\m[select,div1]
\u[cave.jpg,ruin.jpg]
\m[clear]
\i[select,img1]
\i[hide]
\.u
\c
ここはどこだ?\w9\n
なぜこんなところにいるんだ?\w9\n
何も、見えない。\w9\n
何も、聞こえない。\w9\n
只そこに闇だけがある。
\p\c
とりあえずだ。\w9\n
状況判断には観測が先行する。\w9\n
何か、照らすものは持ってなかったか?\w9\n
\a[1,たいまつ]\n
\a[2,ライター]\n
\a[3,懐中電灯]\n
\.a
\t1
そうだ、確か、バックパックに松明があったはずだ。\w9\n
あった。\w9\n
質量、外形、素材、紛れも無く松明だ。\w9\n
しかし・・・。\w9\n
\p\c
火をつけるものが無い。\w9\n
何たる不覚!\w9\n
ショックのあまり、松明で頭を打ち、死んだ。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
\t2
\g[cave1]
\t3
\g[ruin1]
そうだ、確か、ポケットにライターがあったはずだ。\w9\n
胸ポケットには、入っていない。\w9\n
あんなプラスチックの容器に発火燃料を目一杯詰め込んで
胸ポケットに入れおくなんて、正気の沙汰とは思えない行動だ。\w9\n
左ズボンのサイドポケットからライターを取り出して、火をつけた。
\p\c
\i[select,img1]\i[open,cave.jpg]\i[fadein]\w9
ぼっ!と灯があたりの岩肌を照らす。\w9\n
ここは・・・洞窟か?
\p\c
なぜ洞窟の中にいるかなんてことは、もう分からない。\w9\n
この右足の痛みと頭痛はその理由のいくらかの説明にはなるかもしれないが、
今はそんなことを考えている場合ではない。\w9\n
どうも向こう側に、なにか光るものが見えたからだ。
\p\c
あれは・・・\w9\n
\a[1,宝の山だ!]\n
\a[2,虎だ!]\n
\.a
\t1
宝の山だ!\w9\n
私は、宝の山を見つけて一生幸せに暮らしましたとさ。\w9\n
めでたしめでたし。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
\t2
\g[cave2]
虎だ!あれは虎の牙だ!\w9\n
実に、虎が出てきた。\w9\n
どうも機嫌も腹具合もそれほどよくないらしい。\w9\n
ぐぐぐ・・・という低いうなり声が肺腑に響く。
\p\c
獣なら火を怖がるはずだ。\w9\n
上着を脱ぎ、火をつけて前に放り出した。\w9\n
畜生め、虎はひるんでいる。\w9\n
この隙に・・・\w9\n
\a[1,逃げろ!]\n
\a[2,戦え!]\n
\.a
\t1
そうだ、この隙に逃げるべきだ。\w9\n
虎と視線を合わせながら、ライターを後ろ手に投げた。\w9\n
かつーん・・・・・・・・\w9\n
落ちるまでに、10mは飛んだだろう。\w9\n
逆位相で聞こえる反響音はほとんどない。
\p\c
逃げられる可能性は高い。\w9\n
視線をそらさずに、一歩、二歩、三歩。\w9\n
じり、じりと後退する。\w9\n
十五歩、十六歩、十七歩。\w9\n
ぐっ、と踏みしめた左足が滑った。
\p\c
ライターだ!\w9\n
にわかにバランスを崩し、右手で岩壁を掻く。\w9\n
好機あり、と敵は岩を蹴って跳び出す。\w9\n
私は何とか態勢をもちなおしてクラウチング・スタート。\w9\n
しかし・・・虎と競走して勝てるものなのだろうか?
\p\c
「そういえば、虎は火の輪くぐりをするなあ。\w9\n
そんなことをつぶやきながら、走る。\w9\n
敵は、駆ける。\w9\n
いざとなったときの爆発的な筋力の開放は、われながら驚くべきものだ。\w9\n
右足を負傷してたのではなかったのか?\w9\n
次第に岩壁に苔がむし、外の光が見えた。
\p\c
\g[cave3B]
\t2
\g[cave3]
闇に慣れた網膜細胞に陽の光は強すぎる。\w9\n
オーバーフローした映像は外世界について何の情報も与えてくれなかった。\w9\n
\a[1,走り抜ける]\n
\a[1,走り抜ける]\n
\a[1,走り抜ける]\n
\.a
\t1
そうだ、今は走り抜けなければならない!\w9\n
勢いよく飛び出したその足元に、期待した手ごたえはなかった。\w9\n
身長の三倍ぐらいの高さを転落したあと、斜面を転がって、崖から空中に投げ出された。\w9\n
崖の下は、河だ。\w9\n
私の体は飛沫を上げて水中に沈んだ。
\p\c
\i[select,img1]\i[fadeout]
助かったのだろうか。\w9\n
私は何かベッドに寝かされているようだ。\w9\n
すねから、腕から、胸から、激痛がする。\w9\n
ひどく寒い。\w9\n
目を開ける気力もない。
\p\c
「安心、するといい。\w9\n
声が聞こえた。\w9\n
私は、安心した。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
た、戦う?\w9\n
何をばかな・・・いや、冷静に考えよう。\w9\n
足元に散らばっている道具に猟銃がある。\w9\n
私は探検隊員だろうか?\w9\n
じろ、と虎の様子を確認してから、注意深く視線を天井のほうに上げた。\w9\n
吸い込まれるように、暗い。
\p\c
対峙は続いている。\w9\n
燃え上がる炎を挟んで、こちら側と向こう側。\w9\n
敵はまっすぐこちらを見据えている。\w9\n
どれくらいの時間見合っていたのだろうか、ふと、敵は目をそらした。\w9\n
\a[1,いまだ撃て!]\n
\a[2,いまだ逃げろ!]\n
\.a
\t1
とっさにしゃがみ、猟銃を拾って構えた。\w9\n
しかし獣の俊敏はそれよりはるかに勝っていた。\w9\n
あたたかい血が噴出し、虎の牙を染めた。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
\t2
とっさに逃げ出したい衝動に駆られたが、足は動かなかった。\w9\n
しかし、虎はそのまま向きを変えて、洞窟の奥へと歩いていった。\w9\n
呆然と立ちすくんでいるうち、次第に火は燃え尽きて消えた。\w9\n
ひゅうっ、と後ろから風が吹き、灰が舞った。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
ふむ、懐中電灯があったはずだ。\w9\n
ごそごそ、と懐を探す。\w9\n
あった、懐中電灯。\w9\n
・・・なんでこんなものが懐に入っているんだろう。
\p\c
いくら懐中電灯とはいってもこれを懐の中に入れているなんてのは。\w9\n
まあいい、渡りに舟とはこのことだろう。\w9\n
スイッチを入れると、ぱっと足元が照らされた。\w9\n
\i[select,img1]\i[open,ruin.jpg]\i[fadein]\w9
ここは・・・廃墟か?
\p\c
床は粉塵で一杯で、手袋にもうっすらと埃がかぶっている。\w9\n
一体何時間倒れていたのだろうか。\w9\n
とりあえず立ち上がろうと上体を起こしたとたん、舞い上がる粉塵が目に入る。\w9\n
\p\c
目をぱちぱちさせて涙を出していたそのとき。\w9\n
どこからか「ゴトリ」という音が聞こえた。\w9\n
あの音は・・・。\w9\n
\a[1,天井の崩れる音だ!]\n
\a[2,誰か人がいる音だ!]\n
\.a
\t1
あれは、天井の崩れる音だ!\w9\n
どこだ、どこだ、どこだ、どこだ、どこだ、・・・上かっ!\w9\n
ぐっ、と床を蹴って部屋から飛び出した。
\p\c
ガラガラガラ・・・。\w9\n
避けた。\w9\n
わけではなかった。\w9\n
回避行動が常に成功するとは限らない。\w9\n
私はもはや瓦礫の海に沈んでいく他なかった。\w9\n
THE END\w9\p\g[initial]
\t2
\g[ruin2]
「そこに、誰か人がいるのか?\w9\n
呼びかけてみたが返事はない。\w9\n
しかし目を拭って見てみると、入り口から見えている影は、確かに人の形をしている。
\p\c
とすると、返事のない理由は一体なんだろうか。\w9\n
\a[1,実は刺客が隠れている]\n
\a[2,実は彫像が立っている]\n
\.a
\t1
刺客・・・だな。\w9すなわち、何らかの理由で私は今追われの身だ。\w9\n
私が正しいのか、彼が正しいのかはまだ分からないが、
それを知るためにもことはとにかく逃げのびなくてはならない。\w9\n
な、何か・・・武器は?\w9\n
懐を探ると、拳銃と薬莢がでてきた。\w9\n
一体、何者なんだ?
\p\c
装弾し、構えた。\w9\n
影はこちらの様子をうかがっているようだ。
\p\c
「来い!\w9\n
掛け声とともに、私は部屋を横とびに飛び出して発砲した。\w9\n
一発、二発、三発。\w9\n
二発目が相手の右手首に当たり、跳弾して壁を削った。\w9\n
「くっ!\w9\n
逃げる相手に、さらに一発。
\p\c
私は逆方向に走った。\w9\n
廊下の突き当りを左に、次の三叉路を右に。\w9\n
遠く向こうのほう、右の角から私の持っている灯よりはるかに明るい光が漏れている。\w9\n
「出口かっ
\p\c
\g[ruin3]
\t2
動かないところを見ると、彫像かもしれないな。\w9\n
しかし、彫像が「ゴトリ」なんて音を出すだろうか?\w9\n
廊下に出て、照らしてみると、それは中世の騎士の鎧兜であった。\w9\n
と、そのとき!
\p\c
右の篭手が大きく銅剣をふりかぶり、私の頭上に落とされた。\w9\n
私はもちろんとっさに両手で頭を抱えている。\w9\n
だが、西洋剣は殴打するための道具であり、切るための道具ではない。\w9\n
銅剣は腕を折って頭蓋を砕き、私はその場に斃れた。\w9\n
THE END\w9\p\g[initial]
その瞬間、目が見えない。\w9\n
伏せた。\w9\n
右から、左から、前方から、すさまじいガトリング音が聞こえる。\w9\n
相手は三人、標的は間違いなく、私だ。
\p\c
ここは・・・。\w9\n
\a[1,走る]\n
\a[2,様子を見る]\n
\.a
\t1
今は、走るべきときだ!\w9\n
握り締めた手の中の草を抜いて、私は走り出した。\w9\n
一歩動いたのか、二歩走ったのか。\w9\n
しかし私はもうそこに倒れていた。\w9\n
永遠に見開いた目のままで。\w9\n
THE END
\p\g[initial]
\t2
まて、今はうかつに動くべきではない。\w9\n
こちらにとって順光で、相手にとっては逆光だ。\w9\n
な、何か、何か道具は・・・。\w9\n
例のごとく、懐をまさぐった。\w9\n
「あつっ
\p\c
人差し指が皮手袋ごと鋭利に切られている。\w9\n
これは、手裏剣だ。\w9\n
すなわち9枚の星型の投げるもの。\w9\n
ではなく、長さ10cmほどの短刀である。
\p\c
ドラえもんかよ。\w9\n
おっと、記憶喪失の人間の言うことではないな。\w9\n
ともかく、私はこれを使えるような気がする。\w9\n
刃を後ろに二本の指で支えて構え、黒スーツに向かってふわりと投げた。
\p\c
放物は日の光を反射して曲線を描きながら飛んでゆく。\w9\n
突然肩の下に刺さったナイフに、黒スーツは叫び声をあげて遺跡の壁から転げ落ちた。\w9\n
動揺する左右二人の隙を私は見逃さない。\w9\n
敵はそれぞれ叫び声をあげてその場に崩れた。\w9\n
一撃で、私は間違いなく急所に当てていたのだ。
\p\c
\i[select,img1]\i[fadeout]
前の一人に駆け寄り、蹴りを入れて銃器を取り上げ土手を駆け上がった。\w9\n
並木を抜け、林を抜け、森を抜け、夢中で走った。\w9\n
いや、走りながら私はむしろ私は醒めつつあった。
\p\c
ふと、足を止めるとそこには一軒のログハウス。\w9\n
「ここは私の・・・家だ!\w9\n
私は家に入り、湯を沸かして茶を煎れた。\w9\n
今、私はすべてを思い出した。\w9\n
THE END
\p\g[initial]