新年度になった今日、青少年教育に熱心な民明書房から「既卒者用大学入試英単語帳」が発売される。いわゆる浪人用だ。このような単語帳が企画された背景には学習指導要領の改訂がある。社会問題ネタ、目次へ
インターネット時代の到来、またバブルの時代の反動もあって、日本は「海外に追従する」という高度成長の成功体験に逆戻りし、とにかく海外の文化を取り入れることを優先することにした。「アメリカでは/中国では」と紹介すればそれだけで業績となるのがその顕われである。かくして「英語さえやればいい」の風潮が一気に広まり、極端な言い方をすれば私立大学文系の入試は本質的に英語一科目、という状態にまでなっている。(あるいは国立大学の医学部看護学科の二次試験が英語だけだったりする。外国人の介護で外貨を稼ぐというのが国策になったのだろうか。)
そんなわけで、学習指導要領の」改定で中高必修英単語数が3000であったのが、4000〜5000にボリュームアップすることになった。旧課程で教育を受けてきた既卒性は、新課程の高校生と語彙数でまるで太刀打ちできないことになる。そこで「(新課程必修語)+(旧課程必修語)=2000語」レベルの単語集が求められることになり、いち早く目をつけたのが民明書房だったというわけだ。出版した意図は理解できるし、助かる人もいるには違いないが、来年になったらさっぱり売れなくなるのでは?と危惧する向きもいた。○文社そのほかの出版社がこのチャンスを見逃したのはその辺が関係しているのだろう。しかし民明書房の装丁を見ると、カバーの架け替えによってすぐに一般的な単語集に切り替えることができるように工夫されているようだ。索引を別冊にすることにより、この語が何年生のどの単元で出てきたかを教科書ごとにわかるようにしているところにも工夫が見られる。
でも表紙を入れ替えたくらいで新課程時代の商品として成り立つのだろうか。当然疑問がわくだろう。しかし通用するのである。ほかの出版社の単語帳が相対的に沈むからだ。
先ほど、旧課程の必修語は3000と書いた。一方、ポピュラーな英単語帳、システム英単語や速読英単語、あるいは鉄壁の収録語は2000前後である。3000+2000で5000。計算上新課程の必修語とバランスするように見える。しかしながら、それらの単語帳の収録語と、旧課程の必修語は、システム英単語で約1000語、鉄壁でも800語以上重複している。つまり実際には必修語+単語帳でカバーするのは4000語程度しかない。ここに民明書房の5000語が対抗馬として現れる。勝算は十分にあるといえる。むしろ既存単語帳の絶滅が危惧される。
民明書房の「魁!英単語」は教科書の副読本としての位置付けを前面に出しているため、無理なく覚えられる感を醸し出しており、各学校にとっても採用は容易。先行者として逃げ切れるのではないか!というのが私の見方である。
ここだけの話「魁!英単語」の収録語選定には拙作のプログラムが使われている。内部の事情に詳しいのはこういう理由があるのだが、これ言っていいのかなあ、来年実施される早慶大の入試などを参考に「追加でどんな語を習得すればよいか」がすぐに計算できるよう準備しているのだ。民明書房一強の時代はすぐそこまで来ているといっていいだろう。
(高校生向けに文法や英単語を刈り込んである慶応の出題文のレベルがどうなるか、気になるのだよねえ。早稲田は変わらんと思うが。)ちなみにエープリルフールネタです。関係者にとっては全く笑えないかも。ですがこういう機会でないと言いにくいこともある。