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2.Prologue


 長い冬が終わり陽光が堀の氷を溶かすころ、アルブルスト帝国の玉座は突如としてその所有者を失った。
 皇帝、皇后、皇太子の急死‥当時彼らの周辺にいた近侍たちも物言わぬ世界へと連れ去ったこの事件は、真相が明かされることは遂に無かった。残された皇族はただ一人、事件の際に宮廷を留守にしていた皇女Juliaのみ。
 帝国の伝統は、彼女を女帝として戴くことを認めていない。しかし宮廷に戻った皇女Juliaはてきぱきと情報を操作して国内の分裂を防ぎ、大貴族たちをして諸外国からの干渉を防ぎきることに成功した。
 22日後。意気揚々と帝都に集結した貴族たちに向かって、皇女Juliaは皇帝一族の訃報を公表するとともに、国難の危機に際して奮戦した彼らのうちから婿を取って、玉座の主とすることを宣言。事実上それは、帝国建国に尽力した大貴族の末裔‥7人の選帝候の中から選出することを意味した。外国からの婿を取らないことに国民たちは喝采し、自分たちの盟主またはその御曹司が玉座につく可能性を得たことに中級以下の貴族たちは色めき立った。
 こうして7人の選帝候‥David,Herbert,Josef,Ludwig,Thomas,VictorそしてKlausは思いがけず帝位継承権を得たわけだが、むろん権利を生かせるのはただ一人である。皇女Juliaは誰を選ぶかを明言しなかった。彼女がつぶやいたのは別の言葉だった。
「わたくしには、どなたが良いとは申せません。ただ、代々の皇帝陛下は選帝候の方々をとりまとめ、帝国の安寧を築き上げるだけの力量を持っておいででした。それに劣らぬだけの力量を持った方でなければ、仮にわたくしの夫君になられても、父上の席を継ぐことは叶いますまい」
 こう言われてしまっては、内戦や策謀で雌雄を決するわけには行かない。7人の選帝候たちは17歳の皇女殿下の手のひらの上で、派閥争いをするほか無くなったのである。


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