このゲームで初めてヒストリカル.シミュレーション(ボード)ゲームをされた方や、はじめてこのテーマに接する方には、いきなりFin-ナポレオンのルールを使いこなしてゲームをプレイするというのは難しいと思われます。
ルールを読んでみて難しそうと感じた方やプレイしてみてなかなか勝てない、あのルールをどう使っていいのかわからない?どういうことをすればいいのかわからない?と感じた方はこの入門講座をナナメ読みしてみてください。
ここに書かれていることをいきなり全部読んで全部理解しようとすると大変なので、わからなかった部分を探して読むといった風に、少しづつ読んで利用されることをお勧めします。
また、ここに書かれていることは「Fin-ナポレオン」の一般論的なものであって全てではありませんし、全部が正しいとも限りません。
制作者の私が思いもつかなかった戦法や戦略をあなたが見つけ出すかもしれないのです。 ぜひ、Fin-ナポレオンの世界を探究してください。
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:次へ【ナポレオンのキャンペーン級ゲーム】
シミュレーションゲームは扱うゲームスケールによって大まかに次の3つに分けられます。
『戦術級』→小部隊同士の戦闘。
(兵器の特性や戦術運用の再現するモノが多い)
『作戦級』→1つの作戦を扱う。
(その作戦の成否や方向性の可能性を再現するモノが多い)
『戦略級』→戦争全体を扱う。
(その戦争の成否や方向性の可能性を再現するモノが多い)
(普通、軍事面だけでなく経済面もプレイヤーが関与できる)
「Fin-ナポレオン」はキャンペーン級(戦略級)という、1つの戦争の初めから終りまで扱った規模のゲームになります。
キャンペーン級ゲームの醍醐味は、大局的に戦争を扱え、戦争の帰趨を見られることでしょう。1つの戦い(作戦)の成功/失敗の戦争に対する影響や、地域/方面の戦いの重要度/特徴/役割/影響を体感できるスケールなのです。
【ナポレオン時代の戦闘イメージ】
時代(テーマ)別に見るならシミュレーションボードゲームで一番多くのゲームが存在するのは第二次世界大戦の戦いを扱ったゲームで、数が多い分プレイされる機会も多いと思いますが、第二次世界大戦時代の戦闘イメージを持ち込むと戦争規模/技術が全然違うので、少々とまどうことになるでしょう。
第二次世界大戦の陸戦は”線”の戦いでした。
敵味方が何十キロ.何百キロに渡って戦線を引き、それの押し合いへし合いをしていたのです。
例えるなら”風船のおしくらまんじゅう”の戦闘イメージです。
表面にギザギザのついた風船同士が”おしくらまんじゅう”をしたとします。
表面にギザギザがついているのでお互い細かい穴が開いて(戦線に穴が空く)空気が少しづつ抜けていきますが(ギザギザが鋭利だと相手の風船は一気に割れてしまう時もあります→戦線の崩壊。)風船の圧力の大きいほうが小さい方を圧迫していきます。
一方、ナポレオン時代の陸戦は”点”の戦いでした。
一定の大きさの部隊が個々に移動し、敵と出合ったら交戦し、劣勢/士気喪失した側が後退/敗走し追撃を受けてさらに損害を出すというものです。
例えるなら”ビリヤード玉の激突”のイメージです。
フランス軍という玉をプレイヤーが突き、オーストリア軍やプロイセン軍という玉を弾き飛ばしていくのです。
「Fin-ナポレオン」もこのような戦闘イメージを持ってプレイすれば理解が早くなります。
【ウォーゲームの基本活動/手順】
シミュレーションウォーゲームの基本活動は、「移動&戦闘」です。
「ターン」と呼ばれる手順に従っては双方のプレイヤーがこの「移動&戦闘」を行っていき、このターンを繰り返していくことでゲームが進行していくのが基本になります(#補足1)。
#1ターン(このターンを繰り返す)の手順。
Aのプレイヤーが、「移動と戦闘」+ 「補給」.「援軍」等を行う。
↓
Bのプレイヤーが、「移動と戦闘」+ 「補給」.「援軍」等を行う。
普通、1ターンの手順でこの「移動&戦闘」「補給」.「援軍」等を1度に行えるゲームが多いのですが、「Fin-ナポレオン」では6ヶ国が各軍の活動時にどれか1つのみしか行なえません。
各軍の活動時にできる活動は次の中の1つです。
『宣戦布告』→政治的活動をします。
『動員/改革』→軍事組織の拡充や改編をおこないます。
『増強』 →補給や援軍などの維持的活動をします。
『移動/戦闘』→軍事的活動をします。
とイメージしてください。
上記のように「Fin-ナポレオン」ではこれらの活動が1度にできる訳ではありませんから、状況を好転させるために、しばしば『宣戦布告』か『増強』?、『増強』か『移動/戦闘』?選択を迫られる場面になることが多くなります。
『宣戦布告』ばかりでも兵力は増えないし、『増強』ばかりでも戦闘に参加できないし、『移動/戦闘』ばかりだと兵力が消耗していくだけです。
今何が必要か?1〜2ターン先に何が必要になるか?のゲームの流れを判断することが重要です。
#補足1 ===========================
「移動&戦闘」に
『補給』(軍隊の飯。基本的に軍隊は消耗活動をする組織ですから、トイレットペーパーから弾薬まで膨大な補給によって維持されます。補給ルールが無いゲームは、自動的に補給活動が行われているとみなすのが普通です)や、『援軍』(ゲームによって増援.増強等色々な呼び方があります。ゲームの範囲外から到着した部隊や、新しく動員した部隊、損害を受けて戦闘能力を失った部隊を再編成したもの、をゲームに参加させる)等のバリエーションを加えた手順を1パックしたものを、各プレイヤーがターンに行っていくというパターンが多いです。
【フランス軍の活動順番決定の読み方】
手順の中でも、ゲーム展開の先読みのために『フランス軍の活動順番決定』は重要なな意味があります。
『フランス軍の活動順番決定』は、フランス軍プレイヤーがサイをふり出た目の場所がそのターンのフランス軍の活動順番になるというもので、この順番は毎ターン変わります。
ここで重要なのは、今のターンと次のターンの順番のサイ目によっては、フランスがある連合国に対して&ある連合国がフランスに対して「連続して活動できる」状況があるということです。
例えば....あるターンフランスは順番のサイ目を4を出し、次のターンに2を出したとすると
(あるターン)プロイセン→オーストリア→ロシア→フランス→スペイン→イギリス
(次のターン)プロイセン→フランス→オーストリア→ロシア→スペイン→イギリス
になり、フランスはオーストリアとロシアに対し連続して活動できることになります。
ところが、その次のターンのサイ目が5だったら.......
(その次のターン)プロイセン→オーストリア→ロシア→スペイン→フランス→イギリス
になり、逆にオーストリア、ロシア、スペインがフランスに対して連続して活動できることになります。
このように、「連続して活動できる」状況を意識しているか?どうかでゲームでの対応力はずいぶん違ってきます。
ところで、次のターンの順番のサイ目がわからない以上、敵や味方が「連続して活動できる」可能性を予測しておく必要があります。
あくまで予測ですが、その予測を元に「連続して活動できる」ことを前提とした行動を考えれるなら、このゲームにおける戦略/作戦の幅は大きく膨らむでしょう。
『フランス』
今のターン出した順番のサイ目が小さいほど次のターンに連合国に連続して活動される可能性が大きくなり、反対にサイ目が大きいほど次のターンに連合国に対して連続して活動できる可能性が大きくなります。
全ての連合国に対して「連続して活動できる」可能性を考えるのはなかなか大変なので、その段階で重要な役割をしている連合国に対して予測するのがいいでしょう。
『連合国』
活動表で早く活動する国ほど、その国が連続して活動できる状況を予測しやすく、反対に遅く活動する国ほど、その国が連続して活動できる状況を予測しにくくなります。
つまりプロイセンが最も予測しやすく、イギリスが最も予測しにくい国になります。
例えば、あるターンの順番のサイ目が1だった場合、プロイセンは6分の5の高確率で(次のターン1の目さえ出なければ)連続活動できると予測できますが、イギリスはサイ目が何が出ようと関係無く次のターンの6分の1の低確率(サイ目に6が出ることを期待する)でしか自国の連続活動の予測を立てられないのです。
(それはともかく、連合軍プレイヤーは5国が相互協力する必要があるので、個々の連合国の連続活動にこだわりすぎるのも逆効果ですから注意してください)。
『フランス軍の活動順番決定』からの敵味方の連続活動の予測を生かしてプレイできるならあなたはより勝利に近づくことができるでしょう。
【状況分析】
さて次は、状況分析と各国の基本戦略を考えて見ましょう。
フランスと連合軍では交戦能力/勝利条件が違います。
それぞれの観点から、何ができるのか?何をするべきなのか?
をおおまかに把握していないと勝利はおぼつきません。
特に連合軍は一枚磐ではなく、各国の特徴/役割を把握することが大切です。
ベテランのゲーマーなら、史実からある程度これらを推測し実際のプレイを数回経た感触によってその推測を現実方向(史実でそうなった&そうできたからゲームでもそうなるとは限りません。ゲームでは、そうなる&そうできる、そうならない&そうできないことが存在します)へ修正していくことができますが、初心者の方やはじめて接するテーマのゲームだとなかなかそうはできないのが現状です。
この講座によって推測のやり方、考え方(方法の一例にすぎませんが)をとらえてください。
========【状況分析】================================
勝利条件と史実を併せて見れば(あるいは数回のプレイで)、このゲームで勝利するには双方とも最終的に敵軍を打ち破らなければならない.....つまり、軍事力対決の展開になるとわかります。
ですから、ここでは軍事力の比較(軍事力を支える国力と軍事力の敵味方に与える/被る損害数にかかわってくる軍隊の質)に着目すれば、結構的を得た状況分析になります。
ゲームのルール上、ある連合国がフランスの味方になることはありません。
ですから単純に「フランス 対 連合軍5国」の図式で捉えればいいのです。
まず、フランスと連合軍(5国最大値の合計)の国力の比較をしてみましょう。
# フランス / 連合軍
#増強数 3 9
#最大戦力 16 32
連合軍5国は増強数で約3倍、最大戦力で約2倍の優位性があります。
これでは、フランスは連合軍とまともに戦うことはできません。ですが、実際プレイしてみると史実のようにフランスは連合軍を撃破していくことが可能です。
ということは、国力とは別の要素でフランスが優位に立っている&連合国が国力差を生かすことができない要素が存在しています。
それでは、軍隊を構成する軍隊ユニットを比較してみましょう。
このゲームでの軍隊ユニットは全て能力が同じです。
とすると、連合軍との質の違い、フランス軍の強さの秘密は移動ルールと戦闘で先に攻撃できることにありそうです。
ということで、単純ですが、まとめてみると以下のようになります。
「フランス→軍隊の質の差で連合軍5国の国力の優位性をいかに打ち消していくか?」
「連合軍5国→国力差を(発揮しきれない要素を抑えて)生かすことができるか?」
ここらの部分を念頭においてプレイしてください。
【各国の基本戦略-連合軍5国編】
勝利条件からすれば、連合軍はフランスの士気を0にすればいいので、ダラダラ戦闘していればいつかは勝てるような感じもしますが、フランス軍の回復力&高機動力&戦闘での優位性がそれを許しません。油断していたらあっという間に敗北してしまいます。
連合軍5国はフランスより増強数で約3倍、最大戦力で約2倍の優位性がありますが、この国力差は連合軍5国が足並みを揃え、総力戦に持ち込むことで最大限に発揮されます。
初期は守りに入り、徐々に連合軍5国が相互協力して1〜2国が脱落しても他の国がフランスに対抗できる、または常に圧力をかけられる状況を作ってべきでしょう。
『 プロイセン 』
特徴→・順番表の順位が早い。敗走時に回復する率が高い。
増強数/最大戦力が低い。フランスと近い位置。
役割→・連合軍の主力軍の一つなのですが、増強数が1/最大戦力が7なのはフランスと戦うにはかなり辛い数字です。フランスと近い位置もあり攻撃を受けやすく一旦ズタボロにされると戦力の回復がかなり遅れます。
ですが、実際プレイでわかると思いますがオーストリアとロシアの2国の戦力のみでフランスに対抗するのは困難で、どうしても主力戦力としてのプロイセンの力が必要になります。
順番表の順位が早いので先手を打って活動し、フランス軍と戦闘するのではなくフランス軍のペースを乱す&迷いを生じさせる行動をしなければなりません。
戦力の損失に気を付けてください。
フランス軍が本気になればプロイセン軍はあっと言う間にズタボロにされてしまいますが、タダでやられてはいけません。フランスに「今プロイセン軍を攻撃したら、オーストリアとロシアの活動によってもっと状況が悪化するぞ」という状況を突付けることが理想的です。
プロイセン軍のかわりにオーストリアとロシア軍が損害を受けたとしても、彼らの戦力はプロイセンより遥かに早く回復します。
プロイセンは連合国の中で一番運用が難しい役回りかもしれません。がんばってください。
『 オーストリア 』
特徴→・宣戦布告の成功率が高い。増強数がほどほど/最大戦力が高い。
フランスと近い位置。
役割→・連合軍の最主力軍。
フランスと近い位置もあり撃破される機会も多いが、それを補う回復力や耐えるだけの最大戦力数を持っています。
オーストリア軍がしっかりロシアやプロイセンの代りに損害を吸収するorフランス軍に圧力をかけたり足止めをしないと、連合国全体の活動がうまくいきません。
宣戦布告の成功率が高いので、節操無く宣戦布告しフランス軍の注意をオーストリアに向けさせるのも重要な役割です。連合軍の柱的存在です。
『 ロシア 』
特徴→・増強数が高い/最大戦力がほどほど。ロシア領土内での他国軍消耗ルール。
フランスから遠い位置。
役割→連合軍の主力軍の一つですが、フランスと単独で戦った場合ボロボロにされやすい程度の戦力です。フランスから遠い位置なので、防御しやすい反面攻撃しにくいともいえます。
ロシア本国が直接攻撃される状況は連合軍全体がかなり劣勢になっている時が多いので、領土内での他国軍消耗ルールを最大限に生かして確実に防御&フランス軍を消耗させれるようにします。
増強数が高いわりには最大戦力がほどほどしかないので、戦闘がフランス本国へ近付けば近付くほど戦力がバラバラになりやすい傾向があるので注意してください。
ここぞという時の踏ん張り役なので、プロイセンやオーストリアと共倒れにならないようにしてください。
『 スペイン 』
特徴→・順番表の順位が遅い。増強数/最大戦力が最低クラス。フランスと近い位置。
移動不可、戦闘、守備隊値の特別ルール。
役割→・移動不可&最大戦力からして主力戦力にはなりません。
フランスに、どれだけ無駄な力を使わせるようしむけれるか?他の連合国に為に時間を稼げるか?になります。防御担当。
『 イギリス 』
特徴→・順番表の順位が遅い。増強数/最大戦力が最低クラス。
海エリアに関する特別ルール。他国の宣戦布告活動ができる。
役割→・最大戦力が3なので、独力でフランスを降伏させることはできない&戦闘時の耐久力に欠けるので、戦力としてはあまり期待できません。
海エリアにいる限り攻撃は受けないので、ゲリラ的にフランスの小部隊を攻撃する&戦闘誘発等に使うべきでしょう。
イギリス本国は海に守られているので、あまり防御に神経質になるのも考えものです(降伏したら、また宣戦布告すればいいという思考も必要です)。
順番表の順位が遅いので、先手を打って活動することにはむいていませんが、そのターンの状況を見てから活動できることが多いので、連合国全体の危機やチャンスの補助につがるような活動をするべきです。いやがらせ担当。
【各国の基本戦略-フランス編】
『 フランス 』
勝利条件からすれば、フランスは士気値が0になる前に、10VP以上保持する為に連合軍5国中4か3国を同時に和平/休戦状態にする必要があります。
まずは、各連合国を攻略法、危険性の面から見ていきましょう。
「スペイン」
スペインは軍事的にフランスを脅かす事はできませんから、最後に仕留めるという戦略も成り立ちます。いずれにしろスペインにてこずる余裕はありませんが、スペインでの戦闘は結果を予想しにくく、往々にして計画を狂わせがちになります、注意してください。
「オーストリア」
連合軍の柱的存在で、戦力の損失を補う回復力や高い最大戦力数/宣戦布告の成功率はやっかいな存在です。できるだけ先手を打ってオーストリア軍の戦力を削ぎ落としておくことが重要でしょう。
「プロイセン」
プロイセン軍の弱点は増強値/最大戦力の低さです。一旦プロイセン軍をズタボロに撃破してしまえばしばらくは何もできないはずです。撃破する効果の高い国だとも言えます。
「イギリス」
6VP あるイギリスを攻略すれば、勝利の為の攻略する連合国の組み合わせのバリエーションがかなり増加します。
ですが、イギリスは海に守られており、仮にイギリス本国ががら空きでも守備隊値が1あるので降伏させるには少なくとも2ユニット以上を上陸させねばなりません。
ところが海上消耗判定で消耗を免れるのは3分の1の確率でしかありません。確率から考えると2ユニットを上陸させるには6ユニット(の内4ユニットは消耗し、士気が4低下してしまいます)を振り分けなければなりません。イギリス本国に軍隊ユニットがある場合はさらに損害を覚悟する必要があり、非常にギャンブル性と損害を覚悟しなければならない国になります。
「ロシア」
ロシアとは陸続で、フランス本国から2ターンの移動で到達できる距離です。
オーストリアかプロイセンを撃破した後に続けて攻め込むにも都合のいい位置にあります。
ロシア攻略の場合気をつけなくてはならないのはロシア領土内での消耗判定です。
そのためロシアに攻め込むときは一撃(1ターンの戦闘)で和平にできる態勢を揃えてから攻め込むべきです。ロシア領土内で戦闘が長引いてずるずる消耗していくと後のゲーム展開が非常に苦しくなります。
イギリス、ロシア両国共連合国の”最後の砦”的役割があるので、できれば最後にその国を和平状態にすれば勝てる状況にしてから攻め込むようにした方がいいでしょう。
「その瞳に宿したい.AKP」 Copyright AKIO KIKEGAWA E-Mail: akp@nsknet.or.jp |