葉の葉面積とクロロ フィル濃度は、植物の物質生産機構を理解する上で重要な要因である。そのため、これらの推定法として様々な方法が提案、そして検討されている。本研究で は、広葉樹の葉の葉面積とクロロフィル濃度の簡易的推定法としての光学スキャナー利用の有効性を検討した。
クロロフィル濃度推定の対象とした樹種は、新潟大学構内に自生または植 栽されている落陽広葉樹、常緑広葉樹各3樹種で、測定は葉の開葉展開時期の6〜7月と紅葉落葉時期の9〜10月に行った。また、葉面積の推定は、これら6 樹種を含め新潟大学構内の様々な樹種を対象とした。クロロフィル濃度の推定においては、葉緑素計(ミノルタSPAD501)によりSPAD値を測定後、測 定部分の切片葉を光学スキャナーによりフルカラーのデジタル画像として保存後、LIA32 for Windows95によりデジタル画像から切片葉内のR(赤)G(緑)B(青)のデジタル値の平均を算出した(葉・背景別色情報を使用)。葉面積の測定 は、サンプル葉の葉面積を葉面積計(林電工 AAC100)によりを測定後、そのデジタル画像から葉面積を推定した。
各樹種において、SPAD値とR Gの平均値は極めて高い相関(r>0.8)を示したが、両者に比べてBの平均値との相関は低く、 SPAD値の変化にともなうBの平均値の変化は僅かであった(Fig. 1)。また、 Rの平均値は SPAD値の増加にともない指数関数的に減少したが、 Gの平均値は直線的に減少した。GとSPAD値の直線関係は樹種間で異なったが、各樹種における直線回帰の決定係数(R2)は 0.9を越えており、葉内クロロフィル分布の解析に有用であることが示された。一方、デジタル画像において、Bの値は葉の採取時期に関わらず葉と葉でない 部分の値は大きく異なり、画像内の葉の境界の特定にはBの値が最も有効であった。葉面積の推定においては、葉面積計により測定した値とスキャナーにより測 定した値の間には高い相関(r2>0.99) が認められた(Fig. 2)。
Fig. 1
Fig. 2