みどり日記 2004/04/20 みどり日記再開

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本日(2004.4.20.)から「みどり日記」を再開することになりました。

現代は「少子化」と騒がれていますが、マスコミでは、産婦人科医療、とりわけ生殖医療の領域でいろいろな話題が取り上げられました。
○「受精卵診断 男女産み分け」(朝日新聞2004.2.4.夕刊)
 神戸市の大谷産婦人科の大谷徹郎院長(48歳)が、学会申請せずに、男女の産み分け等のために受精卵診断を実施したと発表した。受精卵診断とは、体外受精した受精卵を選別する目的で、受精卵を子宮に戻す前に行う検査のことである。日本産科婦人科学会では、重い遺伝性の病気の場合に限り、受精卵診断をしてよいかを個別に審査するとしているが、これまで認めた例はないという。大谷院長は、学会への申請をせずに、受精卵診断を実施した。 大谷院長が受精卵診断を実施した1例目の女性は、女児の出産を強く希望しており、男児を妊娠して中絶した経験があったという。2例目の女性は、医者で専門知識もある女性で、3例目の女性は染色体に異常が起きることに不安を抱き、検査を求めてきたという。大谷院長は米国で遺伝子の研究をしてきたので、染色体を特殊な染料で色づけして診断するFISH法には慣れていた。そして、欧米では受精卵診断はごく普通に実施されていると大谷院長は述べた。
 なぜ、男女産み分けのためにも受精卵診断を実施したのだろうか。それは、男児を妊娠して中絶してしまうよりは、受精卵診断をして女児を妊娠させる方が、女性の身体に負担にならずによいと大谷院長は判断したからだという。いわば妊娠中絶による産み分けよりも、受精卵診断の方が女性の身体に考慮した方法だと言うのだ。また、学会申請せずに受精卵診断を実施した理由は、学会の基準は厳しすぎ、仮に申請したとしても3例とも却下されるだろうと判断したからだという。
 しかし、大谷院長は「産み分け」は実質的には全国で行われていると述べた。超音波検査などで性別が分かり、望まぬ性であれば妊娠中絶ができる。また、体外授精でも複数の受精卵をつくって元気がいいのものを子宮に戻すのだから、選別と言えるという。
 都内のある不妊クリニックの院長は、男女の産み分けを求める夫婦はおり、「体外受精で男女を判断することは技術的にはごく容易なこと」であり、「水面下で実施している施設はある」と話す。また、人工授精で男女産み分けを実施している施設もある。都内のクリニック院長は、年間数例実施しているといい、「成功率は8割。学会の指針が時代にそぐわない」と言う。精子の重さの微妙な違いを利用するのだが、効果や安全性は疑問で、日本産科婦人科学会は指針で禁止している。
 今回の受精卵診断による男女の産み分けの公表は、ショッキングでだったが、実質的には「産み分け」が全国各地の産婦人科で行われている。私は、どうしても女児が欲しいとか、障害のない子どもを産みたいというカップルの気持ちは理解できる。でも、受精卵診断、人工授精による男女の産み分け、体外受精後の受精卵の選別…、これらは安全な技術なのだろうか。まず、生まれてきた子どもには、選別が行われたことによる影響は及ぼさないのだろうか。さらに、こうした選別が行われることによって、人類はいかなる影響を受けるのか、あるいは何ら影響を受けないのだろうか。また、こうした技術が水面下であるにせよ全国的に実施されれば、男児や女児、あるいは「健康」な児を求める女性への圧力は強まるだろう。生命の選別の安全性と、女性に対するこうした圧力の強まりを、私は危惧する。

○タレントの向井亜紀が米国での代理出産に三度目の挑戦で成功(2003.11.)
 向井亜紀は2000年、子宮けいがんのため、妊娠を継続させれば余命半年と診断され、泣く泣く胎児と子宮を摘出した。しかし、自らの遺伝子を受け継ぐ子どもを産むために卵巣は残し、米国人女性に代理出産を頼んだ。向井の卵、向井の夫である元プロレスラー高田延彦の精子を受精させて受精卵をつくり、それを米国人女性の子宮に戻して妊娠させるのだが、こうした代理出産は成功率が高くない。3度目の挑戦、2人目の代理母でやっと成功し、向井と高田の遺伝子を持つ双子が誕生した。
 代理出産することに喜びを見いだす米国人女性が存在することが、私には理解しがたかった。他人の受精卵を子宮の中に入れて出産まで育てることは、どういう事なのだろうか。それに出産にはリスクがある。とりわけ双子を産むとなれば、代理母の身体には大きな負担がかかるだろう。
 さらに、代理出産の成功率は低いために何度もトライしなければならない。だから、依頼するカップルはもちろん、代理母に対する心身のケアも重要である。膨大にかかる代理出産の費用および渡航費・滞在費。日本で認められていない代理出産を米国など海外で行なうとなれば、お金がないと難しい。また、「借り腹」は倫理的な問題もある。そこまでして、自分たちの遺伝子を受け継ぐ子どもにこだわるのはなぜなのか。日本では代理出産は日本産科婦人科学会で認められていないが、もし認められたならばお金の問題は解消するだろうが、安全面や倫理面の問題はなくならない。
 向井の代理出産には賛否両論がある。私のような慎重派だけでなく、癌の再発のおそれのある向井の、そして子宮を失った女性でも自分の遺伝子を持つ子どもを産む権利があると主張する向井の、勇気ある行動とみる賛成論もある。しかし、産んだ女性が母親であるという日本の慣例に従って、双子の子どもたちは依然として向井夫婦の戸籍はおろか住民票にも登録されていないようだ。何はともあれ、向井夫婦は、代理母夫婦、双子の子どもたちとどのような家族関係を築いて行くのだろうか。私は今後とも注目していきたい。
(2004.1.23.「金曜エンタテイメント 逢いたかったわが子よ」(関西テレビ)、向井亜紀著2004.1.『会いたかった―代理母出産という選択』幻冬舎、向井亜紀オフィシャル ウェブ サイトhttp://www.mukai-aki.com/、参照)


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Last modified: $Date: 2008/05/24 06:22:47 $