コンピューターで通信を・Part2.
AOWAOW essey's page.

Gallery /MENU /essay


「禁断のPC通信・Part2.」

家に帰ると,おもむろにパソコン屋さんの味気ない紙袋から箱を取り出し,薄いセロファンをまとった「モデム」の箱をしばし眺めてから,それを剥がそうとした。

しかし,なかなかこれがしぶとい奴で爪が引っかからないのだ。いつも思うのだが,新品のパッケージのセロファンを剥がすという行為に,少々興奮するのは私だけであろうか。使われているセロファンの質で,剥がしにくい物と比較的すんなりと破れる物が有るのである。このモデムのセロファンも「へへっ,今剥がしてやる」と爪を立てても ツルツルと滑って破れないのであった。カッターを使うと箱にキズがつく恐れがある。

こんな場合はやはり「百円ライター」であろう。デスクの引き出しからガサゴソとライターを取り出して火を付け,おもむろにセロファンの中央に近づける。すると「うわっち!」と声が聞こえるかの様に「ひゅわん!」とセロファンに穴があくのだ。そして「へへへ,熱いか?」とセロファンに開いた穴からビリビリと破るのであった,ああ快感
(うーむ,いかん,こんな書き方をすると誤解されそうだ)

今回の「NIFTY-Serveキックオフパック」のパッケージのセロファンは,例えるならばレタスを包んでいる様な,パリパリした活きの良いタイプの奴であった。


箱を開けると,さっそく「モデムの接続方法」と書かれた紙を見ながら,同梱のRS232Cケーブルをパソコンのお尻に繋いだ。そして何故か今回に限り「通信ソフト」も比較的スンナリとインストール出来たのである。「本当に今すぐ出来るのだろうか?」と,順調な滑り出しに少々不安を感じる私であったが,期待を裏切ることなく(?)トラブルはすぐにやって来た。

通信ソフトを起動し,「NIFTY-Serveにアクセスする」と説明書に書いてある絵と同じボタンをマウスで押したとたん,画面が真っ黒になり「続行不可能なエラーが発生しました。リセットボタンを押して下さい」と、画面の左下にメッセージが出てしまったのである。

「へ?」,暫く状況が理解できなかった。しかし押せと言われれば押さねばなるまい。私はガックリしながらもリセットボタンを押し,再起動して通信ソフトを起動し,再びアクセスを試みたのだが結果は同じであった。

「何が今すぐだぁ」とブツブツ言いながらもリセットボタンを5回も押したが状況は変わらなかった。いつもよく見かける「一般保護違反」や,フリーズなどでは無いのである。何もかもが消え去り,真っ黒な画面の下に「続行不可能なエラー」なのだ。しかし操作に落ち度は無い筈だ。当たり前である,ソフトを起動してアクセスボタンを押すだけなのだから・・・。

設定が間違っていたのであろうか?。説明書を繰り返し読んで確認したが間違っているとは思えない。「きっとモデムが粗悪品なのだ!」と,パッケージの裏に書いてある「モデムの仕様」を読んだがさっぱり理解できなかった。そして,その下に書いてあった「Windows版NIFTY-Serve専用通信ソフト」という所を読んで私は愕然とした。「対応機種NEC98シリーズ及びDOS/V機でWindows3.1が稼働する機種」と書いてあったのだ。


「むぅーう」,私のマシンはPanasonicである。富士通のOEM機なのである,DOS/Vでは無い,ましてやNECでも無い。早い話,この通信ソフトは私の愛機では動かないのだ。私は 今までWindowsのソフトなら,どんな機種であっても動作すると思っていたのである,それがWindowsの良いとこだと感心していたのに,同じWindowsのソフトでも通信ソフトは機種を選ぶらしい。

「うーん」,失望感に打ちひしがれる私の脳裏にパソコンショップのモデムコーナーで私の右側に立っていたあのオジサンが笑っている顔が浮かんだ。

しかし物覚えの良い私は,数ヶ月前に雑誌の付録のフロッピーに確か通信ソフトが入っていたのを思い出した。「もしかしたら,その通信ソフトは動くかもしれない!」さっそくデスクの下の段ボールの中の雑誌類をひっくり返す,が見当たらなかった。そのころ伊達にパワーユーザーを目指して頑張って来たのでは無いのだ,パソコン雑誌も一ヶ月に4〜5冊は買うからその量は結構膨大になっていたのである。少し前のものは段ボールに入れてデスクの下,その他は倉庫へ格納してあるのだ。しかし,倉庫へ行っても段ボールの箱が見当たらなかった。「確かに・・・このあいだは有ったのに」。


一抹の不安を胸に「おーい,私のパソコン雑誌の入った段ボール知らない?」と、恐る恐る妻に聞いた。

「先週小学校の廃品回収に出しましたよぉ」
「ええっ?!」。
ななっ,なんと言うことだ!人の大事な物を
事も有ろうか廃品回収に出すとは!
「大事なフロッピーが入ってたのにぃー!」
「そんなに大事な物なの?」
「いま大事になったんだけどさぁ」
「そんなに大事になる物なら,ちゃんとしまっておいて下さい!」
「だからぁ,倉庫にしまっておいたんだよぉ」
「燃えるゴミの隣に置かないでよね」
・・・なんか形勢が不利になって来たので,私は
「もうっ!」と言い残してデスクへ戻った。


うーん、本格的に困った。「他の通信ソフトなら」と希望を持っていただけに廃品回収の仕打ちはこたえた。かくなる上はライバルSに借りるしか無さそうである,あいつなら通信ソフトの一つや二つ,持っているに違いない。

だが、 彼だけにはあまり借りを作りたくないのである(「ヲタクへの道」参照)。 Sの事だから会う度に「僕のあげた通信ソフトの調子はどう?」と言うに決まっているのである。その様な事態になるのだけは避けねばならない。ならぬと言ったらならぬのだぁー!。
うーん・・・やっぱり困った。

「困った困った」と思い続けて3日が過ぎた。昼休みにいつも行く本屋へ立ち寄ったらなぁんだぁ?有るではいか!。パソコン雑誌のコーナーではなく「パソコン関連書籍」というコーナーに,パソコン通信の本に付属して通信ソフトが有る有る!。

今まで 通信に興味が無かったので見落としていたのだ。私は今度こそ私のマシンで動く 通信ソフトを探す為に必死になって立ち読みした。そう,仕事に15分遅刻するまで立ち読みしたのである。通信関連の本を5冊も立ち読みして知った事はWindows版の通信ソフトなら,「どれでも動きそう」と言う事であった。それではあの「NIFTY-Serveキックオフ・パック」は何だったのだ?。そうだ,より簡単にして設定などもしないで済ませる為に,ソフトの機能を限定してあったのだ。だから「NIFTY-Serve専用NEC,DOS/V」と,書いて有ったに違いない。色々と迷ったあげく私は「EmTerm」を選んだ。何やら好きな効果音を出せる機能が有るらいしのだ。どうせパソコン通信するなら楽しい方が良いに決まっているのだ!。

さっそくその本を買って帰り,仕事が終わるやいなやインストールして接続。オンラインサインアップに40分も費やして,数日後,とうとう私は商用NetworkであるNIFTY-Serveの会員になったのである。これからはパワー・ネットワーカーの道を目指すのだ!わははは!。・・・しかし待てよ。効果音が出て無いぞ?・・・。そう,我が愛機のPanasonicM21には音源ボードが実装されていなかったのである。

しかしその後,画面に向かって「おーし!」「ええっ?」「なんでー?」「ハハ」と,音源が無くても,結構にぎやかな私をうちの家族は度々目撃する事になるのであった。




● メイン MENU へもどる.

他の エッセイを よむ.

Copyright (c) 1997 SUZUKI TAKUFUMI.
All rights reserved.
fox@tokai.or.jp