静岡県駿東郡長泉町,御殿場線の下土狩駅付近.その滝はある.
藍色に見えることから,あるいは鮎が多くいることから,鮎壺と呼ばれている.かの黒澤明監督作品 七人の侍 のロケ地ともなっている
その昔,長者がいた.しかしこの夫婦には子宝がなかった.そこで神にお祈りを捧げたところ,かわいい女の子が産まれた.二人は縁起の良い名前をその子に名付けた.鶴亀 という.ところが,母親,そして父親と若くして逝ってしまい,また長者の勢力もすっかり衰え,彼女は酒場で飯炊きや接待をして生活を営むようになった.しかし,彼女の美しさと明るさは当時評判となった.
その噂を聞きつけた 頼朝 の子分,工藤祐経 に今の富士の宮まで呼び出され,"おぉ,苦しうない,近うよれ" とあわや餌食にされそうになった.ところが工藤の首を狙った 曽我兄弟 が機会を狙っているらしいという情報が流れ始め,家臣達は騒然となった.そのすきに,鶴亀は逃れ,十里木を越え,鮎壺の滝まで帰ってきた.
すると神が現れ,
"今まで苦労してきたな.お前のことを思うと,このわたしも胸が痛む.この滝の水で,全ての苦しみを洗い流しなさい."
そういうと,神が消えた.そして鶴亀は鮎壺の滝に身を投げてしまったという.