篭の中の鳥たち

最終更新日 1998.7.14

"思い出は常に過去形で語られる"

---おじさんの愚痴は常に「最近の若い者は」で始まる


ンターネットのウラシマ効果によってすでに過去となりつつある話題ですがちょっとだけ。なにやらインターネット上の情報の信憑性に関して、大手商用BBSと一部のページで軽い応酬があったようです。議論の内容については、一方が会員でないと読めない場所に書いているので省略。オープンスペースで自由に発言して沢山の聴衆を集めている方々と、居心地の良い会員制クラブで一方的に批判しておられる方々の小競り合いといったところでしょう。詳しくは、火付け役のMacintosh Gardenなどを参照してください。このあたりの淡い火花を対岸から眺めていて感じたのは、インターネットって広まったよなぁという年寄り臭い感動。商用BBSが隆盛を誇っていたのが遠い昔のような気がします。これじゃ私も老けるわけですな。

年若い皆さんの中には(苦笑)、商用のBBSって何?という方もおられることでしょう。まぁ、早い話が審判付きで議論ができる有料のスペース&審査済み情報の集積場&チェック済みファイルのダウンロード場所です。乱暴なまとめ方ですが、まぁそんなもんです。昔は主流だったんですよ、こういうのが。会員は、ある程度信頼できる情報や誰かが作ったソフトウエアを(作者には一円も届かないのに)有料で入手していたわけです。それがインターネットの普及で、自分のページを持つ人が爆発的に増え、ニュースグループが一般化し、無数の掲示板が出現してきたのはご存じの通り。私も有料BBSには長いことアクセスしてなかったんですが、久々に読んでみて内容にビックリ。発言者のパターンが全然変わってないんですよ、昔と。グループ内自己完結ってやつですか。うーん。最初に思い出したのは、長いことカゴの中に飼われていた鳥が、カゴを取り払ってもしばらくは飛び立てなかったという話。この鳥にとってはカゴの中がすべてで、それ以外の場所を飛ぶという概念も勇気もない。もっとも、この鳥にしてもやがてはカゴがないことに気がついて飛べるようになりましたから、コップの中の嵐を楽しんでいる人たちも巣立ちの日を迎える日がくることでしょう。なにしろあちらは読んでくれるお客さんが激減しているわけですし。知識は十分すぎるほどお持ちの方々ですから、それなりの場所で、多くの聴衆の前で自説を展開していただきたいと、本気で思ってます。

そんなことよりもイヤだなと感じたのは「こうあるべき」という思想のようなモノをインターネットに持ち込む輩がいること。HTMLの文法から内容にいたるまで、こうすべきであるとか、あれはやっちゃいけないとか。主張するのは全然問題ないし勝手に実践されるのは構わないんですけど、それに従えと指図される覚えはないわけですよ、私は。現実社会に目を向けても、表現や報道の自由を声高に主張しながら、有害図書だから販売を中止せよと書店に自主規制を強要する人々がいるでしょ。違法ならともかく、誰が決めたわけでも、根拠があるわけでもない事柄に従う義務なんかありません。日本は法治国家なんですから。インターネットも同じじゃないですか。現実世界の法律に照らして違反している場合は犯罪。それ以外は何をやっても構わない。国境を越える問題については法整備を待つ。ほんとうに守るべきルールがあるなら法制化すべくコンセンサスを得る。極端な話、トップページのサイズが1Mバイトを越えるようなサイトだって別に構わないんです。私はそんなページは見ないし、誰かが「とんでもないページ」として紹介するかもしれない。トラフィックの無駄だと抗議する人もいるでしょう。でも、やりたければやればいい。文字コードにShift-JISを使っていようがフレームだらけだろうが好きにすればよいし、有益な情報を発しなければいけないわけでも、根拠となる文献へのリンクを張らなければいけないわけでも、英語を使わなければいけないわけでもない。前向きで建設的でルールを守ったページだらけなんて、まるでどこかの国のマスゲームみたいで気持ち悪いし進歩も止まっちゃいます。誰かが「こうすべきである」と主張して、それを「なるほど」と思えば、あなた自身が従えばいいだけです。むしろ警戒しなきゃいけないのは、「こうすべきである」と主張する集団が力を持つこと。ほっておくと「だからあなたも、こうしなさい」とか「こうしていないあなたは間違っている」と彼らの枠に組み入れられ、勝手な理屈に従わされる非常に窮屈な世界になってしまいます。

もっとも、そういう自警団をきどる連中すら飲み込んでしまうのがインターネットの凄さでもあります。あっちには詐欺師が、そっちには露出狂が、そしてここにはナルシストのゲーム作者がいて、全体を支配しているのは混沌。この世界を囲ってしまうカゴなんて存在しないのかもしれませんね。


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