フィルムスキャナとLIA32 Ver.0.37β1 による花粉計数法
石川県林業試験場 矢田 豊
新潟大学(現在:名古屋大学) 山本一清
[必要機材等]
1)ダーラム型花粉捕集器等
スライドグラスに付着した花粉をカウントするタイプの捕集器。
2)パーソナルコンピュータ
Windows95が稼働しているもの。 画像処理に時間がかかるため、演算処理能力、メモリ容量、ハードディスク容量などに余裕があるものが望ましい。
矢田は、Pentium166MHz、メモリ64MB、ハードディスク空き容量約50MB、そして
花粉プレパラート画像データ保存用にMOディスクを使用しています(※画像処理実行時にも、メモリ上の画像ではなく画像ファイルを直接解析しますので、解
析する画像はハードディスク等の転送速度の速い媒体に置いておいて下さい)。
3)フィルムスキャナ
2
700dpiの解像度を持つものが(現段階では)必要です。 矢田は、Canon製 CanoScan 2700F を使用しています。
4)画像処理ソフト LIA32
URL:
http://hp.vector.co.jp/authors/VA008416/index.html にてご入手下さい。
[その他の準備]
1)プレパラートの作成法
グ
リセリンゼリー法などによる半永久プレパラートとして作成する必要があります。これはプレパラートをフィルムスキャナに挿入するためです。そのための封入
剤、加熱設備等を準備して下さい。 グリセンリンゼリー法については、花粉観測法に関する文献等をご参照下さい。 なお、矢田はゲンチアナバイオレット
(メチルバイオレット)を、常法の10倍の濃度で使用しています。これにより、染色が早く、かつ濃い色で染まり、迅速な処理と画像解析に好都合です。
2)プレパラートの固定具
フィルムとプレパラートでは形状が異なるため、プレパラートをスキャンするためにはある程度の工夫が必要となります。
矢田が使用している CanoScan
2700Fの場合、35mmポジフィルムのマウントを片面だけ切り取り、それにセロファンテープでプレパラートを固定して、スキャンすることができました。
[作業手順]
1)プレパラート作成
通常の観測作業と同様に、半永久プレパラートを作成します。
2)スキャン
プレパラートスキャン用の固定具にプレパラートをセットし、フィルムスキャナでスキャンを実行します。解像度は2700dpi前後、保存ファイル形式はフルカラー(24bit)のビットマップ(.BMP)とします。jpeg等では画像が粗くなり、解析に不適当です。
3)画像解析
3)−1 判別分析
判別分析とは、簡単に言うと、花粉(など)とそれ以外の部分の違いを、明確にしてやる処理です。
まず、判別分析に用いる判別式を用意しなければなりません。これは適切な式を一度作ってしまえば、それを毎回使用することによって手間を省くことができます。はじめは用意された判別式ファイルを使ってみて下さい。(判別式作成の方法については、LIA32.txtをご参照下さい)
LIA32の「開く」ボタンからのファイル操作ダイアログで、フィルムスキャナで保存した画像を読み込みます。
画像ウィンドウをアクティブにし、メニューの[処理]−[画像分類]−[判別式読込]を選択して下さい。そして判別式を読み込むと、インフォメーションウィンドウの[分類]タグに、判別式の概要が表示されます。
判別式により目的どおりに分類が行われているかを確認したい場合は、[処理]−[画像分類]−[分類画像表示]を選択します。判別式によりインフォメーションウィンドウの[分類]タグに表示された色分けで画像が色分けされ(作業中はウィンドウ下のステータスバーに、処理経過が表示されます)、処理が終わると画像が再表示されます。
3)−2 計数処理
画像ウィンドウをアクティブにし、[処理]−[オプション]を選択します。ここで以下のとおりに設定を変更します。
・「葉面積推定バッファサイズ」 −> 200 000程度に変更
・「葉面積認識ピクセルサイズ」 −> 3〜15程度&[No.表示]のチェックを外す
・「2値化条件」の「対象」 −> 分類に変更
そして、[処理]−[解析実行]−[面積推定]で計
数処理を実行します。実行の前に、認識するグループと認識しないグループを選択する画面が出ますので(最初は全てが認識されるボックスに入っています)、
番号をマウスで選択後矢印ボタンでグループをそれぞれのボックスに分け、「OK]ボタンをクリックして下さい。作業中はウィンドウ下のステータスバーに処
理経過が表示され、実行が終了するとインフォメーションウィンドウの[葉面積推定]タグにカウント結果が表示されます。
この処理にはかなりの時間がかかります。私が使用しているPentium166MHzのマシンにお
いて、MO上の1画像では約20分程度、PCカードのフラッシュメモリ上の1画像では3分程度で終了しました。計数処理が終わると花粉と認識された像が赤
く表示され、インフォメーションウィンドウの[面積]タグの左上に、花粉の個数が表示されます。
※これらのメニューで「葉面積...」の語句が目につくのは、LIAがもともと葉面積測定用として、これらの機能を装備したからです。
[今後の課題]
・観測条件:塵埃、水分、ワセリンの塗りムラによるノイズの影響の検討
・汎用的な判別式の導出(必要に応じて、複数)
・最適花粉認識ピクセルサイズの検討
・ハードウェア環境とソフトウェア運用条件による、処理速度差の確認
・フィルムスキャナの機種差に関する情報収集と検討
[参考文献]
花粉観測法(ダーラム型花粉捕集器、グリセリンゼリー法等について)
- スギ花粉のすべて 佐橋 紀男 ほか (株)メディカル・ジャーナル社 1995
- 花粉症の科学 斎藤洋三 ほか 科学同人 1994
判別分析について
- パソコン統計解析ハンドブック U多変量解析編 田中 豊ほか 共立出版 1984