【黒豚は二月が旬】
AOWAOW column.


 

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【セブ島の子供達を学校へ】
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  • File No.45【黒豚は二月が旬】

    今夜の夕食に出た白菜のキムチは旨かった。白菜というと、仙台で農家の納屋の二階(下はトラクター置き場)で、下宿生活をしていた学生時代をを思い出す。月末になるとお金が無くなり、スーパーでバイトをしている奴が店に並べておく期限の過ぎたウドンなどを貰ってきては「鍋」をやったものである。ウドンだけでは寂しいので、トラクターの置いてある納屋に降りると、いつもかなりの数のタマネギが吊してあるので、それを何個か頂いてくる。黙って戴くと泥棒になってしまうので、大家の家族に90歳を超す、とても耳の遠いお婆ちゃんが居るのだが、そのお婆ちゃんに、小声で「タマネギ貰うね」と、ちゃんと断ってからいただくのである。お婆ちゃんはいつも快くコックリ・コックリと頷いてくれる。寝ているというウワサもあったが・・・。

    ウドンとタマネギだけでは寂しいので、何か入れるモノはないかと食材調達部隊が結成され、近くの農家に物乞いをして回る。下宿の大家が農家なのに、どうして大家に貰わないかというと、実は借りを作ったりすると、米の刈り入れの時にタダで手伝わされるのである。その下宿の先輩の話しなので、まず間違いは無い。とてもケチな大家で近所にも有名なのである。食材調達部隊は物乞いリストを見る。そのリストには何処の農家で何を頂いたか記してあるのだ。毎月貰いに行くと嫌われてしまうので、2〜3ヶ月周期で頂きに行くのである。そう、毎月どこかの農家で「今月に限って、へへへ・・・」と物乞いするのである。大抵の農家の方は「学生さんは大変だねぇ」と、いつも何かをくれるのである。こうして学生時代に、いつ何が旬なのかも覚えていったのである。

    食材調達部隊になった私とTはリストから以前に先輩が白菜を頂いたと記してある農家へ向かった。丁度トラクターの整備をしていたその農家の主人が「裏の畑に開き過ぎた白菜があるで、いくらでも持ってけ」と言ってくれたので、さっそく私達は裏の畑へ行った。広い畑一面に白菜がなっていた。さっそく私とTは白菜をいただく事にした。が、白菜がとれないのである。柔道二段のこの私が力一杯引っこ抜こうとしても白菜はびくともしないのである。私とTが真っ赤な顔をして白菜を抜こうとしているのを、整備が終わった主人が覗きに来て大笑いしていた。その時初めて「白菜は手では抜けない」という事を知った。

    最近、「旬」というものが判らなくなって来ている。ハウス栽培が多いので一年中手に入るからだ。以前ならナスは八月初旬から九月が旬で「秋ナスは嫁に食わすな」という言葉まで有るくらいであったが、今では一年中美味いナスが手に入る。ちなみにリンゴの旬は10月、ナシは九月、ブドウも9月の中旬迄である。牛や豚にも旬があり、それは「冬」。さすが食欲の秋、今頃から牛や豚もモリモリ食べ始めて、栄養が行き渡り味が良くなる時期が冬なのだそうだ。特に二月頃の黒豚は最高らしい。ああ、急にトンカツが食べたくなってしまったぁ〜。



    というわけで、トンカツが食べたくなったので、さっそく夕御飯はトンカツにしてくれと、妻にリクエストしたら却下された。「インターネットの日記で、明日はトンカツ食べるって書いちゃったんだよ」と言うと、「・・・そう、見せてごらん」と形勢が不利になったので、「すっ、すいません、ウソです」と思わず謝ってしまった。私はいさぎよい性格なのである(ちがうな)。

    しかし食べた鋳物は(これもちがうな)、すぐに食べたいものである。静岡(浜松)にもトンカツの美味い店があるが、その店は確か、時々だが黒豚を食わせてくれた記憶がある。それも鹿児島産の黒豚だ。牛は松坂・豚は鹿児島というくらい鹿児島の豚、それも黒豚が有名である。いわゆるパークシャー種の豚なのだが、これがまた白豚にくらべて「旨味」が断然に違う。白豚にくらべて筋線維が細くて密なのと、その脂肪に含まれる飽和脂肪酸が多いためで、この飽和脂肪酸が多い黒豚は、煮物にしても溶けにくいので、黒豚特有の歯触りになるのである。ただし純鹿児島産の黒豚はなかなか入って来ないらしく、入荷しても量が少ないので日曜日などは午前中で売り切れてしまう。

    黒豚は4本の足の先と鼻とシッポが白く、別名「六白」と言われている。 ルーツは古く、約370年〜450年前に琉球から移入されたと言われ、明治から昭和にかけて改良された鹿児島黒豚は、さらに改良が進められ現在「サツマ」「ニューサツマ」の名で呼ばれているそうだ。最近コンビニなどでも「黒豚弁当」というものが出回るくらいに黒豚は売れているので、黒豚の需要はますます大きくなっているのだが、本場鹿児島の純粋種にこだわりを持つ生産者からは、 「他の品種と掛け合わせたものが黒豚として出回っているので、 苦々しい」 という声も。なにしろ鹿児島県種豚改良協会などでは本場の黒豚を本場のサツマイモで飼育しているくらいに気合いが入っているのだ。そんな黒豚は、もう食べる前から美味そう。ああ食べたい。こんな事を書いていたら余計に黒豚が食べたくなってしまったぁ。「嗚呼愛しの黒豚よ、待ってろよ、そのうち行くぜ」・・・紅の豚の口調で読んでね(笑)。


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