『自家製イクラがうまいよ!』の巻


 こんな駄文を書いているくらいですから、私の場合食べ物で季節を感じるということが良くあります。最近は季節感が無くなっていると良く言われる通り、買おうと思えばいつでも何でも手に入りますが、やはり値段の移り変わりなどを見ていると、その食べ物の旬というのがわかります。

 あっ、そうそう、食べ物の旬といえば、2〜3年前にこんなおかしな体験をしました。
 良くお酒を買いに行く小さな酒屋があって、ここでは店先で野菜なども売っています。ある夏の日、お酒を買うついでに、ちょうど出盛りのはずのトウモロコシを買おうと思ったら置いてないんですよ。
 不思議に思っておばちゃんに聞いてみると、季節感の強い野菜などの場合は、出始めの値段が高い頃は農家も競って出荷するのですが、出盛りになって値が下がってくると、もうからないので農家が出荷しなくなってしまい、市場に無くなっちゃうそうなのです。
 こんなおかしなことが野放しになっていると、そのうちに、野菜が一番高いのは旬の頃なんてことにもなりかねません。我々消費者が、旬のうまい時にバリバリ食べるようにすれば消費量も増えて値崩れしなくなり、農家の皆さんも頑張って美味しい野菜を作ってくれるようになるでしょうから、季節はずれの高いものなんか食わずに、旬の安くて美味しいものをドンドン食べるようにしましょうね。

 昨日会社の帰りにいつものスーパーに寄ったら、カナダ産のデカイ松茸が売ってました。5本位のパックで1980円。ま、安いことは安いですね、国産のばかばかしい値段に比べれば。でも、まだ買う気にはなりません。この半分位の値段だったら、網焼きにでもして酒の肴にしても良いなと思うんですが・・・。

 だいたい、松茸ってあんな値段に見合うほど美味しいものですかねぇ。貧乏人のひがみかもしれませんが(どうせきっとそうです)、焼き松茸をありがたがって食ってる位だったら、スルメにマヨネーズでも付けて食った方が良い様な気がします。
 松茸ご飯を崇拝する人には、私の母親が作った、イッポンシメジがゴッテリ入ったキノコ御飯を御馳走してあげたいです。父親がもう歳でキノコ狩りなどに行かなくなっちゃったので、私ももう何年も食ってませんが。

 この季節になると、スーパーの魚のコーナーには生スジコがお目見えするようになります。これを自分でほぐしてイクラにすると、最高に新鮮なのが食べられますよ。
 何をかくそう、私は魚の玉子、とりわけイクラが大好物なので、この季節になると晩酌の肴は毎晩の様にイクラです。

 生スジコを買うときには、できるだけ大粒の方がもちろん良いのですが、当然そういうのは値段が高くなります。財布と相談して粒の大きさや量を見計らいましょう。
 でも、どんなに上等のイクラを買っても、一人で一回には500円分も食べられませんから、それほど高いものではありません。
 500円分の生スジコがあれば、ドンブリの上一面にイクラが五重に分厚く乗っかっている豪華絢爛容姿端麗品行方正圧倒的ボリュームのイクラ丼が作れます。  生スジコを買ったら、まずそれをほぐして卵巣膜を取り除かなければなりません。これがなかなか厄介です。
 スジコをボウルなどに入れ、お湯をかけると、膜が白くなって縮みますので、根気良く丁寧に取り除きましょう。お湯の温度は、手を入れてアッチッチという程度です。沸騰したお湯だと、イクラの茹で玉子が出来てしまいますので熱すぎないようにしてください。

 全体が良くほぐれたら、ボウルに何度も水を入れてかき回し、膜などのカスが浮いている上澄みを捨てる作業を徹底的に繰返します。この時、まだタマゴに貼りついている膜がある場合は、ていねいに取り除いてあげます。

 こうしてザルに上げると、ちょっと白っぽくなった活きの良いイクラができるはずです。
 今度はこれを密閉容器などに移し、醤油、味醂、酒などで味を付けてやります。濃い塩水に短時間漬けるのが正統派イクラなのですが、私は醤油味の方が好きです。分量は醤油2に対して味醂と酒が各1位の割合でイクラ全体が浸る様に入れてください。
 醤油を入れると、イクラが突然目の醒めるようなルビー色になって輝くので感激しますよ。

 作ってすぐでも食べられますが、冷蔵庫などで数時間寝かせた方がやはり味が馴染みますね。漬け汁の方にもイクラの濃厚な味がしみ出していますので、イクラ丼にするなら汁ごとジャブジャブ掛けましょう。(掛けすぎると当然しょっぱいです)

 一度で良いからこういうイクラを、スプーンなどで口の中にザクザク放り込んで食べてみたいと思っているのですが、三国一の小心者である私はとてもそんな大胆なことは出来ません。箸でつまんで口に含んでは、舌と上顎の間で一粒ずつプチンと潰す感触を楽しみながらほんのちょっとずつ食べています。
 死ぬまでに一度位は、口いっぱいにイクラを頬張って、奥歯で一気に噛み潰すような食べ方をしてみたいなぁ。


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