`#TIT = 意志決定論 #PAL2 = [0,31,0] #PAL7 = [31,0,0] #PALe = [19,19,31] #PALf = [25,25,25]` `Je`個人関係と小集団  組織における意志決定および行動を理解するためには、パーソナリティや動 機づけに関する諸概念は必要条件ではあるが、決して十分なものではない。わ れわれの考察の対象である意志決定および行動は、決して孤立した個人のそれ ではなく、組織において個人の属する集団などの組織環境からさまざまな影響 を受けているものである。 `e`個人間相互関係  集団あるいは組織を構成する諸関係の中で最も基本的なものは個人と個人と の間の関係である。個人の環境において最も普遍的に見られるものは他の個人 の存在であろう。個人の行動をひきおこすきわめて重要な要因は、他の個人が かれに対してもっている要求をかれがどのように知覚するかということである。 個人はさまざまな事柄や考えに反応するが、しかし他の個人から孤立した状態 でそれらに反応することはほとんどないし、またそれらの事柄や考えが他の個 人と何の関係ももたないということもまずない。他の個人との出会いの場こそ が大部分の人間行動の場といえるであろう。  個人間の相互関係の基本的な性格を明らかにするためには、一つの行動カテ ゴリーとしての相互作用について注意深く分析する必要がある。そこで以下そ のために有用な概念のいくつかについて検討してみる。 `e`期待  個人間の相互作用関係の基礎は、各人が他の人の行動についてもつ予想ある いは期待である。人間は自分の身のまわりの世界について仮説をもち、それが どのように動くかを予想する。このような予想は、現実の世界で起こっている 事柄について人間が利用出来る情報を組織化することによって得られるもので あるが、この場合の人間の知覚が選別的なものであることは既に指摘した。情 報の組織化のプロセスは、基本的性格としては認知的なもの、即ち人間の知性 と関わりをもつものであるが、同時にそれは感情的な性格のものであり、われ われの感情的経験にも大きく依存する。特に対人間の関係においてはそうであ る。  対人間の関係においては、各人は自分に関わりをもつ他の人間の行動を予想 するための何らかの知識と方法をもっている。このような予想が人間の行動の 明確なガイドラインとなるためには、そのような知識の諸断片はお互いに矛盾 にないものであることが必要であり、また知識や予想が現実の出来事にかなり よく一致したものでなければならない。知識や予想、期待のこのような無矛盾 性への要求は、人間にとって一つの基本的な要求であると考えられる。人間は 外界の出来事についての妥当な仮説を確立することができるようなしっかりと した基礎を求めるものであり、それは人間関係においても同様である。  しかしながら、上述のような無矛盾性あるいは一貫性の要求が満たされない ような場合が生じる。サムプソン(Edward E. Sampson)は無矛盾性かつ有 効な期待に対する障害として次の二つをあげている。 第一に、個人は時によ ってあるいは相手によって異なった行動をとることがよくあるということによ るものである。例えば上司と部下の関係の場合で考えると、部下にとって、上 司は時にはきびしい監督者であり評価者であるが、また時には良き相談相手で あり励まし手であって、部下は特定の時点において上司がそのどちらであるか を予測することができずに当惑するのである。また、相手によって態度が大き く変わるような人は、かれ自信にとっても、また他人の人たちにとっても一貫 した人物像を維持することが困難である。  第二の障害は、われわれが他の人間の行動について予想しあるいは期待する 場合に用いる方法に関するものである。われわれは経歴、外見、年令などのさ まざまな特徴を手掛りにして他人の行動の予想や期待をつくりあげるのがふつ うであるが、このようなかたちの手掛りは必ずしもその人間を正確に記述でき るわけではない。また、例えば年令から予想される行動と経歴から予想される 行動とが一致しないというように、異なる手掛りからの予想や期待が無矛盾的 でないということがある。  以上のように、われわれは他人についてのわれわれの期待をつくりあげるた めの安定的な基礎を求める。そしてそのような期待が満たされないとき、われ われは矛盾する期待に当惑し、そこから生じる不快感、不協和感をまぬがれる ためにそのような人を避けようとするのである。 `e`集団の形成と維持  集団の成立および存続のためには、参加者相互間に何らかの合意がなければ ならない。この合意がなければならない。この合意を基礎にして、社会学者た ちが「われわれの意識」と呼んでいるものとか、集団の結束が生じてくるので ある。この合意は、適当な条件の下では自然発生的に生じると考えられている が、しかし集団が形成されかつ存続するためには、その集団のメンバーとなる ことが個人にとって魅力となるような要因がなければならない。  人間は一般に、一人で行動したのではまったく得ることができないか、ある いは十分なだけ得ることができないものを、集団を通じてならば得ることがで きるという理由で、集団に参加すると考えられる。そのようなものとして、ま ず第一に、さまざまなかたちの社会的満足がある。われわれは誰でも、自分の 好きな人たち、あるいは尊敬している人たちの集団に受け入れられることを喜 び、また自分が受け入れられたいと願う集団から拒絶されるときには、大きな 不快感を味わう。このような受容と帰属感を通じて与えられる社会的満足感、 および拒絶と疎外感によって与えられる不満足感が、人間行動に対して集団の もつ影響力の源泉である。さらに、このような帰属感以外にも集団への所属か ら得られる社会的価値は多い。例えば、メンバーは集団内での特別な役割を果 たすことによって他のメンバーに影響力を行使したり、あるいは尊敬されたり するという満足を追求することができる。また集団は、個人が自己のもつ社会 的技能の有効性をテストする機会を与える。  集団のもつ魅力の第二は、それが個人に対してより大きな環境制御能力を与 えることにある。公式集団でも非公式集団でも、少なくともある種の仕事に関 しては、集団の方が個人よりもより大きな潜在能力をもつということを前提に 形成される。集団のメンバーは、一人では力のあるものに簡単に無視されてし まうような場合でも、集団の場合にはもっと重く扱われるということを意識し ているのである。  しかし、技術および組織によって規定される公式集団と組織内で自然に形成 される非公式集団とが厳密に一致することはまずないであろう。公式集団の構 成において個人間関係の適合性は必ずしも主要な要件ではないから、公式集団 のメンバーと非公式集団のそれとが同一である可能性は小さい。公式集団のメ ンバーのうちのあるものは非公式集団に受け入れられず、また公式集団外から の人が非公式集団に招き入れられたりする。また、両集団の目標や行動規則が 一致することもほとんどないであろう。両者は異なった立場の人間に基礎をお いているからである。したがって、非公式集団の行動が公式組織の目標に対し てどれだけ機能的であるかは、その状況における人間的、技術的および組織的 インプットの組合せに依存するといえるであろう。  以上のような非公式集団が維持され存続するためには、それは社会的要求と 環境的要求の両者を同時に満足させることができなければならない。メンバー に他のメンバーからの社会的支持があるという感覚をもたせることができない ような集団は、環境と対抗するためにメンバーの力を十分に利用することはで きないであろうし、また環境に対する有効な影響力を保持することのできない ような集団はその社会的価値を護ることはできないであろう。集団内における メンバー間の社会的活動と集団の環境対抗活動とは不可分なものである。メン バーの社会的要求の満足はしばしば集団の環境対抗活動に由来するものであり、 逆に集団の環境対抗活動の成果はメンバーの社会的活動の副産物である。  以上では、集団の形成と維持における一つの大きな要因として集団のもつ魅 力あるいはメンバーに共通の利害ということを中心に考えてきたが、ほかにも 考慮しなければならない要因として、集団内のコミュニケーションと相互作用、 集団活動の場所、集団の大きさなどである。共通の利害の認識、コミュニケー ション、相互作用といった要因は、集団形成の初期において合意の形成のため に重要な機能を果たす。手段生活の維持はコミュニケーションと相互作用を基 礎とする。場所と集団の大きさとは他の要因とは質的に異なった働きをする。 それらは集団の活動プロセスを円滑にしたり、あるいは阻害したりする。 経営学全書21 意志決定論、宮川公男著、丸善株式会社 第II部 意志決定論のアプローチ 第8章 行動科学的アプローチ より おもいっきり抜粋 って、そのままやがな〜 ←突っ込み