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[ 豊かな人生のための四つの法則 ]

美佐子さん

Misako san

結城 浩


もしもし?こんにちは。
わあ…何だか、ちょっと、感激です。電話で声が聞けるなんて。
ええ、明日はお休みなので、大丈夫です。
遅くまで話しても大丈夫です。はい、はい。
誰も電話かけてきませんし。
ホームページはよく見るんです。毎日じゃないですけど…。

休みの日はだいたいお洗濯とか、買い物とか、してます。
あっと言う間に休みは終わっちゃいます。
町に出て買い物もするけれど、あんまり、その、すごくイヤで、
ほら、休みの日ってカップルが多いじゃないですか。
だから、べつに、いいんですけど。

学校? いまはOLしてます。大学出てます。
一応、けっこういいとこ出てるんです。勉強好きだったし。
ストレートで。はい。大学の中でも成績も良くって、
教授とかがいろいろ紹介もしてくれたんです、就職。
でも、何だかそのころって、私ぼうっとしてて、
あまり専門のこととか考えてなくて、普通のOLになっちゃって、
後で、ちょっともったいなかったかな、って思ったりして…

変な話してもいいですか。
この間、コインランドリーで、あ、私アパートなんですけど、
洗濯機調子悪くて、近くのコインランドリー、あんまり綺麗じゃなくって、
ヤニのついた灰皿が置いてあったんですよ。
それ見てて、すごく気分が悪くなっちゃったんです。
私、こんなところで何やってんだ、って気になっちゃって。
変ですね、私。

え、あ、田舎は東北なんです。大学から上京してきて。ええ。
父はすごく厳しい人で、厳しいっていうか、がーがー言う人だったです。
何か対話や反論なんてできる雰囲気じゃなくて。

母は宗教に凝ってて、
だから私あまり宗教って好きじゃないんです。
あ、キリスト教が変だって言うんじゃないですけど、
でも宗教って何か嫌いです。

はじめての彼は年下でした。
一時期、とっても仲がよかったんですけど、私、キレちゃって。
大したことじゃなかったんです。
でも、彼、とてもだらしなくて、吸い殻をいつも散らかすんです。
だから、私、あるとき、キレちゃって、
だらしないとか、何とか、かんとか、ひどい言葉を続けて言っちゃって、
それっきり、彼と気まずくなっちゃったんです。

休みの日ってカップル多くて、
べたべたしているの見るのイヤなんです。
夜になってからすごく悲しくなったりして。

不安?不安はいろいろあります。不安ばっかり。
結婚のこととか、将来のこととか。
ときどき私、自分に大きな問題があるんじゃないか、って思ってどきどきします。
重大な欠点があって、結婚できないって思うんです。
何が?って言われても、何か、としか言えないんですけど。

年上の彼がいたこともあります。
彼っていう感じじゃないんですけど、いつも名前で呼んでたので、
彼っていうと別の人のことみたい。彼はとてもやさしかった。

ホームページでお祈りの話を読むのは好きです。
少しほっとした気分になります。何ででしょうね。
でも自分で祈るのはしません。
何だか今の自分に祈る資格なんか全然ないです。
祈るのがちょっとこわいっていうのもあって…
それからお祈りって納得いかないというか。

会社の仕事は別に大変ってことはないです。
同僚の人とはあたりさわりのない話をします。
悩み事とか、そういうプライベートなことは、あんまり。

メールはよく読みます。メル友も何人かいます。
メルマガもたくさん講読してます。
個人アドレスへのメールはアパートで読むんですけど、
メールが来てないと、すごく落ち込んじゃうことがあります。
何だか情けないですね。
こんな話、しててもいいんですか。貴重な時間なのに。

「出会い系」のページってありますよね。
あそこも見るときがときどき…ううん、よく見に行きます。
いろんな人がいるな、とか、
この男性の書き込み絶対変なやつー、とか、
こんなことよく書けるなーとか…見てます。
自分で書いたりはしたことはないです。やっぱりちょっとこわいし。
見るだけ、ですね。

不安なことはたくさんあります。
あと数年で30っていうのがすごくこわいです。
ページで30越したら楽とかおっしゃってました、よね?
でも、ひとりで30越すのはこわいです。
もっと、何かこう、勉強しなくちゃ、って思っちゃうんですが、
でも、生活って答えがないじゃないですか。
何をしてもいい、っていうか…
何をしていいか、私、わからないんです。
何かしてれば気がまぎれるけど…勉強とか。
でも、それでいいのか、って思っちゃいます。

だから、会社に行くことはきらいじゃないんです。
そんなに面白いわけじゃないんですけど、
働いている間はやることがあって、ほっとするんです。
人と話すのはときどき緊張しますけど…。
ほら、私、ちょっと、こう、何ていうか、
ピリピリしているところあるって思われていて。

会社のお酒の席にも行きますけど、苦手です。
男性の同僚から話かけられても、
うまく受け答えができなくて「ああ、つまんない女」って思われてるみたいで。
気軽な会話っていうか、ちょっと男性に媚びる会話っていうか、
若い女の子とか、とてもうまいんです。仕事とかは何にも知らないくせに、
男性の同僚と笑いながら話しているのを見ると、何かヤな気分になります。
ああ、話してて情けなくなります。

一人でお酒を飲むこともあります。アパートでビールとか。ワインとか…。
でも太るのがいやだから、あんまり。

キリスト教は関心はちょっとありますし、何かありそうだ、
とは思いますけど、ピンとはきません。
クリスチャンの人が書いているものを読んで、
いいなあ、と思うときもありますが、
ついてけないなあ、と思うときもあります。
あ、でも、子どもの頃は近所の教会の学校みたいなの、
教会学校っていうんですか、に行ってました。
タマゴをもらったのを覚えています。

テレビはうるさいばっかりで。
見ますけど、ドラマとか、ニュースとか。

ときどき、大学時代の教科書開けたりするんですよ。
マーカで印つけてるところがあって、
教授に評価されたゼミの発表の資料とかもまだとってあるんです。
変でしょ。

田舎に友人はいます。2、3人ですけど。ええ、女性です。仲良しです。
でも一人はこの6月に結婚したんです。
式には出ました。相手は知らない人で、田舎のお兄ちゃんって感じです。
うらやましくはなかったけれど、でもしあわせそうでよかった。
結婚できるってすごいなあって思いました。
私、結婚できるのかな。

田舎は東北です。雪はすごく降ります。
雪って積もるのは年あけてからなんですよ。知ってました?
以前は、正月とかお盆とかに帰っていたんですが、最近はあまり…。
24歳くらいまでは、お見合いの話とかときどき来てたんですけど、
いまはもうさっぱり…笑っちゃいますね。
いるんですよ、母方のおばさんに熱心な人が。
私、美佐子って言うんですけど、
電話かかってきて、「みっちゃん、どう?」って感じ。
結局お見合いはしなかったけど、一回くらいしてもよかったかなあ。

父は、すごく厳しくてがーがー言う人なんですけど、
最近は、年のせいでずいぶん丸くなったんです。
この間、アパートの契約更新のことで田舎に電話したんですが、
そのとき、驚いちゃったんです。
父の話すテンポが遅くて、反応が鈍くて。
私も年を取るんだけど、父も年を取るんだ、
ってそのときはじめて思いました。

妹が一人います。田舎で両親と同居してます。
元気がよくて、要領がいいです。
美人っていうか、可愛い感じです。
短大出て、実家のそばの、何とかっていう会社に勤めてます。
経理業務代行みたいな会社の事務員ですけど、
どんなことやっているかは知りません。
メールですか?
インターネットとかやっているのかなあ、やってるかもしれませんけど、
私はよく知りません。

こないだ、妹から電話が来たんです。
中学校の同窓生名簿のことだったんですけど、
それはほんとの話のついでらしくて、
妹がつきあっている彼がいるって話でした。
私にかまわず結婚しなよ、って言ったけど、
向こうは、はなっからそのつもりみたいでしたね。
妹はとにかく要領がよくて、学校の成績は私の方がよかったけど、
友達はたくさんいたみたいです。

父は妹の方が可愛いんじゃないかな。どうかな。

母? 母は自分が一番可愛いんですよ。
いっつも、自分のことばかり話していて、父のことはほったらかしです。
宗教も、信じられたらいいな、と思うことはありますが、
母のことがあって、宗教には抵抗があります。
母のはキリスト教じゃないです。
もっと父のことを大事にしろよ、って母には言いたい。
母は、家族のことを省みてないです。

今の自分は…あまり好きじゃありません。
もっとこう…しっかりしろ、って言いたくなります。
自分に。

お祈りですか? あ、ええ、いいですよ。
私は美佐子って言います。ううん、全然迷惑じゃないです。
最後にアーメンって言えばいいんですよね。知っているんです、私。

……

アーメン…。うん…何か涙が出てとまりません。
家族のことまで祈ってくださってありがとうございます。
私だって家族のこととか祈ったことないのに、
他人に…ごめんなさい…祈ってもらうなんて変な感じですね。
自分のことも祈ってもらうのははじめてです。
気持ちがいいものですね。
心が軽くなります。

何だか私…身勝手ですか? 私、結婚できるでしょうか?
毎日、ぼんやりとつらいんです。
でも、だから…資格がないって感じがします。
祈る資格もないし。
自分のことをお願いするって、神さまに失礼な気がして。
どうしたら信じられるんですか。

愛って何ですか。
さっき話した年上の彼は、
よく「愛してる、愛してる」って言ってくれました。
こまめに。それはうれしかったけど、でも、
私の中にはどこかでさめているところもあって、
この人、私のこと、わかってんのかな、って。
私のこと知らないのに、
何で愛してるなんて言えるの!
とかキレそうになったこともあります。

え? ああ、そうですね。神様は全部わかっているんですね。
そうですよね。何か、愛するってことは、
私のことを知ってる、ってことですよね。

さっきのお祈りで、結婚のことを祈ってもらえたのはとてもうれしかった。
結婚のことで祈ってもらったなんて、はじめてです。
自分でも祈ったことなかった。

お祈りのページとか、よく読みます。日記も。
神さまの愛ってすごいのかな、とは思うけれど、
つい、私にはうける資格がないって思っちゃうんです。
そういうのがいけないんでしょうか。

あの…さっきの…年上の彼ですけど。
彼には奥さんがいるんです。ええ、今も。
…もう、私は彼と別れましたけど…
そういうのってよくないですよね。
そういうのって、でも、そういうのって、
…ごめんなさい、うまく言えません。

私、自分のことばっかり話してますね。聞き上手なんですね。
こんなに一気に自分のことを話したのははじめてです。
聞いてもらえるっていいですね。
え? あ、そうなんですか。神さまに聞いてもらうんですか。
お祈りをそんな風に考えたことはありませんでした。

生きる目的っていうか、生きがいっていうか、
はりのある毎日を送りたいなってほんとに思います。
勉強とか、お金とかじゃないような気がするんですけど、
わからないです。
そういうのって、誰も教えてくれないんですよね。
当たり前ですけど。私、甘えているのかな。
やっぱり結婚、って思いますけど、よくわからないし。
他の人に生活をあわせるっていうのは疲れるし、
私、急にキレてしまうから。
みんなそれでびっくりするんです。

罪やゆるしって、よくわからないです。私、わからないことばかりなんですね。
自分で考えて、自分でつかんだしっかりしたものって何にもないみたいですね。
何のために大学までいったんだか、って感じですね。はは。

うわ、もうこんな時間。ごめんなさい。長話。
お祈りありがとうございました。
とてもうれしかったです。

ホームページの方も頑張って続けてください。
おやすみなさい。

はい。
はい…それじゃ、おやすみなさい。
ありがとうございました。

(最終更新:1999年10月26日)
結城から:この物語はフィクションです。


[結城浩]

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