ぼくは小さい頃、空を飛ぶのが夢でした。あの空を飛びたい。いろんな国の空を飛びたい。鼻息で空を飛び、世界一周するのが、幼い私の夢でした。未だ子どもで、肺活量も少ない私は、ほんの少し、数十センチしか、体を浮かすことが出来ません。ですが、大きくなったら、きっと自由に空を飛べるだろう。そして世界を駆けよう。そう信じて、疑いもしませんでした。そう、あの事件が起こるまでは・・・。
その事件が起きたのは忘れもしません、1983年の9月1日です。サハリン沖を飛行中の大韓航空機が、悪の組織によって撃墜されたというのです。私は驚きを隠せませんでした。世の中には国境というのがあり、領空侵犯したものは殺されてしまうと言うのです。人は自由に空を飛ぶことが、許されてはいないのです。一つの夢が消えました。その日以来、ぼくは空を飛ぶ練習はしなくなりました。それっきりです。
今、私は、はじめから夢なんて持っていなかったフリをして生きています。この漫画を書いたのは、そんな昔の日々を思い出し、不覚にも涙を流してしまったからです。ぼくは昔のように飛んでみようとしました。で、どうだったかって?その飛び上がった高さは、高校生の垂直飛びの平均程度だったとだけ、言っておきましょう。