小説
●プランバーゴ

第8話

 どっぱ〜〜ん、、、、

 とある迷宮の奥の大きな広間です。美少女剣士ミルフィーが落ちた落とし穴の底は沼のようになっていました。一瞬、底なし沼では、という考えが頭をよぎりましたが、胸元まで沈んだところでかろうじて下の固い地盤に足がつき、溺れ死ぬ事は免れました。
 穴の深さは3メートルくらいでしょうか。上を見上げると、仲間の美少女魔法士アリッサムと美少女司祭見習いローズマリー、ローズマリーの使い魔のデブ猫ノアが、心配そうに覗き込んでいます。
「ご、ごめんなさいっっ、ミルフィーさんっっ、大丈夫ですかぁっっ! ミルフィーさんっ!」
 ローズマリーは泣きそうな声でミルフィーの名前を呼んでいます。天井からぶら下がっていた怪しいロープを、な〜〜〜んにも考えずにひっぱり、落とし穴のトラップを作動させてミルフィーを落としてしまったのです。
 ミルフィーは「はぁ」とため息をひとつ。
「ロープか何かある? ひっぱり上げてほしいんだけど、、。」
「はい!」
 ローズマリーはあたりをきょろきょろと見回し、「あ、このロープ使えませんか!?」と叫んで、ぶらさがってたロープをまた、な〜〜〜んにも考えずに、ぐいっとひっぱりました。

 がたん

 ぶちん

 開いていた落とし穴のフタが閉じ、同時に、古くて腐りかけていたそのロープは上のほうで切れて落ちてきました。
 しばらく沈黙。
「お前なぁ、、、」
『みゃぁ、、、』
 あきれるアリッサム。使い魔のノアも呆れて、ため息。
 落とし穴のフタは何をしても開きません。天井を見上げると、切れたロープの残り30センチほどがぶらさがっています。
「あれを引っ張れば、もう一度落とし穴が開くと思うんだが、、、」
 天井は高く、届きそうにありません。

 突然落とし穴のフタが閉じて、落とし穴の中はまっくらになりました。ここからでは何が起こったのかはわかりませんが、
「またローズマリーが何かバカな事をしたに違いないわ」
 ミルフィーは「はぁ」とため息をひとつ。
 その時、沼の泥水がまるで意識を持ったかのように動きはじめました。水圧がミルフィーの体を揉み、水流が撫でまわし、いやらしく蠢きます。
「ええっ? ちょ、ちょっと、や、やだ、ダメェェッッ」
 それまで水であったものが、無数の触手をもつスライム状のモンスターへと変化し、ミルフィーに襲いかかりました。
 落とし穴の中に、ミルフィーの悲鳴が響き渡りました。

 そしてその頃、上では
『ふぎゃぁっ、みゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っっ、ふぎゃぁっ、みゃぁぁっっっっ!』
 迷宮内にノアの悲鳴が響き渡っていました。

 30分後。

「なんで私ばかりこんなヒドイ目にあうのよ。もうっ」
「ご、ごめんなさい、ミルフィーさん」
「そう言うわりには、気持ちよさそうな声をあげてたじゃないか。」
「何か言った? アリッサム?」
 ミルフィーは沼の泥とモンスターの分泌した粘液でどろどろに汚れています。服も溶けてぼろぼろでした。でも、もっとぼろぼろな姿のノアが床の上に倒れていました。
 何度も何度も天井に向かって投げられ、勢いあまって天井にぶつけられ、落下してをくり返して、ようやくロープにしがみついて落とし穴のフタを開けたのは、他ならぬこのノアです。
『殺されないうちに、他の御主人様を探したほうがいいかも知れない・・・』
 ノアは心の奥から、そう思いました。

終わり


戻る
home