁ食べようと見ると、けしからんことに頭を落としてハラワタが抜いてあるではないですか。ほろ苦いハラワタをチョビチョビと舐めがならお酒を飲もうと、風呂に入りながら胸をときめかせていたのに、この憤懣をいったいどこにぶつければ良いのでしょうか?

 女房は例によって、「どうしたの」とケロッとしているので、サンマの頭とハラワタが無いことに対する不満と怒りをどのように表現したら良いのかわからず、次からはワタを抜かなくていいからねとか何とかモゴモゴ言って、むなしい気持ちのままサンマの身を突っついていました。今思うともっとビシッと言ってやれば良かったと思います。
 でも、サンマのハラワタのことで、相手にセコイと思われずに怒りを表現するというのは、なかなか難しそうです。

 一般家庭で、サンマを切らずに長いまま焼くのはちょっと難しいかも知れませんが、切るときには頭を落とさずに真ん中から二つにしましょう。三つに切ると頭に当たった人は食べるところが無くなってしまいます。

 サンマを味わいたいけど、焼くのは煙が出てたいへんという方は、簡単お手軽なサンマ御飯をお試し下さい。ご飯を炊く時に、水加減をしたお米の上にサンマを乗せて、醤油をグルリとひと回し入れておくだけです。できれば臭み消しにショウガを少し細く切って入れておきましょう。御飯が炊き上がったら、サンマの身をほぐして頭と骨を取り除き、サックリと御飯と混ぜ合わせれば、美味しいサンマ御飯の出来上りです。
 ま、鯛メシの様なものですが、何せ相手がサンマですから鯛ほど気を使う必要はありません。なぁなぁでテキトーにやっちゃいましょう。

 スーパーの安売りや魚市場などで一本5円や10円のサンマがたくさん買えた時には、ぶつ切りにして酒と醤油と砂糖で甘辛く煮ておけば、冷蔵庫でかなり日持ちして美味しく食べられます。この場合は、頭を落としてワタを抜いて下さい。煮るときに梅干し、ショウガを入れると良いのは他の青魚の場合と同じです。

 活きの良いサンマが手に入ったら、刺し身にしても良いですね。塩を振ってから酢で〆めて、サンマ寿司のネタにしても美味しいですよ。安くて簡単で豪勢です。いちおう寿司ですから。

 こんなえらいサンマですから、できれば一年中出回って欲しいと思ったりもしますが、やっぱり秋になるのを楽しみに待って食べるところが良いんでしょうね。冬には冬の、春には春のうまいものがあります。皆さんはくれぐれも一本400円のサンマなんかは買わないようにして下さいね。秋はサンマを食べて幸せになりましょう。


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