フランス語の初歩を学習するページです。サンテグジュペリの書いた有名な本、「星の王子さま」の冒頭を読んで、フランス語を勉強します。
筆者は大学で第2外国語としてフランス語を学んだだけなので、いいかげんな記述があるかもしれません。あと、英文法の知識がある
ことを前提にしてる箇所もあります。
Saint-Exupéry という著者の名前ですが、ここで既にフランス語の音の勉強ができます。ainというのは、フランス語では一つのまとまった音で、分離していません。クチを[i]の形にして(横にひっぱるように)、舌を動かさずに、鼻から抜けるような声を出します。カタカナで書くと「アン」になるのですが、もっとあいまいな感じの音です。鼻母音((びぼいん)と言われます。
Saintの語尾のtは読みません。フランス語では、語尾の子音は読まないことが多いです。しかしたまに読む単語もあるので、単語ごとに個別に覚えるしかないです。なので、Saintの発音はサンになりますね。
Exupéryはエグジュペリと読むんですが、しかしフランス語には単語が母音で始まる場合、前の単語の語尾とくっつけて読むというルールがあります。リエゾンとかアンシェヌマンとか呼んでいます。ここでは、本来読まない子音である t を読むリエゾンというルールが適用されます。 だから、Saint-Exupéryは サンテグジュペリと読みます。
このルールは、アカデミーフランセーズという国家機関が定めています(.....だったはずです、まちがっていたらスマンです)。英語や日本語では、発音に明確なルールが定められていませんが、フランス語にはそういうルールが決まっていて、学校で習うわけなんですね。実は英語にも、ルール化されてないだけで、同じような法則はあります。英語でも通常、語尾は軽くしか発音されなかったりほぼ全然発音されないことも多いです。後ろの単語の母音とくっつくというのも発音上は普通に起こります(英語話す人は意識してやっているわけではないんですが、意識しなくてもそうなります)。それを、フランス語の場合はルールとして決めているわけです。
éという文字ですが、フランス語にはこういった記号のついた文字がいくつかあります。発音上の区別をあらわすものが多いです。日本語の濁点(゛)、半濁点(゜)のようなものですね。ここでは「狭いエ」という発音になります。しかし、最近の若いフランス人はèもéも区別しないで話すらしいのであまり発音の差異にはこだわらなくていいようです。詩を朗読して「ああ美しいフランス語」とか鑑賞する場合には発音にこだわるべきですが、そうでないならこだわることもないです。
ついでですが、êという文字は、発音の区別ではなく、語源をしめします。あとで出てきますが、forêt (フォレ)というフランス語の単語は、英語では forest(フォレスト、森)になります。êという文字は、発音上 eになってしまったのだけど昔は es と書いたんだぞ、ということを示す文字です。
著者の名前はこれくらいにして、次にタイトルを見ましょう。原題は「Le Petit Prince」です。英語では「The Little Prince」となってます。小さな王子さまという意味ですね。この le (ル)というのはフランス語の冠詞の一つです。英語の the と意味は同じですが、男性単数の単語につくのが le です。女性単数の名詞に付く場合は la (ラ)になり、複数名詞に付く場合は、男性名詞であっても女性名詞であっても、les (レ)になります。フランス語では、名詞に男性、女性があるんですね。それにあわせて、冠詞や形容詞、動詞も活用(語尾を変化)しなくてはいけないんです。なぜこうなってるかというと、昔のラテン語(フランス語のご先祖さま)は主語を書かず、動詞の活用だけで主語をもあらわしていた、ということに由来するらしいです。
petit という単語は形容詞です。「プチ」と読みます。語尾の t は読みません。「ti」の発音ですが、英語なら ティ と発音するのが普通ですが、フランス語では チ と読むのが普通のようです。tu という2人称単数の代名詞がありますが、フランス語では「チュ」と読みます。この形容詞は、男性単数につくので petit と書いてますが、女性単数につく場合は petite (プチット)、男性複数につく場合は petits (プチ)、女性複数につく場合は petites (プチット)という綴(つづ)りになるんです。ややこしいですね。
prince という単語は、名詞です。男性単数の名詞です。これが男性単数だったので、これに付く、冠詞と形容詞も男性単数の形になっていたわけですね。発音は、p は プ でいいんですが、r の音が難しいんです。r という文字の発音は各国語でいろんな特徴のでる音で、イタリア語でも特徴的な音になってます。フランス語では、のどの奥をふるわせるようにして出す音、ということになってます。子音というよりは、母音に近い....半母音といったかな? あまりめだたない音です。私のきいた限りでは、「ガ」と「ハ」をあわせたような音に聴こえます。いずれにしてもはっきりした音ではなく、単語によって「ガ」にきこえたり「ハ」にきこえたり、「ラ」にきこえたりします、わたしの耳には。ここでは「ラ」に近く聴こえました。でもあまりめだたない音なので、Prince は「パーンス」という感じに聴こえます。「プラ゛ンス」と書いたほうがいいかもしれませんが、この ラ゛ はめだたないので、わたしには「パーンス」という感じなんです。
in の音は、さきほどの ain と同じく、1つにまとまった音です。分離していません。音は ain と同じ音で、クチを[i]の形にして鼻から抜けるようにする音です。「アン」という音なんですが、「ン」の音をだすために舌をクチの中の上側に付けてはいけません。舌はクチの空間の真ん中に浮かんでいるようにします。ところで、フランスがほこる大怪盗ルパンは、Lupinと書きます。ここでは、 iとnとの結びつきのほうが、pとiの結びつきより優先順位が高いのです。iとnは2つの文字ですが、1つの音をあらわす本来1文字になるべきものだ、と考えてもいいです。フランスのマンガにタンタンというのがありますが、これは Tintin と書きます。t + in という音の結びつきになっていることを確認しておきましょう。
prince の ce は、ス と発音します。語尾のeは読みません(これは英語でもおなじみのルールですが)。
それでは、本文に行きましょう。いきなりイラストがあります。こんなのが。
そして文が続きます。とりあえず、1パラグラフだけ見てみましょう。
LORSQUE j'avais six ans j'ai vu, une fois, une magnifique image, dans un livre sur la Forêt Vierge qui s'appelait << Histoires Vécues >>. Ça représentait un serpent boa qui avalait un fauve. Voilà la copie du dessin. |
最初の単語が全部大文字なのは、本ではたまにあることで、装飾的な理由だと思います。意味的に強調しようという意図はないと思います。
lorsque (ロスク)は、時をあらわす副詞で、英語のwhenに相当します。
j'avais (ジャヴェ)というのは、主語と動詞です。je (ジュ)というのが英語の I にあたる「わたし」という意味の代名詞で、avais(アヴェ)というのは avoir(アヴォワール)という動詞(haveの意味)の、半過去(はんかこ)です。 発音の注意としては、jeの音ですが、舌を上アゴに付けてはいけません。「しゅー」という日本語を発音して、それをその舌のままで「じゅ」という音にしてみてください。avais ですが、aは「ア」、vは英語と同じ「ヴ」、aiというのはひとまとまりで 「エ」という音になります。語尾の s は発音しません。 綴りの注意としては、je という単語は、エリジヨン(ジョンではなくジヨンと発音します)というルールが適用される単語と決まっています。この単語の後ろに 母音で始まる単語が来た場合、j' と書いて eを省略することになっているんですね。avaisは母音で始まっているので、j'avaisと書きます。発音もくっついて、まるで1語のように ジャヴェと発音されます。
いきなり半過去なんて出てきました。 フランス語では、過去のことをあらわすのに、複合過去というのをまず習います。複合過去というのは、過去の1点のことを言うために使います。「過去にあんな事件がありました」とかのときに複合過去を使います。 それに対して、半過去は幅のある過去のことを言いあらわすのに使います。たとえば、12歳であるのは過去の1点ではなく、過去の1年間にわたってのことですので、年齢はふつう半過去であらわします。
six ans (シゾン)というのが、英語でいえば six yearsにあたる言葉です。6歳ということですね。an という名詞は、年齢をあらわします。日本に「ヴァンサンカン」という女性向け雑誌がありますが、「ヴァンサンク」というのは数字の 25(vingt-cinq)のことで、それに anが付いたのが「ヴァンサンカン」です。25歳 という意味ですね。
an という綴りは、ひとまとまりで1つの音をあらわします。クチを「ア」の形にあけて、鼻から抜けるように音を出します。「オン」のように聴こえるはずです。s というのは、複数形としめすためについています。複数をあらわす s は書くんだけど読みません。ここらへんがフランス人はひねくれているというか。(ただ、形容詞などは複数のsがついた後ろに女性を示すeがついて、ズと読むことがあります) フランス語では、文と音の不一致が大きいといえますね。対照的なのはイタリア語で、元はどちらも同じラテン語なのに、イタリア語は発音と音がほぼ1対1で対応しています。個人的にはイタリア語のほうが洗練されていると思います
six (シス)は、数字の 6のことです。ここで、発音をシスと濁ってないように書いたのはまちがいではありません。six ansは シゾンなのに、sixはなぜ シスなのか、というのはフランス語の発音ルールのせいです。フランス語では、母音と母音のあいだに子音が1つだけはさまれると濁る、というルールがあります。six ans は、[i]と[e]という母音にはさまれているので、[s] (ス)という音だったのに、[z] (ズ)という音になってしまったのでした。このルールはめんどうに思えるかもしれませんが、そんなに意識しなくても慣れれば、そういう発音になります。そんなに気にすることないですよ。
ここまで(LORSQUE j'avais six ans,)をまとめてみましょう。six という形容詞が ans という名詞にくっついて、目的語になっています。SVOの文型ですね(Sが主語、Vが述語動詞、Oが目的語)。その文の前に、Lorsque がついているので、「わたしが6歳のときに」という副詞節を構成していることになります。
このあとに主節の文が続きます。 j'ai vu (ジェヴュ)、これは主語と動詞と過去分詞です。je はさっきでてきた「わたしは」です。ai vu は複合過去です。意味は、「見た」。
ai (エ)は、さっきでてきたavoirという動詞の現在形です。avoir (アヴォワール)という動詞は 英語でいえば haveの意味がありますが、使用頻度が高いです。ので、英語における be動詞みたいに、主語にあわせて形が変わります。ところで、oi という綴りはフランス語では「ワ」と発音します。フランス人の講師が、デパートの丸井の看板を見て「ワワ」と読んでしまった、とかいう小話をしてたなぁ。フランス語では w の文字は基本的に使わないみたいですよ。それでは、avoirの動詞活用表を見てみましょう。
avoir 直接法現在 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称(わたし、わたしたち) | j' ai (ジェ) | nous avons (ヌザヴォン) |
2人称(あなた、あなたたち) | tu as (チュア) | vous avez (ヴザヴェ) |
3人称(彼、彼ら、ボビー、ナンシー、車) | il a (イラ) | ils ont (イルゾン) |
フランス語の学習は、かなりの時間を動詞の活用を覚えるということに費やされます。こういう表を覚えるのがフランス語の勉強だったりするわけですね。 テスト前の大学生は、こういう表を書いて覚えたりしているのです。
次に、vu (ヴュ)、これは voir (ヴワ、見る)という動詞の過去分詞です。フランス語では avoir + 過去分詞で、複合過去とよばれるものを形成します。複合過去は上にも挙げましたが、過去の1点を示します。要するに「わたしは見た」とかいう、ただの過去形をあらわすために、わざわざ複合過去を使うんです。あと発音で、u の音ですがこれは1音なのですが「ゥュ」みたいな音です。クチを「ウ」の形(より突きだし気味)にして「ユ」と言ったときの音です。日本語の ウ に似た音もあります(クチは突きだし気味にする)が、ou という綴りを書きます。u の音は日本語のウではない、ということに気をつけてください。ですから、vu は ヴュ という感じの音になります。
その次の une fois (ユヌ フォワ)は、冠詞のune と名詞 foisですが、この文のなかで副詞句の役割をもっています。2つのコンマ(フランス語では virgule(ヴィルギュール) といいます)ではさまれているのは、この句が文章の途中に挿入された句である、ということを示しています。
uneというのは、英語でいえば a にあたる冠詞です。英語で theにあたる冠詞が3つあったように、aにあたる冠詞(不定冠詞)も3つあって、男性単数の un (ァン)、女性単数の une (ユンヌ)、複数は、男性女性のどちらも、des (デ)。発音についていっておくと、un は1つのまとまった音で、oeという音のクチの形にして鼻から抜けるように音をだします、舌を上あごにつけてはいけません。oeという音は発音記号では[oe]と書く1つの音です。クチを「ウ」の形にして突きだして、エの音を発音した感じです。それのクチの形にして鼻母音の発音をすればいいです。 uneは、文章のなかで聴くとユヌのようにきこえますが、その単語単独で聴くと ユンヌといってるみたいに聴こえます。uneの発音は、unとは違って、u + nの音です。eは読まないです。ここで、uの音はすぐ上のvuのとこで書いた音ですが、nの音は、舌を上あごにつけます。unは舌を上あごに付けないのに、こちらは付けるんですね。
fois という名詞は、uneがついていることから分かるように、女性単数の名詞です。意味は、「回数」という意味です。発音的には、oiをワと読み、sは読まない。 une fois全体で、英語の onceと同じです。
ここまで( j'ai vu, une fois, )をまとめると、「わたしは見た、1度」ということですが、何を見たのか、がこのあと書かれています。
une magnifique image (ユヌ マニフィーク イマージュ)は、冠詞+形容詞+名詞です。j'ai vu の目的語になっています。意味は、「あるすばらしい絵」ですね。imageは、実際にかかれた絵のことです。発音では、gn の綴りは「ニュ」と読みます。綴りにgが入っているけど、「ニュ」です。たとえば、シャンペンの生産として有名なシャンパーニュ地方は、Champagne と綴ります。あと、フランス語の単語全般に言える発音ルールとして、発音する最後の母音の発音を伸ばす、というか強くいう、というのがあります。ここでは、magnifique の最後の e (ウー)は読みませんから、最後の発音できる母音はi (イ)になりますね。それを伸ばして読むので「フィーク」という発音になるわけ。imageも同じで、最後のeは読まないので、a (ア)を伸ばして読みます。gの音は、「ジュ」と読む場合と「グ」と読む場合がありますが、後ろにくる母音によって決まります。ここでは後ろにeが来ているので、「ジュ」と読みます。
ここまでで最初の文の骨格が出揃いました。「わたしが6歳のとき、わたしは見たんです1度、あるすばらしい写真を」このあとは、その写真の説明になります。imageという名詞にくっつく形容詞句です。
dans un livre (ダンザンリーヴラ゛) 意味は「ある本の中で」です。dans (ダン)が英語の inに相当する前置詞です。unは英語の aにあたる冠詞で、livre (リーヴガ)が英語のbookです。発音では、an というのは inと似てます。クチを アの形にして鼻から抜けるような音を。sというのはもともと読みませんが、次の単語が母音で始まるので リエゾンのルールによって、ズと読みます。livreは、eは読まないから、iを伸ばして読むんですが、rの音は ガに聴こえました。もちろん実際にガと発音してはいけないんですが、そういう感じでもうちょっと軽い音になるようにしてください。
sur la Forêt Vierge (シューハ ラ フォレ ヴィエルジュ) surは「シュールだね」とかシュールレアリスムのシュールですが、発音はシューハのように聴こえます。意味は、英語の onとかoverの意味です。前置詞で、ここでは livreを修飾してます。英語で Books on Japanというと、日本について書かれた本という意味ですが、ここではその意味で使われています。原始林について書かれた本、ということですね。la は英語のtheにあたる冠詞で、forêtが女性名詞です。上で書いたけど、英語のforestにあたります。「森」という意味です。viergeが形容詞で、英語の virginにあたります。forêt viergeは処女林でもいいですが、人跡未踏の密林という意味です。ジャングルという訳語でもいいかも。でも、Forêtと、最初が大文字になっているということは、もしかしたら有名な地名なのかも...分かりません。
qui s'appelait (キ サプレ)は、関係代名詞(主格)と動詞です。関係代名詞 qui (キ)は、ここではlivreの代名詞になっています。「それは」という意味ですが、それ、というのはlivreを指しているわけです。 s'appelait というのは se (ス)という間接目的語と appeler (アプレ)という動詞が組みあわさったもので、半過去です。 半過去は、(過去で)継続していることを示すため、あるいは時制の一致のために使います。ここでは、時制の一致のためです。現在形を時制の一致のため変換すると半過去になります。 s'appeler (サプレ)という動詞は、フランス語会話を習った人にはなじみ深いものかもしれません。最初に教わる会話が Je m'appele John. (ジュマペル ジョン)「私はジョンです」という文だったりしますから。ここで、m' となっているのは、me (ム)の省略です。「自分は」という意味の間接目的語です。英語でいえば、I call myself John. という文章の myselfにあたります。「..という名前である」という意味です。
フランス語文法では、s'appeler という動詞は、代名動詞という特別な動詞に分類しています。訳すときに、「わたしは自分自身をジョンと呼んでいます」じゃなくて、「わたしの名前はジョンです」と訳す決まりになってるようです。...それって別に意味は同じじゃんと思うかもしれないですね。でも、たとえば、Paul et Marie s'aiment beaucoup. (ポッルエマリ゛ セムボク)という文では「ポールとマリーはお互いをとても愛しあっていた」という相互的な意味がでてきます。こういう文だと代名動詞という特別な動詞に分類した理由が少し分かった気がします...わたしにはこれ以上は分からないです。
ここで、s'appeler (サプレ)は、目的語が前に出てきてます。なぜ動詞より目的語が前にでるのか、と思った人もいるかもしれないけど、「代名詞」が目的語になった場合は動詞の直前に置かれる、というルールがあるんです。seというのは3人称の単数複数名詞を受ける代名詞です。1人称単数のときは me (ム)となるとか、2人称単数のときは te (トゥ)になるとか決まっています。英語でアイラヴユーにあたるフランス語は、ジュテーム、と知っている人もいるかもしれませんが、これをフランス語で書くと、 Je t'aime. です。なんとこの言葉も、目的語が動詞の前に来ていたんですね。aimer (エメ)という動詞が「愛する」という意味で、t' という単語は te (トゥ)の省略形で、「あなたを」という意味の目的語だったんです。
ついでにいっとくと、aimer (エメ)という動詞の活用は、
第1群動詞の活用を覚えるときに使われたりします。
aimer 直接法現在 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
1人称 | j'aime (ジェーム) | nous aimons (ヌゼモン) |
2人称 | tu aimes (チュエム) | vous aimez (ヴゼメ) |
3人称 | il aime (イレム) | ils aiment (イルゼム) |
そのあとの単語で本の名前が提示されてるわけですが、Histoires Vécues (イストワール ヴェキュ) となっています。 本のタイトルを囲っている << >> は、ギュメといって、フランス語の文章で会話を示すときにも使います。英語では、ダブルクォーテーションで囲むし、日本語はカギカッコで囲みますが、フランス語ではこの記号で囲みます。Histoires という単語は、名詞で、「歴史、物語」という意味です。英語では歴史はヒストリー(history)、物語はストーリー(story)と別の単語に別れていますが、フランス語では1つの単語です。語尾の sは複数名詞ということをあらわしていますが、発音しません。語頭のhはフランス語では読みません。フランス語には、「はひへほ」という音がないんですね。(「ふ」に似た音は、f の文字があるからあるんですけど) だから、フランス人には「白い」と「広い」の区別がつかないらしいですよ。日本人が英語のLとRの区別が難しいのと一緒ですね。hの音は、読まないという点ではどの単語も同じですが、単語によってリエゾンするのとしないのがあって、覚えろっていわれるんですが覚えにくいです。(わたしはあんまり覚えてないです)
vécues というのは形容詞ですが、過去分詞が形容詞化したものです。英語でも、過去分詞が形容詞化したものはよくあります。たとえば、leave(失う)の過去分詞lostを使ってある Lost Worlds(失なわれた世界)という映画タイトルとか。vecu (ヴェキュ)は、vivre(ヴィーヴル)という動詞の過去分詞です。vivreは「体験する」という意味なので、vécuという過去分詞は「体験された」という意味になります。「実際に体験された物語」「本当にあった話」とかいう意味のようですね。 vécu の後ろに es (ウーエス)がついていますが、eは女性名詞に付いていることを示し、sは複数名詞についていることを示します。どちらも発音しません。
やっと最初の文のコンマ(フランス語では point (ポワン)といいます)までたどりつきました。訳すと、「わたしが6歳のとき、1度見たことがある、あるすばらしい絵を。それは原始林について書かれた本に載っていた。その本の名前は『実際にあった話』だった。」
Ça représentait (サ ルプレザンテ)は、ça が主語で、représentait が動詞です。 代名詞は上にでてきた image (イマージュ)を受けているので、本来は elle (エル)を使うのが普通の文章です。çaを使うと口語的になります。口語的というのは、会話っぽいという意味です。わたしはこのフランス語の本はカセットブックになっているのを買ったのですが、 カセットでは少年が朗読してました、フランス語で。この文章は少年のおしゃべりと思って読むといいですね。 ça をつかっているので、「あれ」とかくだけた訳語を選ぶといいです。 représentaitは 半過去の動詞です。représent rという動詞は英語にもほぼ同じ動詞がありますが、「表現する」という意味です。何を表現しているかというと、このあと出てくる目的語、です。
un serpent boa (アン セッパン ボア)は、「ボアという種類のヘビ」という意味です。un は冠詞で、serpent は英語でいうサーペントです。名詞で、「ヘビ」という意味。boa は形容詞で、ボアという種類のことらしいです。
ここまで( Ça représentait un serpent boa )の意味は、「その絵は表現していた、ボア(ヘビ)を」。
qui avalait un fauve (キ アヴァレ アン フォーヴ)は、serpentを修飾する形容詞です。qui は関係代名詞の主格で、serpentのことを示しています。avalait は動詞で、時制は半過去です。フランス語には英語の現在進行形がないので、英語なら現在進行形であらわすところでも、現在形を使います。aval rの意味は「飲みこむ」という意味ですが、ここでは、「いままさに飲みもうとしている」という意味が入っています。時制は、もともと現在形だったのが主節との時制の一致のため半過去になっていると考えればいいです。
un fauve は一匹の動物という意味ですが、fauveというのは実は博物館用語です。普通、「動物」をいうときは un animal (アン アニマゥル)とか、une bête (ユヌ ベット)(英語のbeast)とかいいます。ここでは、子供がちょっと得意になって難しい専門用語なんかを使って る気持ちがあらわれてるのでしょうか? ..よく分からないですけど。
結局2つめの文は、「この絵が表現しているのは、ボアというヘビで、それが獣類を飲みこもうとしているとこです」という意味ですね。獣類という訳語は、専門用語っぽい訳語を選んだつもりです。ドウブツ、とカタカナで書いてもいいかもしれませんね。
この文では、「上にあるのがその絵の写しです」といっています。上にある絵っていうのはのことですね。その絵っていうのは、話し手が原始林の本で見たすばらしい絵のことです。
ここのVoilàで始まる1文はメタテクストになっています。いきなりメタテクストといってますが、ここでは、物語と次元のちがう言葉という意味です。 たとえばマンガで、作者がマンガのコマの中にいきなり登場して「そういうこと言っていいのかな〜」とか作中のキャラに対して感想を述べてしまっている場面での作者のセリフは、メタテクストです。マンガの中のストーリーとは関係ない、物語の外ですね。 ここの文では、本の中にいた話し手の少年が、本の外の私たちと同じ地平に出てきて、私たちの読んでる本の挿し絵を指さしているような感じになってます。
なんだか長くなってしまいました...もうちょっとやりましょう。
On disait dans le livre : << Les serpents boas avalent leur proie tout entière, sans la mâcher. Ensuite ils ne peuvent plus bouger et ils dorment pendant les six mois de leur digestion. >> |
disaitは、動詞で時制は半過去です。
半過去の動詞は、特徴的な語尾があります。
-ais (エ) | -ions (イオン) |
-ais (エ) | -iez (イエ) |
-ait (エ) | -aient (エ) |
dans le livre (ダンルリーヴハ)は、in the bookです。
ここまでで、「その本のなかではこう書かれていた」という意味ですね。「その本のなかではこう言っていた」ということですが、誰がその記事を書いていたかは、ここではどうでもいいわけです。雑誌が出典なのである、と伝えられればいいわけで。
: << は、「:」はデュポワン、「<<」はギュメと呼びます。デュポワンは、2つ(due デュ)の点(point ポワン)という意味です。 この記号で、ここからあとは会話ということを示します。会話といっても、ここでは記事の引用ですけど。
Les serpents boas (レ セッパン ボア)は、上にでてきた un serpent boa 「ボアというヘビ」を、冠詞を定冠詞(英語でいうthe)に換えて、複数形にしたものです。名詞serpent が複数形(serpents)になると、冠詞le も複数形(les)になり、 形容詞 boaも 複数形(boas)になります。これは性数の一致というルールです。あと、形容詞が名詞の後ろに来てますが、フランス語では形容詞が後ろにくるほうが普通です。しかし、使用頻度の高いいくつかの形容詞に限っては、名詞の前に置くほうが普通だそうです。たとえば、この本のタイトルである Le Petit Prince で使われている petit (プチ 小さい)は、よく使う形容詞なので名詞prince の前に来ています。ここで 定冠詞lesは、総称の意味で使われています。「ボアというものは」
avalent leur proie (アヴァル レーハ プロワ) は、動詞 + 目的語です。avalentは直接法現在で、「飲み込む」という意味です。直接法現在という文法用語は、「直接法」というのが英語でいう仮定法とかではない、という意味で、「現在」というのは過去形じゃなくて現在形という意味です。ここでは、一般的なことを言っているので現在形なわけですね。leur というのは、英語でいう所有格 theirです。「彼らの」。proieは名詞で、「エサ」という意味。この単語は女性単数です。
tout entière (トゥットンティエーラ゛) は、動詞 avalentにかかる副詞で、「まるごと」という意味です。
sans la mâcher (サン ラ マッシェ) は、前置詞 + 目的語 + 動詞です。sans (サン)は 英語の withoutにあたる前置詞です。 タイポグラフィー(フォント)に興味のある人は、漢字の明朝体にあたるアルファベット書体は セリフ serif というのを知っていると思います。このserif は、ヒゲというか、明朝体でいうハネのことです。書道で「寸」という漢字を書くと縦棒を書くときハネますね。あれのようなものです。 で、日本語のゴシック体にあたるのは、サンセリフ(sans serif)といいます。「ハネを欠いた」という意味です。ここで sansが使われていると言いたかっただけです...。その次、la というのはmâcherの目的語です。leur proie を受けている代名詞です。proieが女性単数の名詞なので、代名詞も女性単数のものが選ばれていることがわかります。mâcher は「噛む」という意味です。動詞の原形で使われていますが、フランス語では、動詞の原形を... ここ、よく分かってないです..。 フランス語では、前置詞のあとに、動詞の原形(フランス語文法では不定詞といいます)を置ける、ということですね。英語でいえば、without chewing it でしょうか。
ここまでで、「ボアというものは自分のエサをまる飲みしてしまうものだ、噛むことなしに」となります。
なんか、ここでやる気がなくなりました。授業ではここらへん遅刻してきいてなかったし...このあとの説明はいいかげん。
Ensuite (オンスイット) は英語でいう、then, afterwards, next, subsequentlyなどの意味があります。
ils ne peuvent plus bouger (イルヌプヴォン プリュブジェ) は、英語でいう they cannot eat more ってとこかなぁ。 ne..plusが否定詞で、「全然..ない」。普通は、ne..pas(ヌ パ)で否定をあらわします。ne..plusはそれを強めた、より強い否定。neとplusのなかには動詞か助動詞をはさみます。ここの助動詞は、pouvoir(プヴォアール)、「できる」という意味です。そのあとに不定詞(動詞の原形)がきて、何ができるのか、を示します。bougerは動詞で、「食べる」。まとめると、ils(彼ら)とはボアのことで、ne peuvent plus で「全然できない」、bougerが「食べる」だから、「ボアは一口も食べられない」
et (エ) は andです。
ils dorment pendant (イル ドルム ポンドン) 彼らは寝る
les six mois (レ シ モワ)..? 6か月
de leur digestion (デゥ レーハ ディジェスチオン) 彼らの消化に
J'ai alors beaucoup réfléchi sur les aventures de la jungle et, à mon tour, j'ai réussi, avec un crayon de couleur, à tracer mon premier dessin. Mon dessin numéro I. Il était comme ça : |
J'ai alors beaucoup réfléchi (ジェ アロー ボク フフレシ) は、alors と beaucoupが副詞なので除いて考えると、j'ai réfléchi で、複合過去です。「ぼくはじっくり考えた」alorsは、... beaucoupは英語のwellにあたります。réfléchiがもともと「よく考える、熟考する」という意味の動詞ですが、beaucoupでさらに強めています。「そこで、ぼくは
sur les aventures de la jungle (シューハ レ アヴァンチューハ ドゥラジャングル) は、surは英語の onで、「について」です。lesは冠詞、aventure は、英語でいうadventureです。「冒険」。日本語では、「ひと夏のアドベンチャー」「ひと夏のアヴァンチュール」というとかなり違う意味になりますが、もともとは同じ単語だったんですね。de は英語の of。「ジャングルでの冒険について」aventuresと複数になっているのは、数々の冒険ということでしょう。
et, à mon tour, (エ アモンテューフ) 「そして、今度はぼくがするばんだった」 à は、at。mon は、my。tourは、turn。「今度は僕の番で」
j'ai réussi (ジェ レウシ) 「ぼくは成功した」何に成功したか、については文のこのあとで書かれています。
avec un crayon de couleur (アヴェク アンカイヨン ドゥクラー) これは、前後を ,(コンマ、フランス語ではヴィルギュールといいます)で囲んであって、挿入された句ということを示しています。réussi à inf と続いているのですが、そこに挿入されています。意味は、 with a color pencil です。avecというのは withという意味の前置詞。crayonが鉛筆。couleurというのは名詞で、「色」。
à tracer mon premier dessin. (ア タハセ モンプホミエ デッサン) àというのはここでは、reu'ssi に直接つながっている単語です。tracerは動詞の不定形で、「描く、線を描く」という意味。reu'ssiとつなげて、「描くことに成功した」わけですね。何を? それは、これからでてくる tracerの目的語が示します。mon premier dessinは、my first sketchです。プレミアというのはほとんど日本語になっていますが、firstというのが最初の意味です。ここまでで、「私の、(それに関する)最初の絵を描くことに成功した」
Mon dessin numéro I. (モンデッサンニュメゴアン) My sketch number 1.
Il était comme ça (イレテコムサ) It was like that.「わたしの絵その1は、こんなふうだった」と書かれたあとに、さし絵が入ってます。
とりあえずおわり。最後のほうがまとまりないですけど。