下見は己のためならず

 日曜日の資格試験の会場が「暁星中学・高等学校」と通知された。
 名前は割と聞き覚えがある。海外帰国子女にとって中学卒業後の進路として検討対象となるところだからだ。しかしながら場所は知らない。地図を見ると九段下。なら会社帰りにちょっと足を延ばして、と寄った。
 地図上は7番出口が分かりやすいのでそちらを利用する予定だったが「坂がキツイ」。これが1番出口だと「エスカレーター3本で運んでくれる」のでこちらを採用することにした。この程度でも気分的に楽になるものだ。

 さて、正門にたどりつくと「工事中」。通路の左右一杯に大きく穴が開いており、飛び越えるのはちょっと骨。一応工事足場で組んだ橋が右側にある。「ハテ、ここを通って入るのだろうか?」少なくとも生徒を通すわけないよな。(遅刻寸前で駆け込んでくる人が狭い橋に殺到するとけが人が出る。)
 ならば通用門はないか、と一回りした。
 些細なことは言うまい。警備員がコンプレックスにさいなまされていることはよくわかった。(まあ毎年、東大数名、早稲田慶応数十名ずつを出している学校だ。若い警備員はどうしたって見下されていると感じるだろう。)

 結局どこから入ればいいのか分からんかったから翌日、電話をかけて尋ねた。

「正門から入っていただきます」
「え、正門には飛び越えるにはちょっとしいんどい穴がぼこーっと空いているのですが。よこの足場を通ってということですか?」
「日曜日には工事がありませんので」
「ではあの穴は日曜日にはふさがっているということですか?」
「うちは場所をお貸ししているだけなので、詳しくは主催者にお問い合わせください」
 入る道が通れるかどうか答えることができないような場所を貸すのは無責任だろう。しかし暁星ってこんなとこだっけ?と調べると不祥事が出るわ出るわ。でもちょっと変。ああ、暁星国際を分離して、切り捨てたのね。フム、切り捨てるという方向でのリスク管理はできているようだ。なので、主催者の方に押し付けたのか。

 となると今度は主催者の事務局が現状を把握しているのか心配になったのでメールを送った。校門の状態とそちらに問い合わせるよう言われたことをざっと説明したのち。

≪少なくとも会場を貸す以上、正門とその付近の工事の問題は申し渡し事項として意識していなければならないはずなのに、(電話を取った人から代わって出てもらったからにはそれなりに詳しいはずの人が)工事の予定について把握していなかったことに対して激しい違和感を感じた次第です。

 主催者側が無関係と言えないのは、「問い合わせはそちらにしてくれ」と先方の職員(「職員室です」と名乗りましたが教員かもしれません)が言ったこと、および正門から入る過程で受験者が穴に落ちて怪我したら知らなかったでは済まされないのでは、という懸念を持ったからです。
 単に道で転んだなら転んだ人がドジなのでしょうが、道に穴をあけてノーケアなら会場を貸した側(学園)のみならず使う側(協会)もその責任を免れ得ないと思います。≫

 しかし暁星がここまで知らんふりを決め込むというのは、かえって不自然である。そこでやむに已まれぬ事情があるのかもしれないと同情的に解釈して付け加えた。
 ≪ありそうなのは工事が遅れていて、当日までにはふさがる予定の穴がそのまま残りそうなのを学校としては認めたくない、くらいでしょうか。ならば主催者としてはしっかりとしたリスク移転を。≫

 きちんと下見に行き、懸案事項を発見し、解決策を自ら探したのち、不明部分について確認しようとした几帳面な人間に「主催者に問い合わせて」と言えば、問い合わせるに決まっているではないですか。その結果(例えばけが人が出た時の)リスク分担について、調整が必要になる(だろうな)。恐らくは工事期間中に生徒が使っている(であろう)通用門を日曜日に開けることになるだろう。これは会場の貸主側の作業になるだろうね。まさか資格試験の事務局に警備を任せるわけにはいかないだろうから。
 「通用口にお回りください」の案内板も出しといてくれ、と要求されればそれも必要だろう。もっとも平日の工事のある時のために看板は作ってあるはずだからさほどの負担になるまい。道路占用許可を休日はとってない、という事態も考えたが、許可申請の期間指定に「平日のみ」はないようだからこれも問題なし。

 学園の負担は相応にあるかもしれないが、受験者全体にとって怪我のリスクが減る。少なからぬ人に貢献できた。行った甲斐があった。

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