★2007年篇★

超お手軽映画感想文です。原則として映画館で見たものが対象です。
記憶違い、勘違い、思い込みも、た〜くさんあるのであんまり参考にはなりません。

おだだだ〜JAPANに戻る
年度INDEX

●ヘアスプレー●2007/11/15(TOHOシネマズ錦糸町
2006年 米国映画 監督 アダム・シャンクマン 出演 ジョン・トラボルタ 、 ミシェル・ファイファー 、 クリストファー・ウォーケン 、 クイーン・ラティファ 、 他
『ボルチモア版、三丁目の夕日』と言えなくもないが、残念ながら1960年代のボルチモアのことを全然知らないので、そのへんの面白さがわからない。。
1960年代といえば、宇宙へ向けてロケットが飛ぶわ、大統領は暗殺されるわ、カストロはまだ元気だし、で、いろんなことが起きていた時代。黒人差別の問題も、今よりももっと深刻だった。
と、偉そうに言っても、筆者はその頃まだ子供だったので、アメリカにおける人種差別が実際どうだったのかは、定かではない。字幕ではブラックとなっていたが、ニグロという言葉がポンポン飛び出ていたような気がする。
そんな時代と場所が設定の物語。
とは言っても、そこはアメリカ映画らしく楽天的に歌って踊ってアッというまの2時間。だれるシーンはない。
母親役のジョントラボルタが圧巻!

●ゴアの恋歌●2007/10/26(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1985年 インド映画 監督 シャーム・ベネガル 出演 リーラー・ナーイドゥー、ニーナー・グプター、ナスィールッディーン・シャー 他
日印交流年・インド映画の輝きという催しの一本。
時は1961年、舞台は解放前のポルトガル領ゴア。そこの、ある旧家の人々とその周辺の物語。
葬式あり、結婚式あり、降霊術あり、求愛と惜別の歌あり、落ちる入れ歯ありと、深刻な話の中にも、そこはかとないユーモアがある。
解放前後の戦いがあった頃なのに、結局この映画であらわれる死者は、病死した主人と、昔々の亡霊だけで、血なまぐささは感じられない。
インド軍が迫ってきて動揺する人々の会話の中で「ザビエルのミイラはリスボンに運ぶのか」というものがあり、おお、あのフランシスコザビエルかと、小さな感動をしてしまった。
そういえば、天正少年使節もゴアを訪れているし、急にこの映画が身近に感じられるようになるなんて、あまりに単純な自分の発想にあきれるが、そう思ってしまったんだからしかたがない。
女中(実は主人が、外で孕ませた子供)の、なんとか(名前が長くて忘れた)ちゃんの大きな瞳が印象的でした。誰にでも乳を与える乳牛のような少女です。

●大坂城物語●2007/9/13(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1961年 東宝 監督 稲垣浩 特技監督 円谷英二 出演 三船敏郎、香川京子、星由里子、久我美子、山田五十鈴、平田昭彦、志村喬、市川団子、田崎潤 他
主人公は大阪城。タイトルシーンも堂々の登場です。
人間の主人公は三船敏郎。
市川団子の霧隠才蔵が、忍者なのにいきなり自分の名を名乗ったり、個人的に三船敏郎を助けたり、ちっとも隠れたり忍んだりしていないのが面白い。
晩年の姿しか知らなかった香川京子さん、綺麗です。
盲目の姫君久我美子もなかなか凛々しい。
この会場でカラー映画を見たのはひさしぶりのような気がする。そんなフィルムセンターのファンです。

●戦国奇譚●2007/9/4(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1935年 千恵蔵プロ 監督 伊丹万作
トーキーの具合が悪いのか、音声が聴き取りにくい。
敵対する国に潜入して、その戦意をくじく作戦を実行する二人のサムライ。
千恵蔵プロの作品だから、もちろん主演は片岡千恵蔵だが、いちばん登場するのは鶏さんです。
敵国に潜入し、金の卵をこっそりばらまき、投機熱を国中に蔓延させ戦意を喪失させるという、のんきな展開がおかしい。もうちょっとちゃんとした音声で見てみたいもんだ。

●霜の花●2007/8/22(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1948年 日本映画社 (指導)中谷宇吉郎、他
中谷宇吉郎博士をテーマにした漫画を描いたので、今となってはもう遅いけど取材がてら見てみた。
冒頭の雪の山小屋のアニメが可愛い
ガラスの表面の「霜の花」についての解説映画。
アルコールをガラスに塗った実験では、結晶も酔っぱらってクダを巻くなんていう、徳川夢声のナレーションが愉快。
台本なのかアドリブなのかわからないが、理科の時間に見せられるような、お勉強映像との落差が面白い。

●生きているパン●2007/8/22(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1948年 日本映画社 監督 奥山大六郎
イースト菌やらなにやらパンについてのあれこれについて語る映画。
糸をひくパンは、まるで納豆みたいだった。

●マリン・スノー―石油の起源― ●2007/8/22(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1960年 東京シネマ 監督 野田真吉
海のプランンクトンからはじまって、有機物の堆積で石油ができるという説の映画。
あの頃は、地球温暖化なんて知らなかった。

●号笛なりやまず ●2007/8/22(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1949年 新世界映画社 監督 浅野辰雄
戦後の国鉄を舞台にしたドキュメンタリー。
とはいっても、いくらか演技するシーンもある。
ぎごちなさから素人だと思うがもしかしたらプロの俳優さんかも知れない。
蒸気機関車時代の国鉄マンは真っ黒になって風呂に入るイメージがあるが、今のJRマンはどんなイメージなんんだろうか。ちょっとイメージが思い浮かばない。

●煉獄エロイカ ●2007/8/11(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1970年 ATG 監督 吉田喜重 出演 岡田茉莉子、鵜田貝造、岩崎加根子、木村菜穂、他
今となっては懐かしい感じもする70年代ATG映画らしい作品。
銀座の地下にあったATGで見たのか、池袋の文芸坐地下で見たのか、いずれにしても地下なのはアングラだからか。
公開時から37年たって改めて見かえすと、ロングへアのオネーサンのミニスカートは今も昔も変わらないが、その下のおパンツは昔の方がだいぶ布地面積が広いのだった。
近未来的な無人の駅(工事中の都営地下鉄6号線のような気がする)のトイレは和式だった。
昔は眉間に皺を寄せ、ウ〜ムとうなりながら見たATG映画を、21世紀になって細部を笑いながら見るというのは時間のなせるワザなのか、はたまた観客の感性が変化したのか。
21世紀初頭の現在に制作されている、とんがった作りの映画を、数十年後の21世紀中葉に見直したらやはりこんな感想を持つのか。たぶんその頃はこの世にいないだろうから確かめる術はない。
この会場は必ず高いびきの人がいるので有名だが、足繁く通ってるうちに、最近はどの人がそうなりそうか見当がつくようになってきた。今回も、あのジイサンあたりがあやしいなと思っていたら、クライマックスシーンで「フンガ〜、ンガッ」と間歇タイプの大イビキ。せっかくのオネーサンのいろんな場面を見逃して、眠り続けるのだった。

●アナタハン●2007/8/5(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1953年 日米合作 監督 ジョセフ・フォン・スタンバーグ 出演 根岸明美、中山昭二、宮下昭三、他
太平洋戦争中から戦後にかけてアナタハン島で起きた事件の映画化で、31人の男と一人の女が隔絶された小さな島に取り残されるサスペンス。
全編英語のナレーションがメインで、それに日本語のセリフがかぶさるが、かなり聴き取りにくい。
でもご安心を。受付で英語のナレーションを日本語翻訳したチラシをくれるので、それを事前に読んでおけば大丈夫。
一番印象に残った音声は、ナレーションでもセリフでもなく、劇中何度も流れる安里屋ユンタ。
墜落したB29の部品から作った三線に会わせて、ヤシ酒に酔った人々が歌うシーンは、悲惨な物語なのにほのぼのしてくる。
ほんと、音楽は言葉を越える。

●血を吸う薔薇 ●2007/8/3(東京国立近代美術館−フィルムセンター
1974年 東宝映像 監督 山本迪夫 出演 黒沢年男、田中邦衛、伊藤雄之助、岸田森、他
お盆だからなのか、『特集・逝ける映画人を偲んで 2004-2006』と銘打った上映企画の一本。
この会場オキマリのすぐに眠る観客はきょうも健在。同じ列の2席横に陣取ったオバアさん、場内が暗くなったとたん高いびき。ここは高齢者の観客が多いせいか眠る年寄りが多い。歳をとると眠くなるらしいので大目に見ることにする。何も永眠するわけじゃないし
映画は、カルト的な人気を誇る和製ホラーの秀作ということだが、往年のテレビドラマ『ザ・ガードマン』の夏の怪談シリーズの一本みたいで、どこか懐かしささえ感じられて、全然怖くはないが楽しめた。
事件の謎解きをする女子大の心理学教授が黒沢年男で、地元の怪奇伝説を研究する医師が田中邦衛。どちらも、大学教授や医師には見えないのがご愛嬌。偽モデルとマタギのように見えて、それはそれで説得力がある。
事件を解決して生き残った教授と女子大生は思わず抱き合うのだが、黒沢教授は女子大生のことを「○○君!」と姓でよんでいたのにラストシーンでは「○○!」と名前を呼び捨てでした。いつのまにそんな関係になったのだろうか?それに途中で行方不明になった田中邦衛を誰も探さないのは可哀想である。たしか警備員もいたはずなのだが、この人の存在は終盤なくなってしまった。
チャーリー浜じゃないけど、警備員は何処へ?

●芸者学校●2007/6/22(ラピュタ阿佐ケ谷
1964年 大映東京 監督 木村恵吾 出演 有島一郎、丹阿弥谷津子、柳家金語楼、藤田まこと、林家三平、桜京美、若水ヤエ子、他
【映画×温泉 湯けむり日本映画紀行特集】の一本。
喜劇と思ったら、泣かせる人情ものでした。
幇間の有島一郎は13年間我が子として育てたヒロシを泣く泣く実の親のもとにかえすのだが、別れが悲しくて駅に見送りにも行かない。
それでも動き始めた列車の音にたまらず線路を走って追いかけるが、列車はみるみる遠ざかって行く。
その場にくずれおちた有島一郎は線路に耳をつけ、愛おしそうに去って行く列車の響きを感じるのだった。
このシーン泣けます。まるで1970年代の劇画を彷彿とさせるような一直線な表現が、今ではココロにしみるから面白い。
タイトルの「芸者学校」は有島が芸者養成学校を作るエピソードからきている。
この芸者学校でマッサージ師の若水ヤエ子が、英語教師の藤田まことに「チーズ」の発音を矯正されるシーンで若水節が大爆発する。
若水式「チーズ」の発音は、もちろん「ツ〜ズ」(笑)。

●愛情●2007/6/20(ラピュタ阿佐ケ谷
1956年 日活映画 監督 堀池清 出演 長門裕之、浅丘ルリ子、他
【映画×温泉 湯けむり日本映画紀行特集】の一本。
昭和10年頃のとある湯治場で、一高の受験勉強に励む少年長門裕之と、兄嫁一家と湯治に来ていた女学生浅丘ルリ子はお互いに魅かれる。
ある夜、温泉旅館の近くで火事があり、湯治客は総出で見物するが長門裕之と兄嫁だけはどこか様子が変だった、
そんな長門と一緒に火事を見る浅丘は燃え落ちる家屋を見て「わ〜っ綺麗」と可愛く言うのだが、被災者は泣いているぞ。
まぁいろいろあって悲しい結末に至るのだが、そんなことはどーでもいーくらいに浅丘ルリ子が愛くるしい。
セーラー服にオサゲ髪で実用自転車からパッと飛び降りる図はキュートとしかいえない画面だ。
助監督には神代辰巳の名前がある。
見てよかったと言える一本。

●パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド●2007/6/19(TOHOシネマズ錦糸町
2007年 米国映画 監督 ゴア・ヴァービンスキー 出演 ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、他
ちょっと長過ぎる。館内は途中でウトウトする人が続出。まぁ途中で少々眠っても、映画の内容はわかるから大丈夫。
エンドクレジットも長い。かなりの人が席を立ちますが、最後にワンエピソードがあるのでせっかくだから座っていましょう。でも見なくてもどうってことないエピソードなので、早々と出てもかまわない。
チョウ・ユンファの登場シーンはもう少し見たかった。
というわけで、これでシリーズ3作目。3作分で2作くらいにしたほうがよかったかも知れない。
まさかシリーズ第4作はないよね?

●待って居た男●2007/6/15(ラピュタ阿佐ケ谷
1942年 東宝映画 監督 マキノ正博 出演 長谷川一夫、山田五十鈴、高峰秀子、榎本健一、他
【映画×温泉 湯けむり日本映画紀行特集】の一本。
もしかして苦し紛れ(いい意味でね)かも知れないが、ラピュタ阿佐ケ谷らしい企画ではある。
マキノ正博著「映画渡世・地の巻」によると、この映画はマキノ正博と榎本健一の初顔合わせで、とても和気あいあいとした撮影だったらしい。
朝昼夜の間に5時間休みを入れて98分の映画を15日間でクランクアップしたんだから、たいしたもんだ。
山田五十鈴は晩年のイメージが強かったが、この映画の美しさにはホレボレする。綺麗だけでなくおきゃんな可愛さもあるから、なおいい。
映画は、新婚目明かし夫婦の長谷川一夫と山田五十鈴が湯治場にやってきて、地元の目明かしの榎本健一と事件を解決する捕物帳。
山田五十鈴扮する若妻はちゃんとお歯黒をしている。お歯黒しても美人は美人。そういえば昔はテレビドラマでも(たとえば浪花千恵子なんか)お歯黒してたよねェ。
エノケン目明かしは操作能力は低いが腰も低い。長谷川&山田が事件に関してアドバイスしてくれるとその都度「おしえてくれて、どうもありがとう」とバカ丁寧にお礼を言うのがおかしい。
めでたく事件は解決するが、ひとつわからないことがある。
タイトルの「待って居た男」とは、誰のことなんだろう。何を待っていたのだろうか。

●可愛い花●2007/6/8(ラピュタ阿佐ケ谷
1959年 日活映画 監督 井田探 出演 伊藤エミ、伊藤ユミ、岡田真澄、白木マリ、堀恭子、平尾昌章、他
ザ・ピーナッツの可愛い歌謡映画。
双子のエミとユミは双子の姉妹がいるとは知らずに成長し、二人とも歌手をめざしてオーディションを受けに行く。
そこで運命の出会いをするのだが、この二人ったら「あら、そうだったの」といとも簡単に事実を受け入れるのが面白い。きっと双子だから性格も似てるんでしょう。
映画の主役は、アトミックレコードの無能なディレクターの岡田真澄で、情けないダメ男ぶりがほほえましい。
平尾昌章(今は正晃だけど当時は昌章だったのか?)は岡田の後輩で歌手になりたいと売り込みに行くが断られ、ライバル会社からデヴューして人気歌手になるのだが、このレコード会社名がミサイルレコードなのが、これまた凄い。
冒頭には藤村有広やら、スマイリー小原も登場して、思わずニンマリする。
ラストはエミとユミのコンビ結成リサイタルで歌声をたっぷり聴かせる。
客席からはまるで出港する船に投げるように紙テープが乱れ飛ぶ。あの反応はなんだったんだろうか、今となっては謎である。

●チャンチキおけさ●2007/6/8(ラピュタ阿佐ケ谷
1958年 日活映画 監督 小杉勇 出演 二谷英明、沢本忠雄、香月美奈子、三波春夫、他
おけさといえば佐渡おけさ。
というわけで主人公は佐渡出身の元競艇選手で今は隅田川観光船の船長さん。そこへ弟の沢本忠雄が佐渡から上京してくるが、やがてヤクザの密輸にからむこととなる。そのヤクザの親分と因縁のある兄はモーターボートを駆って、弟の操縦する密輸船を追う。
三波春夫は、二谷英明が常連として通う屋台にフラリと現れ、いきなり小皿をたたいてチャンチキおけさを歌う。またある時は二谷の操縦する観光船に乗り込み、これまた唐突に歌いだし、他の乗客の注目をあびる。
しかして、三波の正体は...。
それにしても、疾走するモーターボートから密輸船に乗り移る二谷英明はかっこいい。
しかし、乗り移ったあと無人のまま走り続けたモーターボートはどうなったのだろう。
交通過密な東京湾で、そのままにしておくのは非常に危険なのでは。
まぁ、ラストはなにごともなかったように屋台から下宿に帰るシーンだから、たぶん大丈夫だったんだろう。

●ナイトミュージアム●2007/3/20(TOHOシネマズ錦糸町
2006年 米国映画 監督 ショーン・レヴィ 出演 ベン・スティラー 、 ロビン・ウィリアムズ 、 カーラ・グギーノ 、 ディック・ヴァン・ダイク、 他
夜の博物館で、展示された者たちが大騒ぎしたら、いったいどうなるんでしょ。想像するだけで面白そう。そう、これは家族で安心して見る事のできる映画。
もうちょっと見る側の想像力を刺激してほしい気もするが、思考停止して見る映画として作ったんだったら、それはそれでしかたがないか。
見終わった後、「感動した」なんて言ってる若者がいたが、そーゆー映画じゃないでしょ。まぁ、感動するのは勝手ですが。
でも楽しい90分を過ごせるのは確かではある。

●ドリームガールズ●2007/2/20(TOHOシネマズ錦糸町
2006年 米国映画 監督 ビル・コンドン 出演 ビヨンセ・ノウルズ 、エディー・マーフィ 、ジェイミー・フォックス、ジェニファー・ハドソン、 他
大ヒットミュージカルの映画化作品。
もちろん舞台は未見なので、それと比較はしない。
前半はややだるい展開で、こんなもんかなと思ってたら、後半の曲、歌、声に圧倒されて思わずスクリーンに身を乗り出してしまう。
とくにエフィ役のジェニファー・ハドソンのグイグイ迫ってくる歌唱は圧巻。
JBを彷彿とさせるエディー・マーフィも、ちょっとお下品なソウルシンガーを演じて楽しませてくれる。
DVDではなくて映画館で見たい映画の一本。

●ユメ十夜●2007/2/1(シネ・リーブル池袋
 2007年 日活 監督/実相寺昭雄 、市川崑 、清水崇 、清水厚 、豊島圭介 、松尾スズキ 、天野喜孝 、河原真明 、山下敦弘 、西川美和 、山口雄大
 画材を買いに行って、ふと今日が映画の日だと気づいた。1000円で見られるサービスデーだ。夫婦50割引ならいつでも1000円で見られるのだが、今日は一人だからダメ。シニア割引なら1000円で見られるがそれにはまだ若(!)すぎる。そんなわけで毎日1日の映画の日はありがたい。
 お目当ての「ユメ十夜」の上映館に行ったらもう受付終了していて、2時間後の回の受付中との表示になっている。ダメモトでカウンターのオネーさんに頼み込んだら、「まだ大丈夫ですよ」と気軽にいれてくれたのは嬉しかった。場内に入ってシートに座ったら「ユメ十夜」がはじまった。
  「こんな夢を見た」
 で始まる、ご存知夏目漱石の短編集「夢十夜」の映画化。新旧の監督のカラーがそれぞれ違っていて面白い。たぶん最年長の市川崑作品が、いちばん初々しく瑞々しいと感じたのは気のせいだろうか。松尾スズキ作品の導入部は、まるでクロサワの「隠し砦の三悪人」みたいな雰囲気で楽しい。短編映画としてもよくまとまり完結していて、笑ってしまいましたよ。
 TOKYO FMのpodcastききみみ名作文庫「夢十夜」も映画とはまたちがった面白さがある。林隆三の語りをiPodで聴くと、それはそれは恐ろしい。

●明治の日本●2007/1/9(東京国立近代美術館フィルムセンター
1898年頃 フランス/リュミエール社
京橋のフィルムセンター7階の展示室で常時公開中。
実は今まで何度もこの展示室に行ったことがあるが今日まで全然気がつかなかった。
ついつい会場奥の企画展ブースに行ってしまうのだが、ちょっと待ってほしい。
入り口を入って3歩行ったら右手の仕切り壁のモニタに注目しよう。そのモニタで「明治の日本」を20分のエンドレスで流している。さぁ、丸椅子に座って100年前の日本にタイムスリップだ!
1895年シネマトグラフを発明したリュミエール兄弟のリュミエール社は、世界各地にカメラマン送り出し、各地の風景や人々を撮影した。
「明治の日本」はこれら一連のフィルムの日本篇だ。
東京や京都の街。通りを歩く人や犬。みんなカメラが何なのかしらないから写されているという意識もなく自然に動いている。中には喧嘩までしている奴もいる。
まぁ中には家族の不自然な食事風景なんていう、やらせっぽいものもあるが、それはそれでまた興味深い。
よくわからなかったのが「神道の行列」というもの。
なにやら神社のお祭りのようで氏子らしき人々が上下姿で歩いている。これだけなら現代でも見かけることもある光景だ。現代でもスーツにネクタイで上下姿なんていうちょっと変なスタイルもあるけど、このフィルムでは上下姿に蝙蝠傘を全員がさしている。とても神事と関係あるとは思えないが、めいめいまじめくさって蝙蝠傘を手にしている。もちろん雨なんか降っていない。
今、我々が携帯電話を手にして歩いている姿を記録され、100年後の人がそれを見て不思議に思うようなものだろうか。
階下で上映の映画を見た人は、その半券で展示室への入場が団体割引料金扱いになるので、大切にとっておきましょう。

●そよかぜ●2007/1/9(東京国立近代美術館フィルムセンター
1945年 松竹映画 監督 佐々木康 出演 上原謙、佐野周二、並木路子 他
公開は戦後だが、作られたのは戦時中のような気がする映画。
というのも、戦後の映画なら焼け跡の中から元気に立ち上がろうという雰囲気が前面に出てくるだろうに、なぜか焼け跡も戦争の話題も出てこない。
戦時中に内務省の検閲にひっかからないように作っていた映画を、戦後の封切りにあわせて今度はGHQの検閲にひっかからないように編集したような気がする。
この映画の中で並木路子が歌う「リンゴの歌」は大ヒットしたが、映画上映のアトラクションとして劇場で歌って客席にリンゴを投げ入れたりしたらしい。
これをきいた群衆が退去押しかけ、リンゴ投げイベントはその後は中止になったとか。
映画そのものより、リンゴが目当てで足を運んだ人もいたのかも知れないが、どちらにしても今よりは娯楽としての映画の占める位置が大きかったのだろう。
「そよかぜ」というのは劇中他の女優が歌う歌の題名。
物語はこの女優さんと上原謙のロマンスが軸になっているし、本当はこの女優さんがメインで「リンゴの歌」はつけたしだったのかも知れない。

●王の男●2007/1/9(TOHOシネマズ錦糸町
2005年 韓国映画 監督 イ・ジュンイク 出演 カム・ウソン、チョン・ジニョン、カン・ソンヨン、イ・ジュンギ、 他
朝鮮王朝の王様だったのに、あまりの暴君ぶりに王の称号を与えられなかった燕山君(ヨンサングン)と、彼の周囲の芸人たちの物語。
酒池肉林におぼれた燕山君ですが、芸能に関しては振興したので、その意味では名君といえなくもないが、すぐに部下は殺すし冷静にみるとやはりまずいでしょう。
美青年芸人役のイ・ジュンギがその美しさで観客を魅了するが、おへそは男性的でたくましいのがアンバランスで愉快だった。
燕山君を演じるチョン・ジニョンが時々竹中直人とだぶってしまったが、なんだか顔だけでなく芸風も似ているかも。
単なる暴君としか扱われることの多い燕山君だが、今回のチョン・ジニョン版燕山君は、内面の葛藤や表面の狂気を画面にあふれさせ、主役の美しき芸人イ・ジュンギよりも強烈な印象を残す。
日本語タイトル「王の男」が画面に出なかったような気がするのだが、気のせいなのだろうか?


年度INDEXに戻る
Copyright (C) 2007 Marutatsu