CDラジカセが、壊れた。
CDトレイが、閉じたり開いたり、勝手にするし、
CDを聞いているとうまくいったかと、「ぎゅいーーん」と、
ものすごい高速回転を始めて、ぶー、プツンと電源が切れる。

 その所為か、ラジオも受信できなくなってしまった。
買ってから7、8年経っているので、もう寿命だと思う。

 それで新しいラジカセを買おうと思い、近所のスーパーへ。
たくさんのラジカセや、ミニコンポを見て、カタログを持ちかえる。
カタログを見ながら、研究することにした。
 結果、MDとCDの内蔵されたミニコンポが、結構気に入った。
デザインも良く、大きさも手ごろだし、いい音が出そうだし。

 翌日、別の店に見に行く。でかいコンポから、流行の曲が流れている。
なんだか、音がいい気がした。しかし、でかいのはちょっと、、、
と思い、目指すミニコンポの前へ、そして、音を出してみる。
しょぼい、、、。音がしょぼい。イントロの部分とか聞こえないし。
やっぱ、音がいいほうがいいなぁ。デザインも重要だけど、音がこんなに
わるいんじゃなぁ、、、。
 おしゃれなミニコンポより、でかいのコンポのほうが、音がいいようだ。

 コンポを比較しだし、以下の仮説にいたる。
・どうやら、スピーカーのでかいほうが、低い音が、出るらしい。
・出力W数のでかいほうが、いいようだ。
・複数のスピーカーに、複数のアンプを備えているほうが、いい音のようだ。

 CD3連、MD3連のチェンジャーが付いて、スピーカー80W出力で、
かっこいい派手なディスプレイで、待機電力を押さえたコンポに、決めようか
と、思った。

 そのとき、商品棚の一番端っこの一番したの段に、ちっこくて、地味で、
現品限りで安いCDプレーヤーが、あるのが、目に付いた。
こういうチッコイスピーカじゃ、たいした音も出ないんだろうなぁ。
低音部なんか、聞こえないんだろうなぁ、比較にならないくらいに、、、。
まぁ、でもその差を実感するために聞いてみっか。

 しかし、どうしたことか、そのCDプレーヤーのスピーカーから出る音は、
コレまでに聞いたどのコンポよりも、済みきっていて、腹に響くビートといい、
ヴォーカルの美しさといい、抜群にいいのでした。
うぁー、なんなんだ、コレは。
 そのとき、自分がたてた仮説は、一気に覆されたのでした。
音が良いということは、スピーカーの大きさでも、出力W数でも無く、
こういうことなのだ、、、。

 もちろん速攻で、そのCDプレーヤーを買った。

 このプレーヤーは、無音部分が、ホントに無音なんです。
だから、小さな音もキチンと再生できる。そういった音がクリアに
再生できることが、豊かな音を作り出しているのだと分かった。
フィルターを通し、補正された音ではなく、ナチュラルで、心地よい音。
飾らない、威張らない、誇張しない、地味なそのCDプレーヤーこそが、
飾らない、威張らない、誇張しない、もっともいい音を再生できた。

 きっと、このメーカーには、音の職人がいるのだと思う。
技術力だけで、このクオリティーを作るのは難しい。
音に対するこだわり、それを貫くポリシー、それを支持するユーザーが、
いて始めて、このプレーヤーはできたのだと思う。

 確かに今は、いいものが売れるとは、限らない時代だ。
見かけが派手で、高い数値が添えられている商品に、目が行きがちだ。
でも、その一方でこうした「いいもの」を作りつづけている人達がいる
と思うと、なんだか心が温かくなった。

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