みどり日記 2003/04/03 NHK「クローズアップ現代」「卵子提供・ある女性の選択」(2003.4.2.放送)を見て考えたこと

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NHK「クローズアップ現代」「卵子提供・ある女性の選択」(2003.4.2.放送)を見て考えたこと

 ある日本人夫婦が、韓国の卵子バンクを通じて韓国女性の卵子を得、夫の精子と提供卵子を受精させ、妻の子宮に戻し、妻は妊娠に成功する過程までのドキュメント番組を見ました。その夫婦は、日本国内で不妊治療を続け、体外受精も4回も繰り返したが妊娠しなかったため、最後の手段として、卵子の提供を求めたといいます。卵子バンクを通じた卵子の費用は、190万円ほどだったそうです。(卵子提供者には60万円の謝礼を払う)

 妻は、日本で不妊治療を続けていくうちに、どうしても子どもが欲しいという気持ちが育ってしまったと語りました。また、まわりから「子どもはまだ?」と聞かれるたびに、悲しい思いをしてきたとも言います。そして、「私の卵子ってそんなにダメなのかしら」と思い悩んだそうです。そして、韓国での提供卵子による受精は成功し、妻は妊娠しました。

 妊娠後、この夫婦は新たな問題に直面しました。子どもに遺伝上の親を子どもに知らせるかどうか、知らせるならば、いつ頃知らせるか、という難しい問題です。厚生労働省の生殖補助医療部会は、卵子や精子の提供を認める代わりに、15歳になれば遺伝上の親の氏名や住所を知る権利を子どもに認めるという方針を決めたところです。子どもは、遺伝上の親を知った時、どのような気持ちになるのでしょうか。おそらく子どもは、心身ともに大きなショックを受けるでしょう。遺伝上の親が、遺伝上の子どもに対して冷たく接する場合には、そうしたショックは一層強まるかもしれません。
 韓国女性の卵子を得ることは、この日本人夫婦にとって一大決心だったと思います。一方で、提供精子による不妊治療は、日本国内で通常の治療方法の一つとして行われています。この落差は何でしょうか?精子よりも卵子の方が、子作りには重要なのでしょうか?あるいは、精子提供には薬物などによる副作用の心配がないし、精子は自分で簡単に取り出すことができるため、時間的にも拘束されないからでしょうか。一方、卵子提供の場合は、提供者が排卵誘発剤等を一定期間接種しなくてはならないため副作用が起きる心配があるし、卵子を取る時にも針を刺すなど痛みを伴います。まれには副作用で死亡するケースもあるかもしれません。しかし、だからと言って、精子提供は通常の不妊治療で行われ、卵子提供は排除されてきた。この落差は、副作用の有無だけで、説明できるのでしょうか?

 私は、卵子提供を積極的に日本で推し進めるべきだと考えているわけではありません。私は不妊治療における、精子と卵子の待遇(重さ?)の違いとは何なのかを、知りたいのです。

 この番組は、韓国での卵子提供の現場や、卵子を得る日本人夫婦の喜びと葛藤を知る上で、とても有益なドキュメントでした。ただし、遺伝上の親を知る権利について議論するならば、提供精子で生まれてきた子どもたちの問題にも言及すべきだったと思います。日本では、50年ほど不妊治療の一つして提供精子が使われてきたからです。

 不妊治療はどこまで許されるのでしょうか?難しい問題ですが、今後もじっくりと考えていきたいと思います。また、不妊治療によって複雑となる親子関係にも注目していきたいです。


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Last modified: $Date: 2008/05/24 06:22:47 $