孔雀王にて,裏高野が概念として登場するのは,第四巻「阿修羅」の「阿修羅」の巻にて,
孔雀:裏高野のさらに裏 表の人間が誰一人知らない密法界最強の実戦部隊・・・・・・.お前ら十二神将が全員おそろいとはどういうことだ ?!
の言葉から始まる.
同じ四巻でも,「羅喉」の巻では,
慈空:ところで星海殿・・・,ミイラの一件,座主様ご存じか ?
星海:あの方は高野山の表の指導者・・・裏の世界の事はくわしくご存知ありません.
と,ある.よって,最初から,裏高野が,孔雀王のために最初から用意されているわけではなかった.
孔雀王にて,高野山が舞台となるのは,第十巻「鳳凰」および第十一巻「裏高野」ということになる.下記の漫画では,南海高野線快速鉄道から撮った写真がその後の写真.本当に "そう,すっごい山奥なんだ." 列車は山間をくねくねと進んだ.( 孔雀王第五巻より引用.)
極楽橋からのロープウェイ.ほとんど全ての人がこれに乗る.( 孔雀王第五巻より引用.)
だが,孔雀達はロープウェイには,乗らない.彼等が向かうのは,裏高野.高野山ではないからだ.この下の写真を写す時,降りていく,孔雀の後ろ姿を想像しながら,シャッターを切った.( 孔雀王第五巻より引用.)
多くの戦国武将の墓がある奥の院.上杉謙信の墓.そして,武田信玄,勝頼の墓.信玄の正妻の子供達は,ここでも一緒に葬られていてはいないのだと思った.
高野山に最も帰依していると思われる謙信.それよりも,奥にあるのが,信長の墓.一向一揆への弾圧,比叡山への焼き討ちなど,宗教界にとっては,大いなる脅威であった信長の墓が,奥の院の中でもわりと奥の方にあるのは何故か ? 孔雀王本編では,この辺りをモチーフとして,ストーリーが展開されている.
その昔,高野山は女人禁制であった.そのため,高野山を望む女子は,高野山聖域周辺の女人堂から,拝むしかなかった.
孔雀王,作者,荻野氏はこの実在する女人堂を上手く利用した.この女人堂を男子禁制として,その主として,盲目の美女,"月読" をその主とした.実在するものを上手く利用したと言って良いだろう.
こここそが,正に,孔雀王ファンにとっての,高野山の中でも,聖地の中の聖地と言っても過言でもない.何しろ,孔雀の父:慈覚と母:地蔵菩薩とが結ばれ,愛を育み,生を受け,姉と共に,ここで幼少期を過ごした.
実際には,この井戸に,注意払う観光客はわたし以外いなかった.わたし自身も,前日から,要チェック場所として,地図にマーキングをしておきながら,通り過ぎてから戻って,ようやく見つけた程度であった.
荻野氏は孔雀王の舞台として,"裏高野" を描いたが,何と言っても,そのモチーフは,現存する高野山にある.奥の院の鬱蒼たる雰囲気など.歴史と共に,世界遺産に登録された影響だろうか ? 異教徒の進入を許容する開放的な雰囲気も持つ.
そうだな,全ての孔雀王ファンには,この表があってこその裏がある.人々の熱心な信仰や,雰囲気.人の歴史と自然,それらが相まってこそ,(表) 高野と言えよう.それを直に肌で感じて欲しい.