伊豆国際CCの夜(Part2)
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「調達部隊出動!」


目の前にアワビちゃん がウニウニしてるのに, 醤油が無いので食べることが出来ない。 鈴木氏の持ち込んだバックの中に,もしかしたら他の調味料と一緒に「醤油」のパック が有るのではないかと,ガサゴソ探している内に,ついでに、コンロと箸も車に忘れて 来ていた事が判明したのである。これはもう車で下界に降りて調達してくるしか道は 無い!。急遽「調達部隊」が編成され,私と村松氏が日本が世界に誇る「醤油」を町ま で買いに行く事になった。

さっそく 私と村松氏がフロントの前を通り過ぎて下駄箱の靴を掴もうとした時である。 「何処にいくだ?!」あの一癖ありそうな管理人の呼び止める声がした。 まさか呼び止められるとは思っても見なかったので私は非常にビックリしてしまった。 フロントの横にはカウンターのすぐ下に【飲食物持ち込みお断り】の文字が書かれてい るプレートがぶら下がっていた。まさかアワビの刺身に必要な醤油、山葵、箸、ついで に焼いて食べたいものだから,コンロなどを調達しに行こうかなー・・・なんて, とてもじゃないが言える筈がない。とっさに「氷とガムを買ってこようかなーなんて」 と、とっさにしては、自分で言うのも何だが,なかなか上出来の応答かな、なんて 思っていると、「門限は十時だで、今から出て行かんでもええ・・氷はくれてやる、 ガムは我慢しな」と管理人が言った。



「門限?!」ななっ!,なんと伊豆国際カントリークラブのロッジには,ももっ, 門限があったのだ!。まったく信じられないおやじである。門限なんて,学生の「寮」 では無いのである,ここはゴルフ場のロッジの筈である。伊豆国際の国際とは, 「INTERNATIONAL」のハズでは無いのか?。うーん,奇襲攻撃を受けて行く手を阻まれ て困ってしまった調達部隊に,一癖どころの騒ぎじゃ無いぞと,また管理人のオヤジが 追い打ちをかける様に言った。

マージャンは十時迄だからね、十時になったらパイは返して貰うから」

「それと、畳の上でやっちゃダメだよ,ええね?聞いてんの?」

まったく,高校生の修学旅行の引率の先生みたいな事を言うおやじである。 一癖ありそうな管理人は、やっぱり一癖以上あったのだ。

仕方なく 僕と村松氏は渋々自分たちの部屋にもどって行った。試しに醤油無しでアワビ を食べてみたのだが「んー、自然の塩あじが効いて磯の香りと風味が何とも言えない」 などと言っていられたのも最初の二口ぐらいであった。やっぱり刺身に醤油と山葵は 無くてはならない物で,切っては切れない物なのだ!いまさらながら「醤油」の有り難 さが,ひしひしと実感せざるを得なかったのである。

何とかして醤油と山葵 、そしてコンロと箸を調達してこなければならん!あのおやじの 居るフロントは通れない,我々は作戦を変更した。私と村松氏は,非常口からスリッパ でロッジの裏の茂みをかいくぐって,フロントの玄関先の様子を伺いながら車までたど り着く事に成功した。途中で藪蚊12匹に奇襲攻撃を受けたが,まだ痒くは無かった。 フロントにあのオヤジは居すわったままである,この距離ではエンジンをかけると必ず 見つかってしまうだろう。もう少し様子を見てからにしようと言う事になり,車に積ん であったツーバーナーのコンロだけを持ち帰った。帰りにも8匹の蚊に攻撃された。



コンロは持ってきたが ,やはり「醤油」である。こんなにも醤油が愛しく思える事は 無い,僕らはどうしても醤油が欲しい!・・・つくづく日本人なのである。

こうなったら仕方がない 、誰かあの管理人に訳を話して「醤油」を貰ってこよう, と言う話しになった。そして今度は,鈴木氏と村松氏が「調達部隊」に任命された。 と言うか,ジャンケンに負けたのである。

しばらくして 鈴木氏がもどって来た。その手には,寝てもいないのに夢にまで見た 「醤油」が握りしめられていた。ついでに箸まで貰ってきた様子である。しかしあの 一癖も二癖も有りそうなおやじが?!と,鈴木氏に話を聞いたら案外物分かりが良かっ たらしい。一癖あるおやじは、こちらが下手に出るとガラっと態度が変わり、 実は俺は物わかりがいいんだぞ、と言わんばかりの素振りで,「醤油」を貸してくれた そうである。そして村松氏が間をいれず「あの,箸も・・」と言って箸まで貰う事に 成功したと言うことである。村松氏は、おやじが気に入ったらしく,藪蚊に刺された 足をボリボリ掻きながら,まだフロントで話しをしていると言う事であった。



とにかく 「醤油」は手に入った。さっそく我々はアワビの生焼きに取りかかった。 刺身にするので醤油を貸してくれと言った手前、焼いている臭いを大胆に漂わせる 訳にはいかないので、コンロをベランダに出して、風向きを計算にいれて隅の方で 焼き始めたのであった。「・・・うまい!」日本に生まれて良かったと感じる瞬間で ある。暫くして村松氏がおやじの元から帰ってきた。

「・・あのおやじはけっこう面白いぞ!」見るからに一癖ありそうだったので、 「夜の帝王」と異名を取る村松氏とは,きっと話しが盛り上がったに違いない。 「酒でも持って行ってやろう」と、村松氏は途中で買ってきた伊豆の地酒を紙コップに 注いでいる。裕樹氏が「それは越後カンバイだぜ、」と、でたらめな事を言った。 村松氏は,疑いもせず「ああ、そう」と紙コップを持って部屋を出て言った。

そして ,帰ってくるなり村松氏は「あのおやじ、えらく喜んでたよ・・」と、 本日アワビと一緒に持って来ていた一個百円の「アッパ貝」を,五個程持って ふたたびフロントに向かって出て行った。

一癖あるおやじ は、たいそう喜んで、フロントの脇にあるキッチンで,さっそく金網で 「アッパ貝」を焼き始めたが,醤油を我々に貸してしまったので、ナント!自分は ソースをかけて,食っていたと言う村松氏の報告であった。 これには我慢出来なくて腹を抱えて笑ってしまった。いやいやあの管理人のおかげで、 たいそう思い出深い一夜となった。

十時になって ,あのおやじがマージャンのパイを回収に来た時に、部屋でコンロを 使っているのがバレては大変なので、借りた麻雀のパイを先にフロントへ返しておいて 内海氏が持って来ていた自前の麻雀パイで,九時頃からマージャンが始まり、結局、 終わったのが夜中の三時であった。成績は私の一人負けであった。(涙)

かくして ,次の日(?)のゴルフが,非常に辛いものになったのは、言うまでもない。 そして,その模様を記した約1600行は、今回割愛させていただく。



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