小説
●プランバーゴ

第6話

 ある日、美少女剣士ミルフィーはひとりで、とある料理屋で食事をしていました。仲間の美少女司祭見習いローズマリーは、大通りの公開檻に入れられていて、今日の夕方まで出られません。もうひとりの仲間の美少女魔法士アリッサムは、徹夜で壊れた魔法人形の修理をしていたので、今は宿屋で眠っています。
 
 領主の屋敷の地下牢です。ぐったりと横たわる美少女密偵リネットを、数人の、ぼろ布をまとったうすぎたない男達が取り囲んでいます。
「ぐへへへ、女だ」
「しかも若い。器量も身体もなかなかだぜぇ」
「我慢出来ねえ、はやく、服をひっぺがしちまおうぜ」
「ん・・うぅ・・ん・・・ん?」
 リネットは、国王の命令で、謀反の疑いのある地方領主の屋敷を調べている途中に捕まってしまい、この地下牢に投げ込まれたのでした。目を覚ました時には、服は全部脱がされ、いままさにひとりめの男が・・
「きゃぁぁぁっっっ、何してんのよぉぉぉっっっ」

「あの密偵の女はどうしたかな」
「地下牢に投げ捨てておきました。今頃は女に飢えた犯罪者どもの餌食になっている事でしょう」
 領主と警備隊長は顔を見合わせ、ぐふぐふといやらしい笑みを浮かべました。
と、その時、

どどど〜〜んっ!

「な、何事だ!」
 音に驚いて椅子から転げ落ちた領主は、打った腰を押さえて、慌てふためいています。警備隊長は窓から外を確認し、地下牢のある建物から煙りが出ているのを見ました。
「ち、地下牢で何かあったようです! 調べてきます」

 警備隊長が地下牢に駆け付けると、リネットが牢の扉を爆破して壊し、出てくる所でした。
「爆薬か? お、お前、いったいどこにそんな物を隠しもっていたのだ!」
 リネットはにっこりと笑い、警備隊長の顔の前で、何も持っているようには見えない手首をくるくるとまわし、突然どこからか導火線に火のついた爆弾を取り出しました。まるで空中から取り出したかのようです。
「ま、魔法士だったのか!?」
「魔法なんて使ってないわ。手品って言うのよ」
 リネットは取り出した爆弾をひょいと警備隊長に投げ渡すと、爆弾をお手玉のようにして慌てている警備隊長の横をすいっと通り抜けて、逃げていきました。

どどど〜〜んっ!

「なんか騒がしいわね」
 町の料理屋で御飯を食べていたミルフィーは、爆音に気付いて店の外に出ました。見ると領主の館のあちこちから煙りがあがっています。町の人たちも外に出て、領主の屋敷を指差し、何があったのかと騒いでいます。そんなひとだかりの中を縫うように、ひとりの少女が走ってきました。
「リネット! こんな所で何してるのよ!」
「ミルフィーじゃない。ひさしぶり 忙しいからまた後でね!」
 リネットはそう言って、ミルフィーの横を走り抜けて、走りさっていきました。
「ちょっと、何があったの? 待ちなさいってば」
 ミルフィーはリネットを追いかけようとしました。ところが突然、後ろから数人の男達に捕まえられました。見ると料理屋のコック達です。
「食い逃げしようなどとはとんでもない奴だ。警備兵に突き出してやる」
「え? え? 何? ちょっと、待ってよ〜〜〜っ 誤解だってば〜〜っ」

 ここは大通りから目立つ場所に作られた公開檻です。
「何やってんだか、お前達は・・・」
 アリッサムは、檻から釈放されるローズマリーを迎えにきて、檻の中に入っているミルフィーを見つけ、ふたりの顔を交互に見ながら、深いため息をつきました。
「誤解なんだってば〜〜っ」
 ミルフィーは情けない声で訴えました。

終わり


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