恩讐の彼方に |
最終更新日 1998.7.27 |
"思い出は常に過去形で語られる"
---おじさんの愚痴は常に「最近の若い者は」で始まる
ここで時計の針をWindows 95が登場した頃に戻してみましょ。あのときPCユーザーとMacユーザーは、追い越した追いついてないと大騒ぎで、端で見てても皆どこかに消えてほしいと思うくらいうるさかったと記憶しています。なぜそんなことになったんでしょうか?PCユーザーとしての私が思うに、確かにWindows 95はWindows 3.1よりは良くなった部分もあったんですが、DOSの新バージョンと陰口を叩かれるくらい内部的には陳腐なOSでした。問題も山ほどありましたし、Macに限らず様々なOSからパクッた部分がダサダサで、相変わらずのMSだなぁなんて笑ってたわけです。実際に、そういう論調の発言や記事も存在していました。その中で、あるWindows系雑誌の特集が話題になります。内容は、素人が見ても事実誤認だらけのMac対Winの比較記事。そして(ここがポイント)主観的なMacユーザー批判。いわゆるMacユーザーは鼻持ちならない気取ったやつが多い、みたいな内容です。この特集記事の種明かしをすれば、まずMacユーザーが突っ込みやすいように不完全な比較記事を書き、サブリミナルとして「Macユーザーは嫌な奴等」というキーワードを後半に押し込んでおく。これで喜ぶ奴と怒る奴に分かれるだろう。間違った記事は、後から小さく訂正を打っておけばよい。目的はMacユーザーのヒステリックな批判を掘り起こすことで、後は「嫌な奴等」という言葉に引っかかったユーザーが勝手に論争を始めてくれるだろう。ま、そんなところです。
おわかりですか?連中の目的は、Macユーザーの冷静さを欠いた発言でPCユーザーの憎しみを煽ることにあったんですよ。くどいようですが、こうした手法は非常に一般的です。それこそご近所の村八分から会社内イジメにいたるまで、場合によっては国家間でも使われます。たとえば「フセインは悪者だ。水鳥だって泣いてるぞ。だからミサイルで皆殺しだ。」なんてね。誰かに悪者のレッテルを貼り一致団結するわけです、問題から目をそらさせたまま。
じゃあ、なぜそんなことをする必要があったのか。目をそらさせたかった問題とは何かというと、もちろんWindows 95の不備に対する批判でしょう。発売前には嘘ばっかりついてましたからね(Windows 3.1と完全に互換性があるとか)。実際、色々と重要な問題がPCユーザーから指摘されていたのに、この不毛な宗教戦争のおかげで吹き飛んでしまいました。問題点を指摘すると「Macユーザーだろう」なんて魔女狩りまで行ってましたし。その後はMacのシェアが低下したため、こうした凶悪なマーケティングは下火になったようですが、インターネットエクスプローラをばら撒くときには、ナビゲータユーザーを信者、IEを批判する人はアンチMSなんて言ってたみたいです。さすがに肝心のソフトがあれではどうしようもなかったようですけどね。
それでWindows 98。はっきり言って、PCユーザーで期待している人なんていませんって。中には「Windows 95+IE4では不安定だったけどWindows 98なら安定するのでは」なんて勘違いしている初心者がいるかもしれませんが、そんなお人好しは少数派でしょう。多くは「バグの修正で金を取りやがって」と腹を立ててるってのが本音です。そんなとき、私が悪魔に魂を売ったマーケティング担当者であったら何をすると思います?そう、焚き付けるわけですよ、Macユーザーを。「腐ってるよな98は」なんて。で、PCユーザーに「ほれほれ、Windowsを使ったこともないMacユーザーがケチ付けてますぜ」と囁くわけです。「98の出来は悪いかもしれないがMacよりはマシだ」なんて答えが返ってくればしめたもの。あとは「今ごろマルチモニタ?」と刺激して「だからMacユーザーはバカ」なんて一人芝居を打っておく。この論争をiMacやMac OS 8.5あたりで熱狂するMacユーザーにタイミング良くぶつけられたら、98の出来の悪さや詐欺的商売からユーザーの目を背けさせることができる。しめしめ。
だからお願いです。Windows 98なんてほっときましょ。95.1でもなんでもいいじゃないですか。使いたい人は買えば良い。MacユーザーとしてのWindows批判は(イロイロと言いたいことは分かりますけど)しばらく辛抱。PCユーザーだって馬鹿じゃないし、インターネットのおかげで問題点などの情報収集も行っているはずです。おかしな情報操作で筋違いの怒りをぶつけられないように、お互い気をつけようじゃあ〜りませんか。どうせ一円にもならないんだから。