必敗を覚悟、と彼は言った。しかし、これは言ってはならぬ言葉では無かったか。
彼と共に、彼を勝たせようとしてきた人々に対して、それは決して言ってはならない言葉ではなかったか。そして、彼自身が抱いているはずの「男の世界」の敗北の美学にも反するのではなかったか。「必敗を覚悟」することと、「必敗を覚悟だったと公言する」ことは、天と地ほどの開きがある。
沢木耕太郎「シジフォスの四十日」より
24年前、都知事選に出馬した、とある政治家(あるいは小説家)を追っかけたノンフィクションの一節です。
そして今回は必ず勝つつもりで出るようです。さてどうなることやら。