『サンマは直火で焼きたいねぇ』の巻


 会社の若い女の子と飲みに行きました。(二人きりで行ったわけではありません。残念ですが・・)

 行ったところは彼女のリクエストで、いかにも女の子ウケしそうな居酒屋です。よくあるでしょ、ホラ、店員が清潔そうな白衣とエプロンを着けて、首に揃いのネッカチーフなんか巻いちゃったりしてるようなところです。
 スコッチエッグ(茹で玉子をコロッケでくるんだもの。通称バクダン)に『コロッケの心がわり』なんて名前を付けたり、木こりのサラダとか、漁師のリゾットとか、正しいオジサン道を歩む我々にとっては、基本的に『けっ!』という感じのところです。

 そこで例の『コロッケの心がわり』とか、インド風のピザ(ピザドゥの代わりにナンが使われている。これはけっこういける。)なんかを突っつきながら生ビールを流し込んでいたのですが、日本酒が飲みたくなったのでメニューでそれ風の肴を探すと、サンマの刺し身というのがありました。

 こーゆーのも、ちょっとイヤミですよね。刺身といえば定番のマグロ、ハマチ、それにイカ刺しやタコブツが並んでいて、サンマの刺身なんかはそこに控えめに名を連ねているというのが自然なのですが、イカのマリネとか牛肉のタタキなんていうのに混じってサンマの刺し身なんていうのが載っているというのは、同じサンマの刺し身でも何かちょっと別のもののような気がしてきます・・・・というか、小学生の頃ブスだと思っていた女の子と20年ぶりに会ったら、その頃の面影を残しつつ結構いい女になっていて、なんとなく自分の方が気恥ずかしくなるっていうんですかね?こういう感じ、わかるでしょ?

 ともあれ、刺し身が出来るんだから、当然塩焼きもできるだろうと思って、メニューには載ってなかったんですが、無理矢理店員にオーダーしました。

 そうしたら、板場(っていうのかな?)から板さん(っていうのかな?)が出てきて、『サンマのワタは抜きますか?抜かずに焼きますか?』と聞くので、もちろん抜かずに焼く様に頼みました。もし、黙ってワタを抜いたサンマを焼いて持ってきたりしたら、頭に来て星一徹状態(卓袱台ひっくり返すというアレです。まさか本当にやりゃしませんが・・)になるところでした。板さんエライ!

 で、かなり待たされて出てきたサンマを見ると、一目で直火じゃなくてフライパンで焼いたのが分かる出来上りで、皮が剥がれて少し身が崩れたりしています。慣れぬ店で屈折しつつ飲んでいた私と致しましては、ムッとするよりもかえって『ふん、若いネーチャンにちゃらちゃらしてる店の実力なんてこんなもんよ。へんっ。』という感じで、少し溜飲が下がったような気がしました。

 サンマを、脂ボタボタ煙ジュウジュウ状態で直火焼きしたのは、もう何とも言えずにうまいですよねぇ。でも、食べたことが無い人も多いでしょうね。家の中ではそういう焼きかたはなかなかできませんからね。
 一度、自炊している後輩のアパートでこれをやったら、サンマの脂がガスレンジで燃えて、後がすごい状態になったことがあります。サンマは非常に美味で後輩も喜んでいましたが、後の掃除はたいへんだったと思います。その友人は間もなくそのアパートを出ましたが、サンマを焼いたせいでは無かったことを祈ります。

 ところで、昨日私は近くの海岸に行って蟹釣りをして来たのですが、浜でたき火をしながら、蟹のエサ用にちょっと多目に買っていった1尾50円のサンマを、流木を削った串に刺してたき火で焼いてビールのツマミにしてました。
 串が燃えないようにちょっと遠火で焼くので、余計な脂は落ちて風味抜群に焼き上がります。焼き上がる前に釣った蟹を入れておくバケツに汲んである海水を掛けると、蟹のダシが効いた(ウソ)天然ミネラル塩の味が付いて、そりゃもう最高です。
 新聞紙の上などに置いて、コンビニで買っていったノリ弁に付いていた箸かなんかでつついてでワッと食べちゃうと、多少の砂なんか気になりません。

 前回は河原での芋煮会のことを書きましたが、河原と言えばヤマメや岩魚という観念にとらわれずに、安くなっているサンマを買って行って、たき火で焼いて食べるというのも良いと思いますよ。


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