チームマイナス6%の先験者

 チーム6%とやらが、二酸化炭素の排出量を6%削減してくれるらしい。なんか人ごとのような言い方だが1990年に対して温暖化ガスの排出量を6%削減する責任者がいて何かやるわけではなく、チームというものを作って連帯責任にしているだけとしか思えないので(チームマイナス6%のホームページには「削減しましょう」と書かれているだけで、何を基準として6%減らすのかは書いていないし、そのためには具体的にどれくらい減らせばよいかも書いていない。

 そりゃそうだろう。実現不可能なんだから。どうしてそのように判断するか、これから論証する。

 まず、身近にできることから、と各家庭の電力消費でマイナス6%やろうとすると、こういうことになる。
 一世帯あたりの電力消費量の推移をみると、2000年以降は横ばいとはいえ、1990年に比べて20%も増えている。まあ1世帯あたりの人数がどうかわったか、とかも関係はするのだろうが、その辺を考えに入れないとして、ざっと22%ほど電力消費を削減しなければならないかな、という気がする。ところが、そんなに甘くはないわけで、日本の発電量に占める化石燃料の割合は62%だから、目標値としては35.5%ほど削減、ということになる。これは冷暖房の設定温度を何℃か変える、というレベルで対応できる話ではない。冷暖房の電力消費量の家庭用電力消費量に占めるシェアは2002年度で25%程度である。つまり削減目標を達成したければ空調をとめても無理ということである。ちなみに照明のシェアも15.8%だから、たとえ全部消しても削減目標は達成できないということである。

 まーガソリン高のおかげで車の運転を自粛してるわけだから、希望はあるにせよ、各家庭の努力でマイナス6%というのはかなり厳しいことがわかった。車の運転はがまんしたままで、テレビを見る時間を半分にして、暖房やめて薪にして、冷房は我慢して、照明をLEDにすればなんとかなりそうだけどね。

 というわけで、チームマイナス6%の個人会員の皆さんの苦労が偲ばれたところで、国全体としてはどういうことになるかを考えてみよう。2001年1次供給エネルギーで、みると石油+石炭のシェアは68%くらい。この石油+石炭の輸入量をどれくらい削減すれば、マイナス6%が達成できるか。比較的CO2を出さない天然ガスはこの際大目に見る。実は、燃料を天然ガスにすべて切り替えれば、CO2排出量は2割程度削減できるそうだが、さすがに今からそれだけの設備切り替えは不可能だろう。欧州であれば、ロシアからパイプラインを引くことによって輸入が容易(つまり切り替えも比較的容易)であったが、日本だとそうも行かないし。

 石油も石炭も原料として使われることがあり、その分は控除しようとしたが、石炭の場合は要するにコークスになってやはり燃やされるので石油だけにする。といっても統計がないなあ。なになに86%が燃料。でもLNG含むか、、、。まあいい、天然ガスの分のCO2も石油・石炭の削減でカバーするのだ。つじつまは合うだろう。
 とにかく計算。これによると1990年の原油輸入量が238,470千キロリットル。2005年度が249,010千キロリットル。石炭は、、、消費量のデータ、しかもちょっと古いのしかないなあ、1990年が116百万トン、2003年が162百万トン。げ、こんなに増えているの。

 石炭減らすの効果あるんだよ。ここによると同一熱量を得るときのC02発生量を見ると石炭100、、石油76、天然ガスは55なんだそうだ。これから考えると、石炭の消費量を2/3にすると、石油・天然ガスに手をつけずにマイナス6%が達成できるのだ。1990年の時点で言うと、原料炭をなくしただけで、たぶん「国内の鉄鋼生産を無くせば」マイナス6%は達成できたのだ。(おい、国内の鉄鋼産業を潰す、というそんなインパクトのあることだったのか?)でも、今それをやっても、ようやく1990年の水準に戻るだけなのだ。

 つまり、チームマイナス6%の実現しようとしていることはこういうことである。鉄鋼業を潰し、冷暖房を止める。政府が直接手をつけるとなると、政権は崩壊する。なるほど、そういうわけで「チームマイナス6%」というバーチャルな団体を作って、そこに丸投げしたのか。
 ただし政府が国策としてやるなら別の言い方もある。元から絶つ!のだ。この点日本はは楽である。化石燃料のほとんどを輸入に頼っているので、単純に輸入量を削減すればよい。原料炭をゼロに。石油を1割ほど減らせばよい。これなら、インパクトが薄れる。原料炭の価格が3倍になることだし。タイミングも悪くない。

 でも無理だろうなあ。もし、削減が可能と市場が判断しているならば、原油価格がこんなに上がるわけがない。(イラク戦争に協力したのになぜ原油が安くならないんだ!)バイオ燃料ブームもバブルだ。木炭の増産や薪ストーブへの投資が同様に過熱しているならともかく、バランスが歪んでいる。バイオ燃料ブームは結局、穀物メジャーが価格を引き上げる口実であり、遺伝子組み換え作物の作付面積を増やす結果をもたらすということか。

 C02削減は世界的にあきらめられていることが判明。というわけで、CO2を吸収して貯蔵する、の方に関心が移っているのかな。ホンとに砂漠を緑でいっぱいにしないといけないんだなあ。
 でも、そうするとCO2は減るかもしれないが、蒸散が増えて、水蒸気の量が増える。つまり温室効果ガス自体は多分増えてしまう、ということだ。(水蒸気は温室効果ガスなんだそうです。しかも温室効果の97%を占めるとか。)

 ともかく、食べる量を6%減らすところからはじめましょう。食べて運動して体重減らすなんて、二酸化炭素を出すだけ無駄です。はじめから食べないことです。温室効果ガス削減だってよく考えると、エネルギーをダイエットしましょう、ということ。ならばここから先はダイエットに励んでいる人のほうが現実的な提言を出せるかもしれない。今回の文章、けっこうがんばって書いたのになあ、ちょっと悔しい。

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