お好み焼き屋にて

最終更新日 1999.1.31
"思い出は常に過去形で語られる"

---おじさんの愚痴は常に「最近の若い者は」で始まる


ょっとした打ち合わせで某所へ。場所は駅前で時刻は午後三時をまわったところ。小腹がすいたと意見が一致し、近くのお好み焼き屋に二人で入店しました。イカ玉を二つ頼んでガラガラの店内を見回すと、アルバイトとおぼしき店員と、そのお友達3人が和気あいあいと騒いでおられます。

「大丈夫かな」「大丈夫でしょ」

コートを脱ぐ間もなく店員がテーブルへ。ガスの火を付け、テーブルの上に具の入ったカップを二つ。レシートをテーブル横の金具に引っかけると、アルバイト店員は無言で退散。お、イカが多いじゃん。ラッキー。というわけで鉄板が暖まったことを確かめて油をひき、具を流し込んでイカ玉を焼き始めるオジサン二人。BGMの「ころころさいころ」がうるさいっ。止めてくれっ。
「それでさ。ホームページ作ってるじゃん。あれさあ、ジミだよ」と仕事とは無関係な話を始める相手に、
「いーの。趣味でやってるんだから」と反論する私。
「でもさ。オジサンはねーだろ、オジサンは。もっとさ、"しおり、17才、女子高生で〜す。キャイン"くらい書けんかね。シェアウェアも出したんだし」
「それじゃサギだろっ。」
「んなもん、わかんないって。それだったらエロゲー作るとか、コミケに顔出すとか。販売努力ってもんを軽視してるだろ」
「てめー、私の珠玉の作品を〜。それに自慢じゃないがコミケにいったことはないぞ。あれは同人誌を売るところじゃないの?」
「これだから素人さんは困るなぁ...」
などと神をも畏れぬ会話を交わしつつお好み焼きをひっくり返し、ソースをぬってパクパク。
「なんだ、うまいじゃん」
「たしかに。具も多いしお得かも」
接客態度はともかく、味はまともなことに驚きながら、ヘラで切り分けた分を口に運ぶ私。
「相変わらず器用なヤツだな。ハシを使え、ハシを」
「ヘラで食べるのが作法なの。あなたもヘラの裏側をナメるのはやめなさいって」

それにしてもBGMがうるさい。COM郎系ばかりで胸が悪くなる、とこれまた意見が一致し、食べ終えたところで店を出ることに。

「御勘定をお願いします」
レシートを取り、イカ玉が550円なのを確認した私は、得意の暗算で合計が1100円+消費税であることを認識。財布から1000円札と100円玉を探しました。(5円玉はあったかな)なんて考えていると、口を閉じるのが苦手そうな若者がレジにやってきてレシートを受け取り、レジスタの前で完全に沈黙。しばらくしてからカチャカチャとボタンを押し、出てきた言葉が、
「1025円」
おっと、そうきたか。うーん105で割って100倍しても整数になりそうもないな。何を勘違いしているんだか。
「あ、いや、イカ玉二つだから。ね。550円。それが二つだから1100円に消費税。でしょ?」
向こう側が透けて見えそうな目で私を見つめる彼。何か間違えたんだろうかと不安になる私。サービスタイムとかはないよな。サービス券を渡した覚えもないし。
彼はふたたびレジに向かい、先ほどとは違うキーをカチャカチャ。
「1075円」
うう。どうしよう。でもまあ念のため。
「1100円に消費税だから1155円じゃない?」
しばらくボソボソと何かつぶやいた彼は「でも、そう出てるから」とレジを指差し、早く金を払えと無言の圧力。仕方ないので言われた金額を支払い店の外へ。

「どした?」
「いや、ちょっと...」と経緯を説明すると
「馬鹿だなぁ、50円損したじゃんか。これだからお前は困るんだよな」と彼。
「でもさあ、550円が二人分だよ。1025円になるわけがないよ」
「そういうもんだよ。最近の文系の学生は足し算も出来ないってニュースで言ってたぞ」
「うーん。でもなあ。あの男はレジにそう出てるから払えって言ってたけど、たとえば2000年問題に未対応のレジで、結果が100万円だったら、やっぱり請求されたのかなぁ。お好み焼きで100万円。」
「皿を洗うくらいじゃ、おいつかんな」
「だよね。やっぱり年末は、お好み焼きも避けたほうがいいかもしれないね」
「んなわけねーだろ」


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