落ちこぼれのノート術

 以前「東大生のノートごっこ」において、その種の書籍が流行っているみたい、ということを話題にしたが、よく考えると頭のいい人のノート術をそのまま適用しても、頭の残念な人にとって同じように効果があるとは限らない。

 多くの人が本当に必要なのは「頭の残念な人が採用すると半馬鹿程度にのし上がれるノート術」ではないだろうか。東大生と頭の残念な人の数を比べるとこちらの方が需要が高かろう。(でもまあ「東大生のノート」を丸々採用すると、自分も、あるいは自分の子も東大に行けそうな気がして、ぼーーーっとなる気持ちは分からんでもない。)

 というわけで、すでに落ちこぼれたことを前提になんとか興味が続いて少しは勉強しようか、と思うようなものをどうやったら作れるか、やってみた。科目は「東大生のノートごっこ」で扱った「英語」。わたくしごとであるが考えやすい。

 落ちこぼれたとはいえ、授業には強制出席である。そこでは自分には理解できない英文が板書される。よし、今からがんばって追いつこう!と思っても皆がさらに先に行くさまが、つまりは自分が更なる差を付けられているさまを否応なく感じることになるのだ。これで心を強く持てる奴は初めから落ちこぼれたりはしないだろう。「やり直しの中学英語」なんてのを買って適当にうなずいている大人とは違って現役の中学生はペースを自分で作れないのだ。やる気を出すためには、せめて授業で何を言っているのか、くらいは理解する必要がある。

 というわけで予習が大事になるわけだ。が、習い始めの頃と違って予習することが多くなっている。彼らにとっては教科書を読むだけでも大変である。単語の読み方が分からない。当然意味も分からない。では全部辞書引くかぁ?中学も後半になるとそこそこ文が長いよ。教科書ガイド買ってきて、というのも定番だが、目を左右に動かすのもめんどくさい。そこで妥協した。もちろん教科書をきっちり理解するのが本道だが、それができないから落ちこぼれなのだ。だから「急に追いつかなくてもいい、嫌気がささなければいい。」

 あくまで推測だが、落ちこぼれは自分の文字が嫌いである。自分の字を見ているだけで信頼感が無くなるだろう。だって成績悪いもん。
 昔はそれに対する対応策が「頭のいい人のノートをコピーする」程度しかなかった。成績のいい人が書いた字なら信頼できるよね。しかしいまならワープロがある。活字となれば説得力は一気に上がる。よい、メインはこれでやってみよう。

 というわけで、例によってMS-Excelのマクロを作ってみた。

  1. エディタで英文を打ちこみます。
  2. 打ちこんだ英文を読み込んで各単語をセルに分けて納めてくれます。
  3. 辞書を引いて各単語にフリガナを振り、品詞と意味を真下のセルに納めてくれます。
  4. 出来た表をMS-Wordの方にコピペします。
 細かいことはフリーソフト開発秘話に回すけど(最終的にMS-Wordにしないといけない理由があるのだ)、I DID IT!
 何が大変かって?辞書作るのが大変。落ちこぼれは辞書すら引けないのだよ。名詞や動詞の変化形を見て原形が推測できないことが多いからである。だから、変化形を悉く網羅した辞書を自作しないといけないわけだ。

 んでもって作ったMS-Wordを加工。各文には、とりわけ例文には「moreを使った比較級の例」と意図して伝えようとしているところがある。そこのところはコピペで別の行に写して「三音節以上の形容詞だからmoreで比較級を作る」などとポイントを一言補記。これをルーズリーフに印刷して閉じて学校に。落ちこぼれ君はこれを見ながら授業で気が付いたことを書き加える。これだと「自分が見つけたこと」を書いたわけだから自分の字でも抵抗感がなかろう。むしろ「自分ならでは」という感覚があって身に付くだろう。逆に全部ワープロ打ちだととても自分のもののような気がしないので頭に入らないのではないかな?

 ようやく「落ちこぼれがこれ以上落ちこぼれないための」ノートができた。
 なぜ英語が考えやすいか、というわたくしごとをばらしてしまうと、私がフランス語を多読する必要に迫られて設計したという事情があるからなのだよ。
(ってことは○大生のノート、なのか?)

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