■□■□■□■□■□■□■□■□■□
□■□『 技術・戦術の戦い 』■□■


     |      ドイツ軍      |      連合軍
________________________________________
1939||・予想外の早期開戦でUボート小||・9月末、イギリス、ドイツと全面戦
    ||戦力で戦争に突入。      ||争化。
   9||・数々の攻撃制限(対英仏)、本||
    ||質を理解されず重要度も低くみら||       _________
  10||___________ れる。|| _    |・船団編成準備の |
  11|・本質外の敵軍艦撃沈によ|__ |||機|   |ため通商活動低下。|
  12|って名をあげる。       ||||雷|   |         |
______・機雷散布に駆り出し。   ||||戦|   |_________|
40 1|・対ノルウェー戦で魚雷の欠陥暴||||_|・英、機雷の防御法開発。
    2|露。  ___________|||               ||
   3|   |・イギリス周辺で単独活動|| _______       ||
   4|   |による地味な商船攻撃。 |||・ノルウェー戦|      ||
   5|   |____________||| ______|      ||
   6|・フランス占領。フランスの港の_|||              ||
    |使用によるUボートの活動圏拡大。||    ___________||
    |・(水面に無気泡)新魚雷G7e ||   |・イギリス、護衛艦不足。|
    |・「大西洋の戦い」開始。    黄|   |            |
   7|  ____________  金|   |__________  |
   8| |[単独行動/エース時代]| 期| _____        | |
   9| |・夜間の水上攻撃を開始。| |||バトル  |       | |
  10| |・Uボートの練度上昇。 |_|||・オブ・ブ|       | |
  11| |・敵の情報解読(船団合流|  ||リデン。 |       | |
  12| |点、独航船の進路)   |  ||_____|       | |
______|・船団よりも独航船の戦果|  |・イギリス本土上陸作戦の危機が||
41 1| |が圧倒的に多し。    |  |薄れ、艦艇は船団護衛強化に。 ||
   2| |____________|  | ______________||
   3|・4隻のエース相次いで失う。 _ ||・船舶のローテーション向上  |
   4|  ____________| |||(船団制普及)。       |
   5| |[集団攻撃・ウルフパック へ |||___ ・航空機の増強。   |
   6| |              || __ |・CAMシップ初投入。|
   7| |____________  |||  ||  ・レーダー装備艦艇|
   8|・対潜水艦探知機装置    | |||アメ| |普及。       |
    |「ピレンヴェルファー」   | |||リカ、||          |
    |(英呼、ボルド)使用開始。 | |||宣戦な||          |
   9|              | |||き戦い||          |
  10|              | |||。  ||          |
  11|              | |||___||_________ |
  12|              | ||・「アメリカ参戦」。     ||
    |              | ||・CVE初投入。       ||
    |              | ||・対潜兵器「ヘッジボック」導入||
______             |_||・「大西洋放送」開始。    ||
42 1|       _______ _ |・航空機でUボートを奇襲。  ||
   2|      |       | ||               ||
   3|      |・アメリカ沿岸| 黄|  _____________||
   4|・Uタンカー|/カリブ海を攻| 金| |・アメリカ沿岸で船団制導入。|
   5|活動開始。 |撃。     | 期| |_____________ |
    |      |1/13     | ||・ハフダフの価値認められ艦艇に||
    |      |バウケンシュラ| ||装備されはじめる。      ||
    |      |ーク作戦   | ||・アメリカの航空機/船舶建造量増加||
   6|      |_______| || _____________ ||
    |               _|||ガスコーニュ 湾に対する航空攻勢|||
   7|             ||_ || ____________|||
   8|             |北大|||| _________   ||
   9|・対レーダー探知機    |西洋|||||トーチ作戦準備で |  ||
  10|「メトックス」(100    |での||  |_護衛艦引抜き。_|  ||
  11|cm範囲デ1.4~1.8 cmノ   |激戦||・「トーチ作戦」       ||
  12|周波数ヲ 警報) 導入。   |。 ||・ハフダフ 全護衛艦艇の標準装備に||
______            |  ||               ||
43  |             |  ||               ||
 1〜3|             |_ ||               ||
   4|・B機関、英の新暗号解読できず|||・MACシップ _ ・新型レー||
   5|。              ||| 護衛初参加。  |ダー航空機||
    |・Uボート、一時撤退。    |||・英、新しい暗号。|/艦艇に装||
    |・Uタンカー初めて撃沈される。|||         |備。   ||
   6|・”飛行機取り”戦術。   _|||・無線浮標、実用化|ASVマーク3||
    |             |北大||||____   | ____||
    |             |西洋|||・ガスコー|_ ||・連合軍、|
   7|・新型UBの計画。    |で攻|||ニュ湾に対 |  |指揮統一へ|
    |・新型探知機「ヴアンフェ」|撃再|||する、2回目| _|。    |
    |→「ボルカム」。     |開。|||の航空攻勢。||・船団の大型化|
   8|・独空軍増強による連合軍 |  |||______||(従来の50〜|
    |航空攻勢、中止に。    |  ||  ______|70%増し)。|
    |・新型音響魚雷「ツァウンケ|_ || |・護衛空母と哨戒機VLRのギ|
    |ーニヒ」T5魚雷を実戦導入。 ||| |ヤップ埋め、新型レーダー(練|
    |(早期導入のため調整不完全。命||| |度も上昇)、強力な爆雷、Uボ|
    |中率が上がるのは44年末から)||| |ート狩りの新戦術(穏密攻撃法|
   9|・イタリア降伏。       ||| |__________  )。|
  10|・新型探知機「ナクソス」。  |||・音響魚雷に対して、速力|・支援|
    |10cmレーダー探知?。      |の増減による、超音波数帯|戦隊を|
    |                 |の変動戦術で対抗。   |投入 |
  11|・FAT(目標追跡魚雷)導入。  |・対音響魚雷擬音装置「フ|   |
    |               |||ォクサー」導入(探知機機|   |
    |               |||能を妨害する欠点あり)。|   |
  12|・改良型「ナクソス」、敵レーダ|||・最新3cmレーダー? |   |
    |ー(3cm?)探知できず。   |||            |   |
______ _____________|||            |__ |
44 1| |・空軍の効果的な協力が得られ||・磁気空中探知機(MAD)装備||
    | |ないため(敵のハフダフによっ||の航空機導入。        ||
    | |て、集団攻撃のための通信によ||               ||
   2| |る集結を阻止されたUBには目||・対音響魚雷、擬音装置「フオク||
    | |が必要だった)個艦攻撃へ。 ||サー」の改良型が就役。    ||
    | |_____________ ||・対音響魚雷、小型機雷(逆機雷||
   3|・FAT魚雷に代って、LUT(|||)。             ||
    |同一海面反復旋回魚雷)[射角無|||               ||
    |調整魚雷]登場。       |||               ||
   4|・新型探知機「フリーゲ」。  |||               ||
   5|               |||・音響魚雷、無力化を達成。  ||
   6|・連合軍、北フランス上陸。    |・新型爆雷「スキッド」導入。 ||
    |(ドイツ軍の阻止反撃、失敗)   |・U505を捕獲(Uボートや音||
    |・新型探知機「ミュッケ」。    |響魚雷の性能分析へ)。    ||
   7|・Uボート、フランスの港を失う。 |               ||
8〜10|                 |               ||
  11|・シュノーケル装備、全UBに完|||_ ・シュノーケルUBの潜行航||
    |備。             ||| |行で撃破率低下。探知機も効||
  12|               |||_|果減少。         ||
______  ____________|||               ||
45 1|  |・ノルウェーでUボートの再||・X周波帯(3cm)の新型レーダ||
    |  |建に着手。        ||ーが航空機と艦艇に装備(精度の||
   2|  |・イギリス周辺で戦闘開始。||良さから「シュノーケル病」現象||
    |  |____________ ||発生)。           ||
   3|・23型UB、初出撃。    |||               ||
   4|・21型UB作戦可能に。   |||               ||
   5|               |||               ||
____|_______________|||_______________||
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□■□『 技術の戦い 』■□■


・海では、船という技術の産物に頼らなければ人間は生存することすらできません、それ故、海戦では船自体が持つ技術的な力が勝敗の重要な要素になります。
・特に、潜水艦は第1次世界大戦ではじめて本格的に戦争に投入され、第2次世界大戦では歴史上唯一の潜水艦による集団攻撃が(大西洋を股にかけ)行なわれており、このような前例のない未知の戦いでは、両陣営とも0から暗中模索しながら自分の必要としている技術、敵を打ち破る技術を開発していかなくてはならず、それには膨大な労力を必要としたのです。

・ドイツ潜水艦隊は0からはじめる必要がなく、最初、状況はUボートに有利でした。 ドイツ潜水艦隊司令官デーニツッは第1次大戦をUボートで戦い、いわばUボートをよく知り尽くした専門家であり、潜水艦戦がなぜ失敗したのか?成功させるためには何が必要か?潜水艦の通商破壊戦における可能性?などの前大戦の教訓から次にイギリスと戦争になった時の、(潜水艦という未知の可能性をもった、悪くいえば海とも山ともわからないものの)Uボートの可能性ととるべき道を正しく見極めていた数少ない人物でした。 彼はUボートの本質を理解しない上層部に悩まされながらも、自分の認めていた潜水艦戦を実行にうつし、不本意な使用戦力にもかかわらず大成功をおさめます。

・このUボートの攻撃に連合軍は前大戦で得られていた常識、自分が過信していた対潜防御装備が、急速に進んでいた技術発達の上で作られているUボートとデーニツッによる前例のない戦術によってまったく旧式化してしまっていることを思い知らされます。
彼らは、ほとんど0からはじめなければなりませんでした。 対潜装備という新しい分野/技術的な蓄積のない分野の技術開発は困難を伴い、その技術の実戦導入は数々のトラブルや改良を覚悟しなければなりません(例えば、Uボートをより正確に探知するレーダー波を見つけ新型レーダーを開発しても、それを対潜用に改良し、飛行機に積めるほど小型化したり、艦艇の高速活動でも使用できるよう改良したり・・・)、しかも次々進む新しい技術の使用に兵士が慣れるのにもかなり時間がかかります。アメリカの膨大な国力で護衛戦力を増大させても、その技術を使いこなすスペシャリストを養成する方がより困難で、時間がかかりました。
最新技術を戦術レベルで使用し、作戦レベルで活動し、戦略レベルで運用するには更に膨大な費用・時間・マンパワーが必要になります。
 こうして、前大戦からまったく変貌してしまった第2次世界大戦版の潜水艦戦に適応するために、連合軍は膨大な代償を破滅寸前のところまでかかってデーニツッとUボートに支払うはめになったのです。

・ですが連合軍は、唯一、優先度/重要度の点で終始ドイツ軍より有利でした。
連合軍は大西洋に最高の力を投入することができました。 なぜなら大西洋はイギリス・アメリカにとって最後の砦であり、ここで敗けることは戦争の敗北を意味することを連合軍の中枢は恐れていたからです。大西洋は、絶対に敗けられない戦場でした。また、大西洋の制圧なくしてはヨーロッパへの反攻など考えられませんでした。
最高の頭脳が対潜戦闘の技術開発に携わり、また後のない連合軍は純粋な技術開発だけでなく、心理面、情報面などのあらゆる角度からUボートを打ち砕こうと画策します。
例えば、捕虜に対して非常に巧妙な尋問方法でUボート自体の性能や新装備・新兵器の技術的な情報を引き出すことに成功していました。 また、41.8/27 にU570の捕獲に成功したことは、Uボートの行動能力や性能を正確に分析でき、技術面での対潜装備/兵器や戦術の改良進歩に大きな弾みをつけました。 (U570の捕獲話が捕虜収容所に広がると、Uボート乗組員達は〈このUボート艦長に対して〉激怒しました。Uボート自体を技術的に分析され、自分達の手の内を知られることが、いま海上で戦っている戦友にどういう結果をもたらすかをよく知っているからです。戦闘/行動能力を喪失したUボートは敵の手に渡る前に絶対に自沈させなければならなかったのです)。
42.2月にはフランス沿岸のドイツ軍防空レーダーシステム拠点を空挺部隊で奇襲し、レーダーと技師を拉致していくということもしています。
こうして、連合軍は技術的優位に・・つまり戦局を逆転することに成功し、Uボートは狩る側から狩られる側へと立場を入れ替えるはめになるのです。

・連合軍が全力を上げて大西洋で優位に立とうとしていたとき、デーニツッとドイツ潜水艦隊は相変わらずドイツの上層部に振り回されていました。
ドイツにとっては陸軍が主体であり、とくに大戦前半は電撃戦による大進撃の大勝利の中で、劣勢な戦力で開戦を迎えた海軍の、海とも山ともわからない潜水艦が多少善戦していても「高い宣伝効果」程度で大西洋も単なる1つの防衛線にすぎず、生産や技術開発の優先度も低く押さえられていました。
Uボートの本質を理解しない命令や、低い生産優先度ゆえ、技術/戦術的優位に立ちながらもUボートの戦力不足で敵を思うように追い詰めれないジレンマにたったデーニツッは、なんとかこの弊害を取り除くことに苦慮する反面、現在の戦力で戦果を拡大できるよう数々の工夫をこらします。 当時のデーニツッの悩みは、極端に言えば「技術/戦術面では問題がない、戦力が足りないのだ」になります。
これはある程度事実で、42年、ドイツ陸軍が東部戦線のスターリングラードで大敗を喫したとき、連合軍と対等に戦っていたのはUボートだけだったのです。
この頃からドイツ軍内でのUボートの優先度は上がっていきます。 Uボートの生産数は上昇し、作戦Uボートの数も増加し、43年春には長い期間努力してきたにもかかわらず連合軍は破滅を思わせるような損失を被ります。
これで連合軍を屈伏させれれば、デーニツッは正しかったことになり問題はありませんでしたが......連合軍は屈伏せず、技術/戦術優位性の逆転に成功しました。結果的に、デーニツッは根本的な技術開発を怠ったという代償を、今度は自分自身とUボートで支払うはめになるのです。

・43年3月。あまりにも急激におきた戦局の逆転に、デーニツッは一時戦況を把握できないほどでした。 Uボートの大損害/戦果の激減と連合軍の発達した対潜防御システムの前に、従来のUボートの能力(はおろか、戦術さえも)が旧式化していることを痛感させられたデーニツッは、新型Uボートの開発で再び戦局を逆転しようとします。
画期的な能力をもつ新型Uボートの原理は数年前から既に解っていましたが、このような従来の常識を打ち破るような技術の開発と実戦導入は容易に進まず、連合軍が多大な犠牲と時間を消費して技術的優位性を勝ち取ったのと同じように、開発/導入にかかる長い時間とその間のUボートの多大なる損害を受け入れなければなりませんでした。
不利な従来のUボートで戦い続けていくのですから、大西洋はUボートにとって過酷な戦場と化しました。ちょうど、潜水艦戦全盛期が船団の乗組員にとって地獄の釜だったように・・・。
新型Uボートが導入されるまでの間にも、従来のUボートに数々の工夫がなされましたが、いずれも戦局を左右できるものではなく、Uボートの破滅を遅らす防御的な処置にすぎませんでした。 また、常に連合軍は技術面でドイツ軍を一歩リードしていました。

・そしてようやく、敗戦も時間の問題と思われた45年の春に、実用化状態の新型Uボートが出現します。
これは、連合軍首脳部に強い危機感を与えます。 多大な犠牲と労力を投入して作り上げた対潜防御システムが、新型Uボートの大攻勢で(陸上のドイツの敗戦は決まったも同然だったのでこの可能性は非常に低いものでしたが)で打ち破られることにでもなれば、再び戦局を逆転するためにもう一度多大な犠牲と労力を覚悟しなければならないとは、悪夢の何者でもありませんでした。
大西洋全域に防御処置を取らなければならない連合軍の技術優位性に払う犠牲と労力は、攻撃側のUボートと比べるとはるかに膨大なものになるからです。
(個人的な見解を云っておくと、この新型Uボートは生存性を高める効果はあっても戦局に影響を与えれたかはかなり疑問です。極少数しか実戦投入されなかったため実状が見えず、情報だけが先行し期待感や危機感/警戒感をことさら増大させた結果ではないかと考えます)。

・結局、新型Uボートはその可能性を証明する事無く、戦争は連合軍の勝利に終わり、新型Uボートとその技術は敗戦の混乱に巻き込まれてくことになるのです。

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□■□『 戦術の戦い 』■□■


   ・技術の粋である兵器をいかに効果的に使うかが戦術になります。
両軍とも様々な試行錯誤や諸子事情を乗り越えて、いわば主流となる戦術・戦法をもっていました。連合軍の「船団制」とUボートの「集団攻撃」です。

  【 U ボ ー ト の 『 集 団 攻 撃 』】
・Uボートの本格的な集団攻撃は、41年4月頃から始まります。
それ以前ではUボートの数が根本的に不足していたので、集団攻撃は実行不可能でした。
また、連合軍の船団制が普及するとエースなどによる個艦活動では対抗できなくなっていました。 (連合軍は、大西洋の戦いでは後手に回っていたので船団を守る独自の戦法というより、いかにUボートの戦術を無力化するかという適応の形で進んでいきます)。

 Uボートの集団攻撃は基本的に次のように行なわれました。
●● 1、 連合軍の暗号/通信の解読/分析や捕虜からの情報による船団の情報をもとに、Uボートを(予想される)船団進路上に配置します。 (北大西洋は、ヨーロッパ戦域では最大の広さ{東部戦線の数倍}をほこっていたので、このような情報をもとに作戦域を絞りこまなければ、2ケタを越える事がほとんどなかったUボートの常時作戦戦力数では集団攻撃どころか発見さえも困難でした。 敵に発見されにくく作られているUボートの構造{司令塔などの海上露出部分は、低く目立たぬように}は捜索には本来不向きとも言えます)。
●● 2、 船団を発見したUボートは、このことを潜水艦司令部(西部管区)と付近にいるUボートに伝え、攻撃する事無く、他のUボートが集まってくるまで接触を保ち続けます(Uボートの捜索は、全て見張員の肉眼によって行なわれていました)。 集まってきた不特定多数のUボートはUボート同士や司令部に連絡をとり、司令部の攻撃命令を待ちます。(Uボートには船団を後方から追い掛けて攻撃できるほど機動力がないので、攻撃集結位置は船団進行方向の前、つまり立ちはだかる位置になります)。
●●3、 司令部の攻撃命令がでれば攻撃が始まります。 司令部はその戦闘の経過を見守り、攻撃の中止/中断/増援/再攻撃や新しい攻撃の配置変換命令を出します(攻撃自体は、司令部が関与する事無く、各Uボート艦長の采配/判断に任せられ、個々の潜水艦が独自に行います。攻撃のリーダー潜水艦も存在しませんでした)。 攻撃は夜間に(攻撃中に発見されにくいため)、浮上状態で(潜水艦は潜水状態で攻撃してくるという敵の意表を突き。潜水状態でなければ効果のない敵の探知機を無力化し。潜水状態より浮上状態のほうが機動力があるため)行なわれました。
・また攻撃は1度では終らず、数夜に渡って繰り返し行なわれることもありましたし、作戦に投入できるUボートが増えてくると二重三重の攻撃グループを配置して船団を迎え撃つこともありました。


  【 連 合 軍 の 「 船 団 制 」】

・船団制は船舶の運用法の一種で、船団制よりも効果の高い運用法はいくつか存在しましたが、当時の連合軍の兵力と技術レベルから見て、「船団制」こそが採れる/可能な最も現実性/安全性の高いものでした。 (が、このことはなかなか理解されず、イギリス初期の戦闘やアメリカ参戦時のアメリカ沿岸で、戦力不足のUボートに大戦果をあげさせることにつながりました。 (アメリカ参戦時、米護衛艦の多くが太平洋戦線に投入されていたということもあり)。
また1941年までのドイツ大海艦隊の通商破壊活動への対処は船団護衛をより複雑にしていました。
・船団制は多数の商船が船団を組む関係上、自由航行時に比べると輸送効率が低下し、港湾は同時に一定数の船しか出入りさせれませんでした。 船団の速度は一番遅い船に合わせ、船団は警戒のためジグザグコースで進むため航行距離は長くなり、時間がかかり、燃料も余計消費することになります。 (多大の損失のため燃料が不足気味だった42年頃は、船団は最短距離の航路をとらざるおえない/危険水域を避けることができず、損失増加の原因の1つになりました)。
また実際、大西洋のような荒れた海で船団の商船にジグザク航行させるのはかなり骨の折れる仕事で、頻繁に起こる諸艦艇同士の衝突事故(42年末に、近距離探知が有効なレーダーが商船に装備されるようになってから減少)や、夜間にバラバラになった船団の体形を直したり、はぐれた船舶をつれ戻す骨の折れる仕事も護衛艦の役目でした(船団と護衛艦の生活は、単調で、絶えない緊張と警戒/忍耐を必要とする激務でした)。
戦局が不利な頃は、Uボートの攻撃で混乱/パニックをおこし、船団の外ヘ出てあっさり撃沈される船舶も多かったようです。

・43年から船団の大型化されるようになって、船団数の減少や護衛艦節約によって、敵接触時の状況コントロールができるようになります。
・船団について、連合軍の戦略的運用は、
→、船団HXとSCを同時進行(合流ではない)させて、敵の分散化や不利な方に護衛戦力を増強する。
→、船団ONとONSや船団SLとMKSを合流進行させて、護衛戦力を集中させる等。
→、船団SCとONSを交叉するように進行させ、ちょうどギヤップ(航空機の足が届かない所、つまりUボートが攻撃してくる場所)で両者を支援隊や増強専門の護衛戦隊がフルに支援できるようにしました。

船団記号は、
・HX、ハリフアックス →イギリス(39.9/16ー)
・SC、ハリフアックス →イギリス(40.2/15ー)
・ON、イギリス →ハリフアックス(41.7/27ー。 元OB)
  ・ONS、イギリス →ハリフアックス
・SL、フリータウン→イギリス (39.9/14ー)
  ・MKS、地中海→イギリス
*ハリフアックス(アメリカ) *フリータウン(アフリカノシェラ・レオーネ)
*43.5月以降、SLとMKS合流。
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________________________________________


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□■□『Uボート・船舶損失資料』■□■


 ただし、かなり書類上だけの数が含まれているので、下に独自に割り出した大西洋作戦に使えるUBの建造数と平均UB保有数を載せておきます。
・【船舶】は、Uボートのみが全海域(大西洋以外も)で撃沈した総数です。
      【Uボート】   【船舶】
    |建造数|損失数|増減数|平均数||損失数|損失トン数|
______________________________|
1939マデ| 64|  9|+55| 54||114 隻|42.1|
     _________________________|
 40前| 13| 14| −1| 52||186|71.6|
   後| 41|  8|+33| 68||287|147.1|
     _________________________|
 41前| 79| 12|+67|123||261|145.1|
   後|123| 22|+101|214||168|71.9|
     _________________________|
 42前|107| 21|+86|302||585|308.0|
   後|131| 75|+56|371||575|318.3|
     _________________________|
 43前|139|113|+26|412||336|187.8|
   後|151|124|+27|415||129|70.7|
     _________________________|
 44前|115|128|−13|442|| 78|47.2|
   後|115|112| +3|412|| 54|30.2|
     _________________________|
 45 | 93|153|−60|424|| 55|27.1|
______________________________|
 総計 |1171 |791|380|274||2828 | 1467.1|
____|___|___|___|___||___|____|


   【データー上】UBの総数  【実際】大西洋作戦に使えた数
   |建造数|損失数|平均数||建造*|平均*|
________________________|
1939 | 64|  9| 54|| 30| 47|
40 | 54| 22| 60|| 33| 44|
41 |202| 34|168||143| 85|
42 |238| 96|336||167|241|
43 |290|237|413||210|302|
44 |230|240|427||117|180|
45 | 93|153|424|| 10|163|
________________________|
総計 | 1171 |791|268||710|151|
*7〜14型UBのみ。 *実働数×3.4で(つまり、稼動率30%として逆算)。

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  ■□■□■□■□■□ 『戦術.技術の戦いa』 1997.5.1 □■□■□■□■
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   きけがわあきお(亀卦川彰夫)
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 『その瞳に、宿したい。- AKP -』 Copyright 1997 AKIO KIKEGAWA