4月30日 パソコン講師として
今回は俺の本業であるパソコンの講師について語る事になりましたねぇ。以前にも似たような内容を書いた記憶があるので
重複する部分については勘弁して貰うことにしましょう。
俺も今年で自分でパソコン教室を始めて5年目になります。学生時代に学習塾の講師をしながらパソコンを小学生に教えた
時代と社会人時代に新人教育でパソコンを教えていた時代を含めると今年で講師歴8年目って事になりますかね?プロとしての
自覚を持ちつつ日々変化するこの業界の中で新たな知識を蓄えそれを判りやすく説明して行くのはなかなか至難の業です。
時々、パソコンの教室を開きたいとか、講師をやりたいって人に会うことがあるのですが、技術面に頼ってしまって肝心の
教える作業を軽く見ている人が時々いるものです。私が良く言う言葉に「知っているという事と、教えるという事は別」と言う
ものがあります。知識はあってもそれを判りやすく解説し理解させるには別の能力が必要なのです。それは話し方であり、
相手に理解して貰おうという情熱であり、正確で広範囲な知識です。例えば、理解を深める為に実生活に例えて話すと言う手法は
誰でも思いつき、実践していると思います。しかし、その例えを状況に応じて変化させたり別のものにすげ替えたりという
応用力が必要になります。もちろん、例え話しですから、その例にひく内容についても知識も必要となるわけです。パソコンの
操作を知っていれば教えられるなんて易しいものではないんですよね。これはどの職業でもそうでしょうけどね。
例えば入力機器についてちょっと具体的な例を挙げてみましょう。現在のパソコンは多くの操作をマウスに依存しています。
このマウスの操作がうまくいかない人がいるものですが、原因って解りますか?人間の手首というのは生態学上円を描くように
動きます。マウスはコードの出ている方が上なので、円軌道で動かすとある程度のところまで行った時に思った方向へ動かなく
なると言う現象が生まれます。水平、垂直に手首を固めて動かせば良いのですが最初はどうしても意識しなければ出来ない動作
なのです。簡単なようでいて実は触ったことのない人にとっては意識を集中する必要のある部分なのです。それを解っていないと
ポインタを動かすことすら出来ないと思ってしまう訳です。他にもダブルクリックがうまくいかない人もいます。これは力みが
原因でポインタをずらしてしまう事が原因です。車に乗る人なら解ると思いますが、ハンドルを軽く握った方が操作しやすく
咄嗟の時にも対応出来るものです。でも、教習所の頃や初心者の頃はハンドルをしっかり握っていた経験はありませんか?まさに
それと同じ状況なのです。全てが不安でなんでもしっかりやろうとするあまりに力が入ってうまくいかないのです。こういう
場合にはリラックスして貰う目的で他の話しをしたり、冗談を言ってその場の雰囲気を柔らかくするなどの工夫が必要ですね。
あとは受講生の間違った知識や常識を打破する必要とその難しさです。私はWINもMACも教えていますが、この2つが全くの別の
ものと解釈している人がどれだけ多いことか...コンピューターの歴史で見ればこの2つは同種のものであり、その操作の違いは
些末なものはあるにせよ。根本的な内容させ理解すればたいして変わらないのです。OSが違うだけで全くの別の操作を要求されて
いるとするならば、Windows98からWindowsMeやMacOS9からMacOSXに移る事も本来は不可能なはずなんですよ。でも、多少の障壁は
あるにせよ。そんなに極端に変わることはありません。WinとMacだって同じ事です。プログラムを開発する段階では確かに両者の
違いはありますが、ほとんどの人は開発が目的ではなくアプリを使う事が目的のはずです。するとOSの違いなんて本当はどうでも
良いことなんですよね。中には自分のパソコンとアイコンの配置や壁紙が違うだけで「うちのとは違う」なんて人もいる訳です。
そういう人にもきちんと教えて行くには些末な違いを殊更に大きくしてしまうよりももっと根本的な部分の解説に厚みを置くのが
良い授業だと思います。他にも入力に関しての最初の難関であるキーボードですが、ローマ字とかなの2つの入力方法があり、
これをどうした事かローマ字の方が良いと言う人が圧倒的に多いんですよね。かく言う俺も普段はローマ字なのですが、全く経験
ない人なら迷わずに「かな」です。ローマ字入力を推奨するパソコンの出来る人に聞くと「入力が速い」「覚えるキーが少ない」
「上級者はローマ字入力」なんてところが主な回答でしょう。一つずつ論破しましょうか?まず、入力が速いに関してはちょっと
考えれば解りますが「か」と言う文字を入力するのにローマ字はKAと2つのキーを必要になるのに対して、かななら「か」だけで
済みます。これが長文になれば差は歴然です。約半分のキー数で済むのですから同じスピードで打てれば倍かなの方が速い事に
なります。他にもあります。現在のアルファベットの配置はワイヤー式のタイプライター時代のものがそのまま使われいます。
当時のタイプライターは速く入力しすぎると反応速度が悪かった為にワイヤーか絡まる事がありました。故にわざと遅くしか
入力出来ない配置になっているのです。現に日本語の文章を入力するプロの人はほとんど「かな」もしくはその発展版ともいえる
OASYS配置(親指シフト)を採用しているのです。次に覚えるキーが少ないですが、実際に入力するのに必要なのは配置された
全てのキーです。すなわち覚えるキーの数は同じなのです。かなになったら途端にキーの数が増える訳ではないですよね?確かに
ローマ字は同じような配置のキーを良く使いますが、きちんと使うには記号も含めて全てのキーを覚える必要があるのです。
ですから「覚えるキーが少ない」のではなく強いて言えば「良く使うキーが少ない」と言うのが正しい表現でしょう。これとて
良く使うだけで他のキーも使う訳ですから覚えないで良いなんて事にはならないですよね?「上級者はローマ字」に関しては
私もその一人ですのであまり強いことも言えないのですが、パソコンの入力がキーボードになって以来、現在のアルファベットの
キーボードが主流になっていました。日本語をこのキーボードで表現するにはローマ字しかなく、しかも、タイプライターを
使っていた入力の速い人は英文で慣れていました。従って教えるときに「かな」を選択しなかった為に歴の長い人ほどローマ字を
使うことになります。その人から教えて貰った人も当然ローマ字です。現在までその流れが続いていると考えて良いでしょう。
ようするに「ローマ字」入力を強要する人は「自分はそれしか出来ない」というのが理由なのです。それにもっともらしい曖昧な
解説をするために前述のような言い訳が出てくるのでしょう。これは教えて貰う側の論理なく、教える側の論理で事実が歪め
られる顕著な例です。このような事がパソコンの講師をしていると一杯あります。常に生徒側の立場に立った解説とは自分の
知識を押しつけることではないのです。俺は常にそれを意識して毎日の授業をしています。それがプロの仕事であるとも思って
います。このことは他の仕事でも言えるかもしれないですね。